外国人留学生のアルバイト採用:確認すべき事項や注意すべき点を解説

2020年01月27日
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外国人留学生のアルバイト採用:確認すべき事項や注意すべき点を解説

近年、「アルバイトが足らず、仕事がまわらない」「募集してもまったく応募がない」などと、人手不足で困っているという声がよく聞かれるようになりました。

日本人の採用が進まない一方、注目されているのが外国人です。
中でも留学生はすでにコンビニなどさまざまな業種で多数働いており、貴重な戦力となっています。

日本学生支援機構によると平成30年の外国人留学生の総数は約30万人。そのうち千葉県には、全国でも5番目に多い約1万3000人がいます。
船橋市内でもアルバイトをしている留学生がいるはずです。

ですが「そもそも留学生を採用していいのか」「何をしたら違法なのか」と不安に思い、採用に二の足を踏んでいる企業は少なくないでしょう。

では留学生をアルバイトとして採用する際、具体的に何に気をつければよいのか、弁護士が詳しくご説明します。

1、どんな外国人留学生ならアルバイト採用できる?

外国人留学生は学ぶために日本にきています。そのためアルバイトをする場合には、国に認めてもらうことが必要です。採用する側もアルバイトができる留学生か、事前にきちんと確認しなければ不法就労として摘発されることになりかねません。まずは基本的なところから確認していきましょう。

  1. (1)外国人には在留資格が与えられる

    日本に滞在する外国人には、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき「在留資格」が与えられます。

    在留資格は次のように区分されます。

    • 定められた範囲での就労が認められている:外交、公用、医療など
    • 就労が認められていない:留学、文化活動、短期滞在(観光)など
    • 就労が制限されていない:永住者、日本人の配偶者など
    • 個別に判断される:特定活動


    就労が認められていない資格の場合、また認められた活動以外の就労をした場合は不法就労に該当します。

  2. (2)「留学」の資格だけでは働けない

    一般的に、大学や専門学校などの外国人留学生に与えられる在留資格は「留学」です。

    在留期間は3か月〜4年3か月で、就労は認められていません。在留カードにも表面に「就労不可」と記載されます。

    つまりこの留学の資格だけでは日本でアルバイトをすることはできないのです。

  3. (3)アルバイトをするためには「資格外活動許可」が必須

    では留学の在留資格しかない留学生がアルバイトをするためには、どうしたらいいのでしょうか。

    そこで必要となるのが「資格外活動の許可」です。

    居住地を管轄する入国管理局に必要書類を提出して申請することで。後日、許可または不許可が通知されます。
    許可がおりた場合には、留学以外の活動であるアルバイトができるようになります。

2、外国人留学生がアルバイトできる時間は?

外国人留学生は学ぶことを本来の目的として日本での滞在が許されています。そのためアルバイトをする場合には、働くことができる時間が制限されています。

  1. (1)週28時間以内、掛け持ちや残業には注意

    留学生が資格外活動許可を得てアルバイトをする場合、就労時間は週28時間以内と定められています。聴講生の場合は週14時間以内です。

    これはその学生の一週間の総就労時間です。
    複数のアルバイトを掛け持ちしている場合には、合算して28時間以内に収めなければなりません。残業も就労時間に含まれます。

    故意に時間を大幅にオーバーさせるなど、悪質な場合には不法就労にあたります。 留学ビザの更新が許可されなかったり、退去強制処分となったりする可能性があるため、留学生はもちろん、雇用する側も28時間以内に収まるようシフトを決める必要があります。

  2. (2)学校の長期休業中は8時間も可能

    大学や専門学校の夏休みなどの長期休業中は授業がないため、1日8時間以内の就労が認められています。

    ただしこの長期休業は、各大学や専門学校などが学則で定めた期間に基づくものです。

    休講が続いたり受講するクラスの数が少なかったりしたために、たまたま長期間お休みになったといったケースは対象外です。

3、外国人留学生がしてはいけないアルバイトは?

外国人留学生のアルバイトには、週28時間以内であればどんな仕事をしてもいいという訳ではありません。やってはいけないアルバイトもあるのです。

  1. (1)単純労働もできる

    資格外活動が許可されると外国人に認められないことが多い単純労働もできるため、コンビニや工場などのアルバイトにも従事できます。

    また勤務時間帯や場所の制限もないため、一般的に時給が高い深夜や早朝に働くことも可能です。

  2. (2)風俗営業でのアルバイトは絶対禁止

    留学の在留資格で、資格外活動許可を得れば単純労働のアルバイトも可能ですが、風俗営業は禁止されます(入管法施行規則第19条5項)。

    風俗営業とはスナックやラウンジ、パチンコ店、麻雀店、ゲームセンターなどをさします。

    これらは他のアルバイトに比べて時給が高いことも多いため、留学生の応募があるかもしれませんが、採用した場合には採用した側も違法と認定されますので注意してください。

4、不注意によって企業が法的責任を問われることはある?

「初めて外国人留学生を雇う」という場合、何が違反なのか、違反した場合の罰則はあるのかは気になる点でしょう。不注意で法律違反とならないように、次のような点に注意して採用を行いましょう。

  1. (1)不法就労は強制送還の対象

    資格外活動許可のない留学生がアルバイトをした場合には不法就労となり、専らアルバイトを行っていると明らかに認められる場合には、退去強制事由に該当し、退去強制手続きに付されます。「強制送還」「国外退去」ともよばれます。

    違反した留学生は入管に収容され、審査などを経て退去強制令書が発布されると本国へ強制送還されます。
    退去強制処分になると、帰国後5年間または10年間は日本に再入国できません。

  2. (2)「うっかり」確認を怠ると不法就労助長罪に

    外国員留学生が不法就労をした場合、雇った側も入管法の「不法就労助長罪(入管法第73条の2)」に問われる可能性があります。

    罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方であり、決して軽くありません。

    「本人は許可があると言っていた」というケースもあるでしょう。

    ですが入管法第73条の2には、「次の各号(資格外活動の許可を得ていないなど)のいずれかに該当することを知らないことを理由として、処罰を免れることができない」とあります。

    つまりたとえ「うっかり」だったとしても、確認を怠り不法に働かせてしまった場合には事過失があるとされ、処罰の対象となり得るのです。

    ただし見た目が日本人と同じで言葉も堪能、日本名を使っていたといった場合は、留学生であると気づくのは難しいため、過失がないとされ、処罰を免れる可能性はあります。

  3. (3)採用前に許可の有無を確認

    資格外活動が許可された場合には、在留カードの裏面に「許可」と記載されます。
    「資格外活動許可書」が交付されていることもあります。

    留学生をアルバイトとして採用する際は、雇用契約を結ぶ前に必ず在留カードや許可書をチェックし、許可の有無を確認するようにしましょう。
    口頭で確認するだけでは不十分です。

    その際、在留カードで在留期限は切れていないか(オーバーステイか)どうかも合わせてチェックしましょう。期限を超えている留学生が働いた場合も不法就労です。

  4. (4)採用したら必ずハローワークに届出

    すべての事業者は特別永住者など一部を除く外国人の採用・離職の状況を、ハローワークに届け出なければいけません。 これを「外国人雇用状況報告制度」といいます(雇用対策法第28条1項)。

    事業者は外国人を雇った月の翌月10日までに届け出る必要があります(外国人が雇用保険の被保険者とならない場合は、翌月末まで。)。
    これを怠ったり虚偽の報告をしたりした場合は、30万円以下の罰金が科せられます。

    この報告制度は正社員だけでなくアルバイトも対象ですので、採用後はすみやかに届け出ましょう。

  5. (5)日本人と同じ法律が適用される

    外国人であっても日本で働く限りは労働基準法や労働契約法といった日本の法律が適用されます。

    そのため最低賃金の遵守、残業や深夜勤務の割増賃金、1日8時間・週40時間の法定労働時間の適用などは、きっちりと守る必要があります。

    外国人留学生を単純に安価な労働力と考えて不当で違法な扱いをすれば、当然罪に問われます。

5、まとめ

留学生の増加に伴い、今後船橋市内でもアルバイトに応募してくる人数は増えてくると予想されます。

ですが人手不足だからときちんとチェックせずに採用してしまうと、後になって不法就労だったと判明する危険性もあります。

留学生の採用で疑問がある場合やトラブルになってしまった場合には、すぐに弁護士に相談しましょう。千葉県内の企業や個人の方の身近な相談先として、ベリーベスト法律事務所船橋オフィスをご活用ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています