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運送業で残業60時間を超えると何が変わる? 残業上限と割増賃金について解説

2023年05月16日
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運送業で残業60時間を超えると何が変わる? 残業上限と割増賃金について解説

千葉県が公表している「千葉県毎月勤労統計調査地方調査」の令和5年1月分をみると、産業別の所定外労働時間は運輸業・郵便業がもっとも多くなっていました。この統計からも、運送業は残業時間の長い業種であることがわかります。

働き方改革の一環で法定時間外労働の上限規制が設けられましたが、慢性的な人材不足にある運送業では、上限規制の適用が猶予されていました。しかし、令和6年4月から、運送業にも法定時間外労働に対する上限規制が適用されます。

本コラムでは、運送業で残業が月60時間を超えた場合の問題点や、「割増賃金」という用語の概要について、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。

1、ドライバーの残業が60時間以内に制限される?

令和6年4月から、運送業にも働き方改革による残業時間の上限規制が適用されることになります。

  1. (1)運送業界における「2024年問題」とは

    運送業界における「2024年問題」とは、2024年(令和6年)に運送業界に法定時間外労働の上限規制が適用されることにより生じる諸問題のことをいいます
    運送業界では、若手のドライバー不足、ドライバーの高齢化による慢性的な労働力不足やEC市場の急成長による宅配便などの取扱個数の増加などにより、長時間労働の常態化という問題を抱えていました。
    法定時間外労働の上限規制が適用されることによって、ドライバーの労働環境が改善されるという一面もありますが、会社の売り上げや利益の減少、ドライバーの収入減少・離職の増加、荷主側における運賃の上昇といった問題が生じるおそれがあると指摘されています。

    このような2024問題の解消に向けて、全日本トラック協会では、以下のようなアクションプランを策定しています。

    1. ① 労働生産性の向上
    2. ② 運送事業者の経営改善
    3. ③ 適正取引の推進
    4. ④ 多様な人材の確保・育成
  2. (2)残業時間が月60時間以内といわれる理由

    働き方改革により、運送業界にも年960時間という法定時間外労働の上限規制が適用されます
    これを月平均でみると、80時間ということになりますので、残業時間が60時間以内に制限されるというわけではありません。

    しかし、残業時間が月60時間を超えると割増賃金率が引き上げられることから、2024問題による売り上げや利益の減少を補塡(ほてん)するために、多くの運送業において残業時間を月60時間以内に抑える取り組みが実施される可能性があります。

2、ドライバーの時間外労働(残業)と割増率

以下では、運送業界のトラックドライバーの時間外労働(残業)の考え方と割増率について説明します。

  1. (1)ドライバーの時間外労働

    働き方改革により、令和6年4月から、運送業界のドライバーには年960時間以内という残業時間の上限規制が適用されます

    年960時間ということは月平均でいうと80時間になりますが、1か月平均の残業時間の上限規制は設けられていません。そのため、ある月の残業時間が100時間であったとしても、他の月の残業時間を減らすことによって、年960時間以内に抑えれば問題ないことになります。

  2. (2)ドライバーの割増率の考え方

    法定時間外労働に対しては、25%以上の割合による割増賃金の支払いが必要になります。
    また、令和5年4月からは、中小企業においても月60時間を超える法定時間外労働に対して50%以上の割合による割増賃金の支払いが義務付けられることになります。
    そのため、長時間労働が常態化している運送業界では、月60時間を超えた部分に対しては、これまでの2倍の残業代を請求することができることになるのです

    会社としては単純に人件費が増えることになりますので、人件費を抑制する目的で残業時間を月60時間に抑えようとする可能性があります。
    そうなると、これまで残業代で稼いでいたドライバーとしては、給料の総額が減る可能性があるでしょう。

3、残業代が正しく支払われていないときの対処法

会社から残業代が正しく支払われていないときには、以下のように対処してください。

  1. (1)残業に関する証拠収集

    正しく支払われていない残業代を会社に対して請求する際には、残業に関する証拠が重要になります

    残業代を請求するには、残業代を請求する労働者の側で、証拠によって残業を立証しなければいけません。
    必要となる証拠は個々の事情によって異なってきますが、代表的な証拠としては以下のようなものがあります。

    • 就業規則
    • 雇用契約書、労働条件通知書
    • 賃金規程
    • 給与明細
    • タイムカード
    • 勤怠管理ソフトの記録データ
    • 業務日報
    • タコグラフ
  2. (2)残業代の計算

    残業代に関する証拠が収集できた段階で、証拠に基づいて、残業代の計算を行いましょう。
    残業代の計算式は「1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間」です

    ① 1時間あたりの基礎賃金
    月給制の場合には、1時間あたりの基礎賃金は、「月給額÷月平均所定労働時間」で求めることができます
    たとえば、年間休日が124日ある会社で、所定労働時間が8時間であったとすると、月平均所定労働時間は、以下のようになります。

    月平均所定労働時間=(365日-124日)×8時間÷12か月=160.6時間


    諸手当を除いた月給額を月平均所定労働時間で割れば、1時間あたりの基礎賃金を求めることができます。

    ② 割増率
    割増率は残業時間や残業をした日によって異なってくるため、正しい割増率を選択して、残業代を計算する必要があります

    具体的な割増率は、以下のようになります。

    • 時間外労働:25%以上
    • 深夜労働:25%以上
    • 休日労働:35%以上
    • 1か月の時間外労働が60時間を超えた部分:50%以上
    • 深夜労働+時間外労働:50%以上
    • 深夜労働+休日労働:60%以上
  3. (3)会社との交渉

    残業代計算の結果、未払いの残業代があることが判明した場合には、未払いの残業代の支払いを求めて会社と交渉を行うことになります。
    労働者の側で計算した未払い残業代の金額と計算根拠を示しながら、会社側に支払いを求めていきましょう。

    また、残業代請求権に時効があるという点にも注意してください
    給料日の翌日から起算して3年を経過すると、時効によって残業代請求権が消滅してしまい、請求することができなくなってしまいます。
    過去の残業代が未払いになっているという場合には、時効を迎える前に、早めから対応することが大切です。

  4. (4)労働審判の申し立て

    会社側が話し合いに応じてくれなかったり、話し合いでは納得いく解決案が提示されなかったりした場合には、裁判所に労働審判の申し立てを行いましょう

    労働審判は、訴訟よりも迅速かつ柔軟な解決が可能な手続きです。
    ただし、労働審判に不服がある場合には、異議申し立てにより労働審判は効力を失ってしまい、訴訟手続きに移行することになります。

  5. (5)訴訟提起

    会社との話し合いや労働審判でも解決できない問題は、最終的に訴訟によって解決を図ることになります。

    訴訟は専門的かつ複雑な手続きとなるため、専門家である弁護士にサポートを依頼してください

4、残業代請求は弁護士に相談したほうがよい?

未払い残業代の請求を検討されている方は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)残業代の計算を任せることができる

    会社に残業代請求をするには、その前提として未払いの残業代を計算する必要があります。しかし、残業代の計算は複雑なため、専門知識を持たない個人では、未払いの残業代を正確に計算することは困難な場合もあります。

    ひとりで計算するのが不安だと感じる方は、弁護士に計算を任せてください

  2. (2)会社との交渉を任せることができる

    未払いの残業代がある場合には、まずは会社との交渉を行い、支払いを求めていくことになります。
    しかし、労働者個人が交渉を求めても、会社側がまともに取り合ってくれない可能性もあります。

    弁護士であれば、法的観点に基づいて未払いの残業代が存在するという事実や具体的な金額を指摘しながら、労働者の代わりに会社と交渉することができます

5、まとめ

令和6年4月から、運送業界においても残業時間の上限規制が適用されることになります。長時間労働が常態化している運送業界では、残業代が適正に支払われていない可能性もあるためこの機会にご自身の残業代を計算して、もし未払いの残業代がある場合には会社に請求しておくとよいでしょう。

残業代の計算や請求などについて専門家のサポートをお求めの際には、ベリーベスト法律事務所までご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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