介護事業を展開する上で知っておくべき法律とは? 弁護士が解説!

2022年07月21日
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介護事業を展開する上で知っておくべき法律とは? 弁護士が解説!

令和3年4月の時点で、千葉県船橋市における65歳以上の高齢者の割合は、市全体の人口の24.0%を占めています。

核家族化が進んだ現在においては、家族と離れて暮らす高齢者も少なくないでしょう。このような高齢者や介護者にとって、介護事業者が提供するサービスは大きな役割を果たします。また、その需要は今後もますます増加して、より一層重要な事業になっていくことが見込まれます。

しかし、事業として介護サービスを行うにあたっては、介護自体に関する知識だけでなく、さまざまな分野の法律知識も必要になります。本コラムでは、介護事業を展開するときに知っておくべき法律の基礎知識について、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。

1、介護保険制度に関する法律

  1. (1)介護保険法

    介護事業者(介護施設)が行うサービスには、さまざまな種類があります。
    基本的には、介護保険制度に基づいたサービスが主になることが多いものでしょう。

    介護保険制度について規定する「介護保険法」は、国民が負担する保険料や税金を財源として、介護が必要な高齢者などが日常的にサービスを受けられるようにするため、平成9年に公布された法律です。

  2. (2)介護保険サービス事業

    介護保険制度に基づいたサービスは、介護状態に応じて、要介護者を対象にする「介護給付」と要支援者を対象にする「予防給付」に分けることができます
    介護給付は、「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3つに分類することができ、「予防給付」は「居宅サービス」「地域密着型サービス」の2つに分類することができます。

    「居宅サービス」は、利用者の自宅を職員が訪れてサービスを提供したり、自宅で生活する利用者が施設に通ってサービスを受けたりするものです。
    訪問介護・通所介護・訪問入浴介護などが該当します。

    「施設サービス」は、利用者が介護保険施設でサービスを受けるものです。
    介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設などにおいて、施設サービスを提供することができます。

    「地域密着型サービス」は、利用者が住み慣れた地域で生活を継続できるように必要なケアを行うサービスです。
    たとえば定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護などが該当します。

  3. (3)介護保険サービス事業者の要件

    「介護給付」の対象になる介護サービスを提供するためには、原則として都道府県知事による指定を受ける必要があります。

    また「地域密着型サービス」については、市町村の指定を受ける必要があります。
    なお、介護保険制度上のサービスを提供する事業者(指定事業者)になるためには、一定の要件を満たす必要があります

    主な要件には、以下のようなものがあります。

    • 事業者が法人であること
    • 人員・設備に関する基準を満たしていること
    • 運営に関する基準を満たしていること
    • 欠格事由に該当しないこと


    また、事業者が労働基準法などの労働法に違反して罰金刑を受けた場合には、指定を受けることはできないものとされています。

2、介護施設に関する法律

介護事業を営むうえでは、自力避難が難しい高齢者の命を預かる可能性もあります。
そのため、介護施設については、次のような法律を遵守して設備基準を満たす必要があるとされているのです

  1. (1)建築基準法

    「建築基準法」では、多数の方が使用したり就寝したりする介護施設は、特殊建築物として防火や避難に関して強い規制をしています。

    なお、介護施設として建築物の新築・増築、用途変更などを行う場合には、建築基準法関係規定に適合させるように計画しなければなりません。
    また、建築確認申請の手続きが必要になることもあるので、建築士などの専門や建築行政窓口に相談しながら進めることが大切です。

  2. (2)消防法

    介護施設を運営するためには、消防法で求められる規制についても理解して、適切に対応していかなければなりません。
    たとえば介護施設を建築するときには、構造や素材の制約があるため、建築計画の段階から管轄の消防署と綿密に打ち合わせをする必要があります。

    なお介護施設は、訪問型・入所型の施設のどちらであっても「防火対象物」として高度な防火管理が求められます。
    また、介護施設の構造やサービスの内容などに応じて、義務づけられた消防用設備を設置する必要があります。

3、会社設立・運営に関する法律

介護事業を展開するためには、会社設立・運営に関する法律の知識も必要不可欠です。
会社設立・運営に関する法律としては、「会社法」「労働法」などがあります。

  1. (1)会社法

    指定事業者は、法人であることが要件とされています。
    つまり法人でない事業者が介護保険事業を展開するためには、株式会社や合同会社、NPO法人などの法人を設立する必要があります。

    「会社法」は、会社の設立や役員、株式などの会社の重要なルールを定める法律です
    たとえば「どのような事項を定款に定めなければならないのか」、「どのような手続きで役員を選任するのか」、「設立後に重要な事項を決定するためにはどのような手続きを経る必要があるのか」といった会社の設立・運営に欠かせない内容が規定されています。

  2. (2)労働法

    労働法とは、労働基準法や労働組合法、労働者派遣法、育児・介護休業法、パートタイム労働法などを総称した言葉です。
    労働法は、使用者として労働者を雇用するためには、知っておかなければならない法律です。違反して罰金刑に処されたときには、指定事業者になることもできません。

    労働法のなかでも、「労働基準法」は、中核となる重要な法律です。労働基準法には、法定労働時間や法定休日・休暇など、守らなければならない労働条件の基準などが規定されています。

    そのほか労働条件の基準などについて規定する法律には、「育児・介護休業法」や「パートタイム労働法」、「男女雇用機会均等法」などがあります。

    なお、雇用の確保や安定を目的とする法律には、「労働者派遣法」や「雇用対策法」などがあり、労働保険・社会保険に関する法律には、「労災保険法」や「健康保険法」などがあります。

    また、労働契約や労使関係を規定する法律には、「労働契約法」や「労働組合法」などがあります。

4、介護事業関連の法律は顧問弁護士に相談を

これまで介護事業を営む上で知っておきたい法律について、概要をご説明していきました。
多数の法律が関わる分野であるため、細かい部分については、顧問弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

顧問弁護士に依頼することには、以下のような利点もあります。

  1. (1)事業に専念できる

    新規事業を立ち上げるときには、決断し実行すべきことが大量にあるはずです。

    そういった状況では、可能な限り、外部の専門家などを活用することをおすすめします。
    顧問弁護士に相談したときには、会社の事情を把握したうえで、法的な側面から的確なアドバイスが受けられるので、安心して事業に専念できるというメリットがあります

  2. (2)契約書のチェックが受けられる

    事業を展開するときには、取引先との契約や従業員との契約など、契約の締結が必要になります。また、介護サービスの形態に応じて、利用者と締結する契約もあります。

    このような場面では、顧問弁護士が契約書をチェックして、トラブルを予防するためにも入れておくべき条項などをアドバイスすることが可能です。

  3. (3)トラブルに対応できる

    介護事業を行う場合、利用者が転倒してケガをしてしまったり、誤嚥(ごえん)があったりと介護中の事故を完全に避けることは難しいものでしょう。
    このような場合には、利用者やその家族から職員や会社が責任追及されて、トラブルになることも考えられます。
    また、従業員と企業の間で、トラブルが発生する可能性もあるのです。

    顧問弁護士は、トラブルが発生したときには、企業側の代理人として相手と話し合いを進めることができます
    弁護士が交渉することで、トラブルが早期にスムーズに解決できることが期待できるでしょう。

5、まとめ

本コラムでは、介護事業を展開するときに知っておきたい法律の基礎知識について解説しました。
介護事業を展開するときには、介護保険制度を規定する介護保険法や、介護施設に関する建築基準法・消防法、会社の設立や運営に関する会社法・労働法など、理解しておくべき法律が多数あります。
法律に関してお悩みの場合には、顧問弁護士などの専門家に相談することをおすすめします

ベリーベスト法律事務所では、ご利用しやすい顧問弁護士サービスを展開しています。
船橋オフィスでもご相談に応じていますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています