裁判所に接近禁止命令を申し立て、DVから保護してもらう方法を解説

2020年04月13日
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  • 接近禁止命令
裁判所に接近禁止命令を申し立て、DVから保護してもらう方法を解説

船橋市は、DVやストーカー被害などの被害者を保護するため、被害者からの申し出により、加害者による被害者の住民票・戸籍の取得することを拒否する仕組みを整えています。

もちろん、住民票や戸籍の取得制限はありがたいものです。しかし、日常生活においても、加害者からの接触を制限したいと考える方は多いでしょう。

そのときに有効な方法が「接近禁止命令」です。配偶者から暴力を受けている、別居している配偶者からストーカー被害・脅迫を受けているなど、身の危険を感じるときは、接近禁止命令を利用してみましょう。

今回は、「接近禁止命令」について、その効果や必要な手続きなどを船橋オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。

1、接近禁止命令とは?

「接近禁止命令」とは、加害者が被害者に接近することを禁止する保護命令を指します。DV防止法(正式名称は「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律」)にもとづき行われる措置のひとつです。

配偶者から暴力を振るわれ、生命や身体に危険が及んでいるなど、緊急性が高い状況において、被害者を保護することを目的としたものであり、裁判所に申立てを行い発令してもらう必要があります。

これに伴い、申立てを行う側のことを「申立人」と呼び、申し立てられた側のことを「相手方」といいます。

2、接近禁止命令が下された場合の効果

それでは、接近禁止命令が下されると、どうなるのでしょうか。

  1. (1)申立人への接近禁止命令による効果

    接近禁止命令は、以下の2つの行為を禁止することができます。

    • 申立人の身辺をつきまとう行為
    • 申立人の住居や勤務先などの付近を徘徊する行為


    簡単にいえば、加害者が被害者に近づくことを禁止することができます。身体的暴力や元配偶者からのストーカー行為などを受けている被害者には、効果的な保護方法となりえるでしょう。

    ただし、効果があるのは6か月間です。さらに長期にわたる接近を禁止してほしい場合は改めて保護命令の申立てを行う必要があります。

    このように、「申立人への接近禁止命令」だけでも有効的ではありますが、より効果を高めるためには、電話やメール、面会の要求といった、ストーカー規制法でいう「つきまとい等」とみなされる行為を制限することも大切です。

    そのためには、ほかの保護命令も併せて利用する必要があります。

  2. (2)そのほかの保護命令の効果

    被害者本人(申立人)への接近禁止命令以外にも、裁判所が下す「保護命令」として、以下の4つが設けられています。

    • 申立人への電話等禁止命令
    • 申立人の子への接近禁止命令
    • 申立人の親族等への接近禁止命令
    • 退去命令


    たとえば、「電話等禁止命令」では、面会の要求や緊急でやむを得ない場合等を除き電話やメールを連続して送信する行為や、不快・嫌悪を抱かせるようなものを送付する行為などを禁止することが可能です。

    「子への接近禁止命令」「親族等への接近禁止命令」は、子どもの身辺や学校付近にうろつくこと、親族の住居への押しかけなどを禁じることができます。

    ただし、電話等禁止命令・子どもや親族等への接近禁止命令は、申立人の保護が前提となります。したがって、それぞれを単独で申立てることはできません。「申立人への接近禁止命令」が同時に発令される場合か、すでに発令されている場合にのみ、これらを発令してもらえるため、注意してください。

    また、「退去命令」は、申立人と相手方(加害者)が同居している状況において、申立人が引っ越しの準備をするために、2か月間、相手方が住居に住んだり近づいたりすることを禁止する命令です。

    「申立人への接近禁止命令」を申立てるときは、これらの保護命令の内容や条件を確認し、併せて申立てた方が効果的でしょう。

3、接近禁止命令の申立てが可能な条件

被害者への接近禁止命令は、誰でも申立てることができるわけではありません。

接近禁止命令などの保護命令は、違反者に対して罰則を設けているため、安易に保護命令を発令してしまうと、相手方に多大な不利益が生じてしまう可能性があるためです。

そのため、以下の条件に合致している被害者だけが、裁判所へ申立てることができます。

  • 申立人と相手方に婚姻関係・事実婚関係・同棲関係がある、またはあったこと
  • 相手方による暴力行為・脅迫行為が、関係の継続中にあったこと
  • 暴力行為などによって生命・身体に重大な危害が加えられるおそれがあること


つまり、被害者への接近禁止命令は、配偶者や元配偶者だけでなく、同棲した経歴のある元交際相手や事実婚関係にあった相手に対しても、発令することが可能です。

4、接近禁止命令の申立て方法

申立人への接近禁止命令は、次の順序で申立てを行います。

  1. (1)関係機関への相談

    接近禁止命令の申立てを行うときは、事前に「警察署(生活安全課)」または「配偶者暴力相談支援センター」へ相談しておく必要があります。

    申立てのときに裁判所へ提出する申立書には、相談した日時・場所・内容など、これらの関係機関に相談した事実を記載する箇所があります。つまり、必ず、事前に相談の事実を記録する必要があるということです。

    船橋市の場合、船橋市配偶者暴力相談支援センターがあります。まずは船橋市役所のサイトなどを確認し、相談してみることもひとつの方法です。

    もし何らかの理由で関係機関への相談が難しい場合は、公証人役場で「宣誓供述書」を作成してください。「宣誓供述書」とは、加害者から受けた被害・状況について詳細を書面に記載し、その内容に誤りがなく真実であることを公証人の前で宣誓し、公証人が証明することで作成される書類のことです。申立書に添付することで、関係機関への相談と同等の行為をしたとみなされます。

    なお、関係機関への相談や宣誓供述書の添付がなかった場合は、申立てを行っても接近禁止命令を発令してもらえないため、注意しましょう。

  2. (2)裁判所への申立て

    関係機関への相談後、裁判所で申立てを行いましょう。

    接近禁止命令などの保護命令は、申立人か相手方の住居地を管轄する、もしくは被害を受けた場所を管轄する地方裁判所に申立てます。たとえば船橋市の管轄裁判所であれば、千葉地方裁判所です。申立ての際は、「申立書」に暴力などの被害状況について詳細を記載します。

    そのほか、相手方との関係や受けた被害などの状況に応じて、下記を申立書に添付しましょう。

    • 戸籍謄本や住民票
    • 暴力を受けた事実がわかる写真・診断書などの資料
    • 今後も重大な危害を受けると想定できるメールなどの資料
    • 脅迫内容が記載されたメールの複写など


    なお、申立てや申立書の作成などを弁護士に依頼した場合は、弁護士への委任状も必要となります。

  3. (3)口頭弁論・審尋

    申立書が受理されると、当日または速やかに、申立人と裁判所側が面接し、被害の実情などが聞き取られます。

    その後、1週間ほどして、当事者双方が裁判官の前で意見や主張を行う「口頭弁論」、もしくは、相手方の意見聴取を行う「審尋(しんじん)」の日時(期日)指定が行われます。なお、審尋には被害者が立ち会う必要はありません。

    また、期日まで日程があくことで、被害者に重大な危害が加えられるような緊急性がある場合は、期日を待たずに、接近禁止命令が発令されることもあります。

  4. (4)接近禁止命令の発令

    裁判官が接近禁止命令を下す判断をした場合、早ければ相手方への審尋を行った当日に接近禁止命令が発令されます。

    接近禁止命令の効果が生じるのは、相手方に言い渡された直後、もしくは、相手方が口頭弁論や審尋に出席しなかった場合は決定書が送達されたタイミングです。

5、相手が接近禁止命令に違反した場合は?

接近禁止命令に違反した場合、相手方は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

保護命令違反が発覚するケースとしては、たとえば、自宅近辺で相手が待ち伏せしていた、相手が突然押しかけてきたなどの状況が考えられます。ご自身で相手と接触するのは非常に危険なので、まずは警察に110番通報する、依頼している弁護士に連絡して対応してもらうといった対応をしましょう。

弁護士へ依頼をしている場合、警察へ通報・相談するときも、同席することが可能ですので、的確に状況を説明でき、捜査機関がスムーズに対応できる可能性が高まります。

6、まとめ

今回は、DV被害者などに対して加害者の接近を禁止する「接近禁止命令」について解説しました。

「接近禁止命令」は、これ以上の身体的暴力被害や脅迫を防止し、被害者を保護するための仕組みです。手続きなどが一人では困難な場合や相手方との交渉にお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスにご相談ください。

裁判所による接近禁止命令の申立てをサポートするほか、DV被害を防ぐために必要な対策を講じることで、安全な生活を実現するお手伝いをします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています