PMSを理由に離婚は可能? 離婚する前に家族ができること

2024年04月16日
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PMSを理由に離婚は可能? 離婚する前に家族ができること

PMSとは、月経前症候群の略称で、生理前に生じる精神的・身体的な不調のことをいいます。

PMSの症状がひどい女性のなかには、精神的に不安定になり夫に対して暴力やモラハラをしてしまうひともいます。毎月PMSによる暴力や暴言が続くと、家庭生活に困難が生じることから、妻との離婚を考える男性の方もいるかもしれません。しかし、妻のPMSを理由に離婚をすることができるのでしょうか。

本コラムでは、PMSを理由とする離婚の可否や離婚前に家族としてできることをベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。

1、PMSの症状を理由に離婚は可能か

妻のPMSを理由に離婚をすることはできるのでしょうか。以下では、PMSとは何か、PMSを理由とする離婚の可否について説明します。

  1. (1)PMSとは

    PMSとは正式名称を「月経前症候群」といい、「Premenstrual Syndrome」という英語の略称です。月経前3~10日間続く精神的、身体的症状で、月経開始とともに軽快、消失します。多くの女性が月経前に何らかのPMS症状を抱えているといわれており、その症状の程度や内容は人それぞれです。

    PMSの代表的な症状には、以下のようなものがあります

    • 情緒不安定
    • イライラ
    • 抑うつ
    • 不安
    • 集中力の低下
    • 腹痛
    • 頭痛
    • 腰痛
    • むくみ
    • お腹の張り
    など
  2. (2)モラハラ、DVが深刻な場合には離婚可能

    PMS症状のひどい女性だと、精神的な不調から夫に対して、モラハラやDVを行ってしまうことがあります。一時的なものであれば離婚は難しいですが、毎月生理前になるとモラハラやDVが繰り返されるようだと、正常な夫婦生活を送ることが困難といえます。
    このような事情は、裁判離婚をする際に必要となる法定離婚事由のうち、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しますので、妻が離婚を拒否していたとしても、裁判により離婚できる可能性があります。

  3. (3)「精神的に不安定」などを理由には離婚が難しい

    PMSにより妻がずっと寝ている、家事をしない、精神的に不安定になるなどの理由で離婚を考える男性もいるかもしれません。しかし、これらの事情は、法定離婚事由のいずれにも該当しませんので、妻が離婚を拒否している場合には、離婚することは難しいでしょう。
    ただし、法定離婚事由に該当しない場合でも、協議離婚や調停離婚は可能ですので、まずは妻と話し合いを行い、離婚に向けて協議を進めていくとよいでしょう

2、PMS期間のモラハラ・DVに対する慰謝料請求

妻のPMS期間中にモラハラやDVがあった場合、慰謝料請求をすることができるのでしょうか。

  1. (1)モラハラやDVがあれば慰謝料請求が可能

    慰謝料とは、違法な行為により肉体的、精神的損害を与えた場合に発生するものになります。離婚すること自体は、違法というわけではありませんので、離婚したからといって常に慰謝料が発生するわけではありません。

    しかし、離婚に至る原因が配偶者からのモラハラやDVであった場合には、違法な行為がありますので、不法行為に基づいて相手に対し慰謝料を請求することが可能です。妻のPMS期間中に妻からモラハラやDVを受けたという場合には、離婚請求とともに妻に対して慰謝料の請求を検討するとよいでしょう。

    なお、DVやモラハラを原因とする慰謝料は、具体的な状況に応じて金額が変わってきますので、一概にいうことはできませんが、一般的な相場としては50万円から300万円程度であることが多いです。

  2. (2)慰謝料請求をするためには証拠が重要

    モラハラやDVを理由に慰謝料請求をするためには、慰謝料を請求する側において、相手からモラハラやDVを受けたということを証拠により立証していかなければなりません。相手がモラハラやDVを認めない場合、証拠がなければ裁判をしても慰謝料の支払いは認められませんので、まずは慰謝料請求をするための証拠を集めるようにしましょう。

    モラハラおよびDVの立証に必要な証拠としては、以下のようなものが挙げられます

    【モラハラの証拠】
    • モラハラ現場を録音、録画したもの
    • モラハラの内容がわかるメール
    • モラハラの内容の記した日記
    など

    【DVの証拠】
    • DV現場を録音、録画したもの
    • DVによる怪我を撮影した写真
    • 医師の診断書
    • DVの内容を記した日記
    • 警察や相談機関での相談記録
    など

3、PMSの改善には家族の協力が大切

妻と離婚するだけが解決方法ではありません。PMSを改善することで夫婦としての関係を再構築できる可能性があります。

  1. (1)まずはPMSについて理解する

    男性は、そもそもPMSという病気を理解していない方も少なくありません。妻がたびたびイライラしたり、無気力になったり、暴力を振るったりするのは、妻の性格だからとあきらめている方もいるでしょう。しかし、妻のそのような症状は、PMSが原因である可能性がありますので、すぐに離婚を決断するのではなく、まずはPMSについて理解することが大切です
    妻が自分にきつく当たってくるのは女性ホルモンの影響であることがわかれば、妻との関係を見直すことができるかもしれません。インターネットや書籍などでPMSに関する情報を簡単に入手することができますので、少しずつ理解を深めていくようにしましょう。

  2. (2)症状が深刻な場合には医療機関へ相談する

    PMSの症状が深刻な場合には、薬による治療を行うことで、症状を和らげることができる可能性があります。妻がPMSの症状で苦しんでいるようであれば、医療機関への受診を勧めてみるとよいでしょう。
    薬による治療でPMSの症状が改善されれば、暴言や暴力などの頻度も減り、円満な夫婦生活を取り戻すことができるかもしれません。お互いに好きで結婚したのですから、すぐに離婚という決断をするのではなく、相手に寄り添ってPMSの改善に取り組んでいくのも一つの解決方法になるでしょう。

4、離婚について弁護士に相談するメリット

離婚問題を弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。

  1. (1)離婚に向けた準備についてアドバイスを受けられる

    妻との離婚を決断した場合、すぐに離婚を切り出すのは得策ではありません。十分な準備をすることなく離婚を切り出してしまうと、離婚を有利に進めることができず、不利な条件で離婚に応じなければならないおそれがあります。そのため、離婚を切り出す前に、十分な準備を整えておくことが大切です

    離婚に向けた準備には、さまざまなものがありますが、代表的なものとしては、以下の事項が挙げられます。

    • 離婚条件についての検討(親権、養育費、婚姻費用、慰謝料、財産分与、面会交流など)
    • 慰謝料請求のための証拠収集
    • 財産分与のための財産調査
    • 離婚後の生活拠点の確保(引っ越しの見積もり、新居の契約など)
    など


    弁護士に相談をすれば、ご自身の状況に応じて、必要な準備事項をピックアップしてもらうことができ、それらについてどのような準備をすればよいかアドバイスしてもらうことができます。初めて離婚する方だと何から手を付ければよいかわからないことも多いと思いますので、まずは弁護士に相談してアドバイスしてもらうとよいでしょう。

  2. (2)相手と直接交渉する必要がない

    離婚をするためには、相手との話し合いが不可欠です。しかし、離婚を決断する状況になると夫婦関係も冷え切っており、お互いに顔を合わせて話し合いをするのが難しいことがあります。時間をつくって話し合いをしても、すぐに感情的になってしまい、冷静な話し合いができないことも多いです。

    そのような場合には弁護士に依頼するのがおすすめです。弁護士に離婚問題の解決を依頼すれば、弁護士が代理人として相手との交渉を行ってくれます。ご自身は直接交渉を行う必要がなくなりますので精神的な負担は大幅に軽減されるでしょう。

    また、弁護士であれば法的観点から冷静に話し合いを進めることができますので、当事者だけで話し合いをするよりもスムーズに離婚できる可能性が高くなります

  3. (3)不利な離婚条件を受け入れるリスクを回避できる

    離婚にあたっては、親権、養育費、婚姻費用、慰謝料、財産分与、面会交流などの離婚条件の取り決めが必要になります。これらの離婚条件を定めるにあたっては、法的知識や経験が必要になりますので、それらがない方だと不利な条件で離婚に応じてしまうリスクがあります。
    たとえば、慰謝料であれば金額の相場がありますし、財産分与であれば財産調査によりお互いの財産を明らかにしてからでなければ正確な財産分与はできません。そのため、少しでも有利な条件で離婚をしたいという場合には、弁護士のサポートが不可欠といえるでしょう

5、まとめ

PMSは女性特有の精神的あるいは身体的症状で、月経前にさまざまな精神的・身体的不調が生じます。症状によっては、夫に対して暴力を振るったり、モラハラをするようなケースもあります。
これは本人の性格ではなくPMSによるホルモンバランスの影響ですので、まずはそれを理解して妻に寄り添ってあげることが必要ですが、それでも一緒に生活するのが難しいという場合には、離婚も一つの解決方法となります。離婚を決断した場合には、事前の準備は妻との交渉にあたって弁護士のサポートが必要になりますので、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。

配偶者からDVやモラハラの被害を受けており、離婚を考えている方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています