事実婚の解消における、慰謝料請求や財産分与の扱いを解説
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令和3年12月、船橋市では、法的結婚ができない同性カップルらを市がパートナー同士だと証明する制度「ふなばしパートナーシップ宣誓制度」が始まりました。同性カップルは法的には「事実婚」の状態にあたりますが、パートナーシップ制度を利用することにより、住宅の同居申し込みや病院での面会申し込みなどにおける不利を緩和することが可能になります。
夫婦が離婚する際、どちらかの側が不貞行為や暴力などの不法行為を配偶者に対してはたらいていた場合には、慰謝料を請求することができます。そして、法律上の既婚者と同様に、事実婚をしているカップルが関係を解消する際にも、慰謝料を請求することは可能です。
本コラムでは、事実婚の解消における慰謝料の請求や、財産分与や養育費の取り扱いなどについて、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。
1、事実婚とは?
まず、法律上の婚姻関係と事実婚の違いについて確認しておきましょう。
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(1)法律上の婚姻関係と事実婚の違いとは?
法律上の婚姻関係にある夫婦とは、結婚に際して役所に婚姻届を提出・受理されており、民法上も戸籍法上も正式な婚姻関係と認められる夫婦のことです。
これに対して、婚姻届を提出していないために法律上の婚姻関係がないのにもかかわらず、実態は夫婦のように生活している男女を「事実婚」の関係にある夫婦といいます。 -
(2)事実婚が成立する要件とは?
過去の事例から、事実婚が成立する客観的な要件は以下の2点とされています。
- 男女双方に婚姻する意思があること。
- 共同生活、つまり同居して生計を一にしていること。
住民票の登録についてですが、事実婚であることを明らかにしておくことは法律で義務付けられているわけではありません。それぞれを別世帯として住民票の登録をしておくことも可能です。
ただし、住民票の続柄欄に「夫/妻(未届)」または「同居人」と記載があると、事実婚の関係にある夫婦であることの客観性がいっそう高くなるでしょう。 -
(3)事実婚のメリットとデメリットとは?
事実婚は、恋愛関係と法律上の婚姻関係の中間のような位置づけです。このため、法律上の婚姻関係と異なり、以下のメリットがあります。
- 相手方と名字を同一にしなくてよい
- 相手方と別れて事実婚の関係を解消しても戸籍に履歴が残らない
- 夫婦間においては法律上の婚姻関係と同様の権利を得ることができる
このようなメリットとライフスタイルや夫婦であることに対する価値観の多様化も相まって、あえて法律上の婚姻関係ではなく事実婚を選ぶカップルは増えているようです。
その一方で、事実婚にもデメリットはあります。- 事実婚の配偶者は所得税における配偶者控除や医療費控除が受けられない
- 法定相続人になれない
- 相続したとしても最大1億6000万円までの相続税評価額に対して相続税が課税されない配偶者控除が受けられない
このように、主に社会保険や相続の面でデメリットがあることを知っておく必要があるでしょう。
2、事実婚でも慰謝料は請求できる?
事実婚の関係にあると認められる夫婦には、法律上の婚姻関係にある夫婦と同様に民法第752条で定める夫婦の同居義務・協力義務・扶助義務が発生します。つまり、民法第770条に定める裁判で離婚の訴えを提起することができる条件が、そのまま事実婚の解消を提起することができる条件として適用されることになると考えておいてよいでしょう。
したがって、事実婚の相手方による浮気やドメスティック・バイオレンス、悪意の遺棄などの行為によって受けた精神的苦痛については、相手方に慰謝料を請求することができるのです。たとえば、性格や趣味が合わない、互いの親族と折り合いが悪い、会話が弾まないなどの理由は、法律上の婚姻関係にある夫婦と同様、単なる性格の不一致とされ、慰謝料を請求する理由にはなりません。
3、事実婚での財産分与はどうなる?
事実婚の解消時には、法律上の婚姻関係にある夫婦と同様に民法第768条第1項に基づき相手方に対して財産分与を請求することができます。
事実婚における財産分与とは、事実婚の関係になってから夫婦がこれまでの共同生活のなかで形成・維持してきた財産について、その名義に関係なく事実婚の解消時に貢献度に応じて平等に分けましょうというものです。財産分与は、預貯金や株式などの金融資産、不動産、美術品、自家用車、さらには将来支払われることが確実な退職金も対象になります。
ただし、事実婚の関係になる前から個別に所有していた財産は「特有財産」であり、その維持に相手方の協力が認められた場合でもない限りは、基本的に財産分与の対象とはなりません。また、事実婚の期間中に相手方が相続や遺贈で取得した財産についても、夫婦で形成・維持してきた財産とはいえないため財産分与の対象とはなりません。
財産分与をする・しない、および財産分与の割合や分与する財産については、事実婚を解消する際の話し合いから始まります。話し合いがまとまらない場合、調停や裁判に移行することになります。その過程で最終的に財産分与の合意あるいは判決が出されるわけですが、過去の判例や慣行面によりますと別居して実質的に事実婚を解消した時点における共有財産額の、「2分の1ずつ」とされることが多いようです。
後編では事実婚の夫婦で子どもにいる場合や相続、別れたいときにどうすべきかについて解説します。
4、子どもがいる場合、養育費はどうなる?
事実婚における養育費とは、「子どもが大人として自立できるようになるまで必要なお金」のことです。事実婚を解消したあとに親権を得ず、わが子を監護していない親が、子どもを監護する側に支払うケースが一般的です。
養育費は事実婚を解消した相手方のために払うお金ではありません。養育費の額は、双方の収入や子どもの人数などを基準に夫婦間の合意または裁判所の判決によって決まります。ここで問題となるのが、事実婚の期間において養育費の支払義務者と子どもの間に法的な親子関係があるか? という点です。
そもそも事実婚は法律上の婚姻関係ではないのですから、何も手続きをしないままでは法律上の婚姻関係のように、夫婦が共同で子どもの親権を持つことはありません。したがって、もともと子どもと法的な親子関係になく親権者でないのであれば、事実婚を解消しても養育費を支払う義務はないということなのです。
ここで、子どもとの関係を2つのパターンに分けて、養育費を支払う義務の有無をみてみましょう。
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(1)相手方の連れ子である場合
事実婚の場合、子どもは夫婦どちらかの連れ子であることが多いものです。仮に子どもが妻(夫)の連れ子である場合、子どもは夫(妻)とは法的な親子関係にありませんので、事実婚を解消しても養育費を請求することは難しいと考えられます。
ただし、夫(妻)が子どもと養子縁組をしていれば夫(妻)は子どもの親権者になりますので、事実婚の解消に際して養子縁組も解消しない限り、夫(妻)には養育費の支払義務が発生します。 -
(2)夫婦間で生まれた子どもである場合
事実婚のように、法律上の婚姻関係にない男女の間で生まれた子どものことを、「非嫡出子」といいます。非嫡出子は、実際に出産した母親とは無条件に親子関係が認められますが、父親とは親子関係が発生しません。したがって、事実婚を解消しても慰謝料を支払う義務は(道義的観点はともかくとして)ないと考えられます。
ただし、生まれた子どもを父親が「認知」していた場合はその限りではありません。認知することで父親と子どもの間には法的な親子関係が発生し、事実婚を解消したあと養育費の支払を拒否することは難しくなると考えられます。
5、相続はどうなる?
人が死亡して相続が発生すると、亡くなった人の相続人には基本的に誰でもなることが可能です。しかし、それでは相続人の地位や相続割合などをめぐって収拾がつかなくなってしまいます。そこで、民法では亡くなった人の相続人になることができる人の基準として「法定相続人」を定めています。
法定相続人のうち配偶者については、民法第890条で「常に相続人となる」とされています。つまり、配偶者は亡くなった人に子どもや両親などの血のつながりがある相続人がいたとしても、民法の欠格事項や廃除要件に該当しない限り確実に相続人となることが可能なのです。配偶者の要件に婚姻期間の長短は関係なく、たとえ1日だけの婚姻関係でも法律上の夫婦であれば配偶者としての相続権が認められます。
しかし、配偶者とは法律上の婚姻関係つまり民法上の婚姻届を提出したうえで結婚した夫ないし妻のことです。事実婚姻における配偶者は、そもそも法律上の婚姻関係にないわけですから、当然に法定相続人としての権利が認められていません。
ただし、民法には「特別縁故者」という規定があります。特別縁故者とは亡くなった人の実の家族と同じくらいに親密な関係にある人のことで、亡くなった人と事実婚の関係にあった配偶者も該当する場合があります。
もし事実婚の配偶者が特別縁故者として認められ、かつあなたに子どもなど法定相続人がいない場合は、たとえ浮気をしていたとしても事実婚の配偶者はあなたの相続発生後に財産の一部または全部を相続する権利を得る場合があります。
もしあなたが事実婚の配偶者に一切の財産を残したくないのであれば、他の人を相続人に指定した遺言を作成しておくとよいでしょう。なお、生前に養子縁組または認知した子どもについては、法定相続人としての地位が認められます。
6、事実婚が解消できない場合の対応方法とは?
事実婚を開始したときと同様に、双方の同意があればいつでも事実婚を解消することができます。しかし、正当な理由をもって事実婚の解消を相手方にもちかけても相手方が拒否するケースも考えられます。また、慰謝料や財産分与などの諸条件をめぐって相手方との話し合いが調わないこともあるでしょう。
このような場合、その後は家庭裁判所での調停(内縁関係調整調停)における話合い、さらに裁判に移行することが想定されます。しかし、調停や裁判は相手方との話合いと異なり平日に裁判所へ赴く必要があります。さらに裁判では自身の主張について法的側面が重視されることになるのです。
また、手続きや訴状などの書類作成についても煩雑かつ専門的な知見が求められることになるでしょう。その結果、調停や裁判の期間を合わせると解決まで数年を要することもありえます。
このような事態になる前に、相手方の不法行為などを理由に事実婚の解消を考えた場合はできるかぎり早めに弁護士に相談することをおすすめします。事実婚の解消に関する問題の解決に実績豊富な弁護士であれば、法的なアドバイスはもちろんのこと、あなたの代理人として相手方と交渉し、円満な事実婚の解消に向けた働きが期待できます。仮に調停や裁判に移行した場合も同様です。
体調に不安を感じたら早めに病院で診察や治療を受けることと同じように、事実婚を解消するに際して何か問題点を感じたら、それが複雑化する前に弁護士のような専門家へ相談してみてください。
7、まとめ
法律上の婚姻関係と比較した手軽さと気軽さにメリットを感じ、事実婚を選んだ方もいるかもしれません。しかし、事実婚の解消は法律上の婚姻関係の解消つまり離婚と同じくらいに複雑化することがあります。
事実婚の解消だからと簡単に考えず、弁護士などの専門家と相談しながら慎重に解決に向けた動きを進めましょう。まずは、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士にご相談してみてください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
