任意出頭とは|応じないとどうなる? 任意同行との違いなど
- その他
- 任意出頭
令和4年版船橋市統計書によると、2021年に千葉県船橋市内で認知された犯罪件数は3040件でした。
警察の求めに応じて任意出頭をすると、すぐに逮捕されてしまうのではないかと不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。実際には、任意出頭したらすぐに逮捕されるわけではありません。しかし、将来的に逮捕される可能性はあるので、あらかじめ弁護士に相談することをおすすめします。
本記事では任意出頭について、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が分かりやすく解説します。
1、任意出頭とは
「任意出頭」とは、検察官・検察事務官・司法警察員(警察官)の求めに応じて、検察庁や警察署へ任意に出頭することをいいます。
一般的には、警察官または検察官が刑事事件の被疑者に対して任意出頭を求めることが多いです。また、被疑者以外の者が参考人として任意出頭を求められることもあります。
本記事では、被疑者の任意出頭に絞って解説します。
-
(1)警察が被疑者に任意出頭を求める理由
警察が刑事事件の被疑者に対して任意出頭を求めるのは、事件に関する事情を聴くためです。被疑者から聴き取った事情をもとにして、さらに捜査を進展させることを目的としています。
被疑者を逮捕すれば強制的に取り調べができますが、常に逮捕が認められるとは限らず、また必ず被疑者を逮捕すべきというわけではありません。
嫌疑が固まっていない段階での逮捕は困難ですし、比較的軽微な事件であれば、被疑者在宅のまま捜査を進めるのが適切な場合もあります。
このような場合、警察は被疑者に任意出頭を求めて、被疑者を逮捕せずに事情を聴こうとすることが多いです。 -
(2)任意出頭した場合の事情聴取の内容
警察署へ任意出頭すると、事件に関して以下のような事柄を聞かれることになります。
- 事件への関与の有無、内容
- 事件当日の行動
- 罪を犯した場合は、その動機
- 事件現場における心情
- 被害者との関係性
- 共犯者の有無
- その他、事件に関して知っていること
任意出頭をしたとしても、その場で警察官の質問に答える義務はありません。答えたくない場合は答えなくてよいですし、答えるか答えないかを個別に選ぶこともできます。
-
(3)任意出頭と任意同行の違い
任意出頭と同じく、被疑者が検察官や警察官の取り調べに任意で協力するものとして「任意同行」があります。
任意出頭と任意同行の違いは、検察庁や警察署へ出頭する際、捜査機関側の担当者が同行しているかどうかです。
任意出頭の場合、被疑者が自ら検察庁や警察署へ出頭するのであって、警察官などは同行しません。
これに対して任意同行の場合は、警察官などに被疑者が同行する形で出頭します。
なお、任意同行は逮捕とは異なり、あくまでも任意処分です。したがって、任意同行の際に被疑者へ手錠がけられることはありませんし、被疑者は任意同行を拒否することもできます。
2、任意出頭を拒否すると、逮捕される可能性が高まる?
被疑者には、任意出頭の求めに応じる義務はありません。任意出頭に応じなかったからといって、法律上のペナルティーを受けることはありませんし、任意出頭をするかどうかは、あくまでも要請を受けた人(被疑者)が自ら判断すべき事項です。
しかし、任意出頭を拒否すると、その後に逮捕される可能性が高まる点には注意が必要です。
捜査機関は、被疑者が任意出頭に応じてくれれば事情聴取ができます。事情聴取の内容によっては、被疑者を逮捕せずに捜査を進めようと考えているかもしれません。
これに対して、被疑者が任意出頭に応じない場合には、捜査機関は被疑者から事情聴取をすることができません。この場合、捜査機関は被疑者を逮捕した上で取り調べようと考える可能性が高いです。
任意出頭を拒否する際には、逮捕の可能性が高まる不利益について慎重に考慮する必要があります。なるべく早く弁護士のアドバイスを受けて、任意出頭に応じるかどうかを適切に判断しましょう。
3、任意出頭に応じると、すぐに逮捕される?
-
(1)逮捕には令状が必要|すぐに逮捕されるわけではない
捜査機関が被疑者を逮捕するためには、原則として裁判官が発行する逮捕状が必要です。
すでに逮捕状が発行されていれば、捜査機関が被疑者に任意出頭を求める必要はありません。直ちに被疑者を逮捕すればよいからです。
したがって、任意出頭を求められた段階では、まだ逮捕状は発行されていないと考えられます。逮捕状がなければ被疑者を逮捕することはできないので、任意出頭をしてもすぐに逮捕される可能性は低いでしょう。 -
(2)任意出頭後の一般的な流れ|途中で退去することも可能
警察署へ任意出頭した場合、基本的にはそのまま取り調べが行われます。取り調べでは、警察官が被疑者に対して事件に関する質問をし、被疑者はそれに回答します。
被疑者には黙秘権が認められているため、警察官の質問に回答するかどうかは任意であり、拒否しても構いません。また、取り調べの途中で退去することも認められています(刑事訴訟法第198条第1項)。
警察署に任意出頭して取り調べを受けた後は、一定の期間を経て検察官からも任意出頭を求められるのが一般的です。
検察官は、被疑者を起訴するかどうか決める役割を担っています。起訴の要否を判断できるだけの情報を得るため、検察官は任意出頭した被疑者に対して取り調べを行います。
検察官の取り調べにおいても、被疑者は回答を拒否することができますし、途中で退去することも可能です。 -
(3)任意出頭後に逮捕されやすいケース
任意出頭時の取り調べを経て、捜査機関が被疑者の身柄を拘束すべきと判断した場合は、裁判官に逮捕状を請求した上で被疑者を逮捕することがあります。
たとえば以下のようなケースでは、任意出頭後に被疑者が逮捕される可能性が高いと考えられます。- 任意出頭時の取り調べにおいて、被疑者が一貫して黙秘しており、引き続き時間をかけて取り調べを行う必要があると思われる場合
- 任意出頭時の取り調べにおいて得られた被疑者の供述が、共犯者の供述と矛盾している場合
- 任意出頭時の取り調べにおいて得られた被疑者の供述により、重大な犯罪に関する被疑者の嫌疑が確実となった場合
- 任意出頭後に行われた共犯者の取り調べを通じて、重大な犯罪に被疑者が関与している高度の疑いが生じた場合
任意出頭後に逮捕される可能性がどの程度あるのかについては、ケース・バイ・ケースであるため一概に言えません。判断が難しい場合は、弁護士にアドバイスを求めましょう。
4、任意出頭を要請されたら弁護士に相談を
警察官や検察官に任意出頭を要請されたら、あらかじめ弁護士へ相談することをおすすめします。
警察官や検察官の取り調べにおいて不用意な供述をしてしまうと、それを根拠に逮捕・起訴されて刑事罰を受けることになりかねません。被疑者は黙秘権があることを踏まえつつ、不当に重い罪責を問われないように注意しながら取り調べに臨むべきです。
弁護士は、取り調べに臨む際の心構えを分かりやすくアドバイスいたします。また、具体的な事案に応じて話すべきこととそうでないことを区別し、取り調べにおいて被疑者が不本意な供述をしないようにサポートいたします。
早い段階で弁護士に相談すれば、その後の弁護活動がスムーズになる点も大きなメリットです。
比較的軽微な犯罪であれば、弁護士が被害者との示談などを通じて、起訴の必要性がないことを検察官に訴えます。検察官に起訴された場合には、公判手続き(刑事裁判)における代理人として被告人を守ります。
犯罪の疑いで任意出頭を求められた場合は、なるべく早く弁護士へご相談ください。
5、まとめ
警察官や検察官の任意出頭要請に対して、被疑者が応じる義務はありません。
任意出頭を拒否してもペナルティーはなく、任意出頭後の取り調べの途中で退去することもできます。また、被疑者には黙秘権があるため、取り調べにおける質問に対して答えなくても構いません。
ただし、任意出頭を拒否したり、任意出頭後の取り調べにおいて黙秘したりすると、後に逮捕される可能性が高まる点には注意が必要です。弁護士に相談しながら総合的な検討を行い、任意出頭に応じるかどうか、および取り調べにおいて何を話すべきかを適切に判断しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、刑事弁護に関するご相談を随時受け付けております。犯罪の疑いをかけられ、警察官や検察官から任意出頭を求められた場合には、速やかにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています