0120-277-045

平日9:30〜21:00/土日祝9:30〜18:00

メールでのお問い合わせ 24時間・365日受付
メニュー メニュー

キャンセルカルチャーは刑法に触れて犯罪になる可能性がある? 法律的な観点から解説

2023年10月26日
  • その他
  • キャンセルカルチャー
  • 刑法
キャンセルカルチャーは刑法に触れて犯罪になる可能性がある? 法律的な観点から解説

インターネットの発展によって、誰もが自分の意見や考えを多くの人に発信できるようになりました。

SNSやネット掲示板を利用することで個人の意見や考えが大きなムーブメントになることもありますが、同時に、特定の個人や企業を糾弾して排除してしまうような、攻撃的な運動に発展してしまうこともあります。このような動きを「キャンセルカルチャー」といいます。

本コラムでは「キャンセルカルチャー」に関わる行為が犯罪となるかどうか、自分が発信した情報によってキャンセルカルチャーが起きたときの法的な責任などについて、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。

1、「キャンセルカルチャー」とは?

  1. (1)キャンセルカルチャーの意味

    「キャンセルカルチャー」という言葉には、法律などで定められた明確な定義はありません。

    現代の社会におけるキャンセルカルチャーとは、主にSNSにおいて、有名人や著名人の言動、企業のCM、テレビ番組の内容などを問題として取り上げ、テレビ番組や雑誌などのメディアに出させないように要求したり放映中止を求めたりすることを指します。

    ネット上における抗議行動が、政治家の辞任や芸能人の出演停止に業界追放、特定の企業を対象にした不買運動や役員の降格、フィクション作品の放送や上映の停止といった事態にまで発展するのが、キャンセルカルチャーの特徴です。

  2. (2)キャンセルカルチャーと「炎上」の違い

    いわゆる「炎上」は、キャンセルカルチャーに近い現象といえます。
    炎上とは、ある発言や行動が社会に拡散されたことで批判や非難の声が高まるとともに、賛否両論の状態となって激しい議論が交わされる状態を指します。

    キャンセルカルチャーも、ネット上で批判や非難が集中するという点では、炎上と関連性があります。
    ただし、キャンセルカルチャーの場合には批判や非難にとどまらず、問題点を理由にして特定の個人や作品などの排除や排斥を求める行為が併せて起きます。
    より具体的・直接的な結果を生じさせるという点で、キャンセルカルチャーは炎上の一歩先にある、さらに深刻な現象といえるでしょう

2、キャンセルカルチャーの刑事責任|威力業務妨害罪が成立する可能性

キャンセルカルチャーの発端となる情報を発信した場合は、その内容次第では刑事責任を問われる可能性があります。

キャンセルカルチャーに関して問われる可能性のある刑事責任のひとつが、「威力業務妨害罪」です。

  1. (1)威力業務妨害罪とは?

    威力業務妨害罪とは、刑法第234条に定められている犯罪です。

    威力を用いて人の業務を妨害した者を処罰の対象としており、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

  2. (2)キャンセルカルチャーと威力業務妨害罪の関係

    威力業務妨害罪が保護しているのは、条文では「人」と示されていますが、個人(自然人)のみならず法人や団体なども保護の対象になります。

    「威力」といえば暴力的な行為や脅迫といったものを想像されるかもしれませんが、法律的には「相手の自由な意思を制圧する程度の強い威勢」と解釈されています。
    したがって、たとえば執拗(しつよう)なクレームや犯罪予告のメールなども「威力」に該当します
    また、「業務」とは「人が社会生活上の地位にもとづき反復・継続しておこなう行為」と解釈されています。
    そのため、営利を目的とした仕事や事業だけでなく、非営利の文化的な活動も保護対象となるのです。

    キャンセルカルチャーの多くは、有名人や企業などの問題点を指摘することから発生しますが、それに加えてテレビ界からの追放や役職の解任、不買運動といった呼びかけが過度になると、「他人の業務を妨害した」と評価される可能性があります。
    たとえ攻撃の対象となった個人や法人側に問題があったとしても、「人の業務」は法律によって保護されているため、これを妨害すれば罪に問われる可能性があるのです

3、キャンセルカルチャーの刑事責任|名誉毀損(きそん)罪・侮辱罪が成立する可能性

SNS上でキャンセルカルチャーを行うと、「名誉毀損罪」や「侮辱罪」に問われる可能性もあります。

  1. (1)名誉毀損罪・侮辱罪とは?

    名誉毀損罪は刑法第230条に、侮辱罪は同第231条に定められている犯罪です。
    名誉毀損罪は「公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した者」を、侮辱罪は「事実を摘示しなくても公然と人を侮辱した者」を処罰の対象にしています。

    それぞれの法定刑は以下のとおりです。

    • 名誉毀損罪……3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金
    • 侮辱罪……1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料
  2. (2)キャンセルカルチャーと名誉毀損罪・侮辱罪の関係

    キャンセルカルチャーは、ときとして根拠のない誹謗中傷が原因で発生することがあります。
    つまり、SNSなどでスキャンダラスな情報や根も葉もないデタラメな情報にもとづいて、個人が糾弾される場合です。

    名誉毀損罪と侮辱罪が成立するには「公然性」が必要ですが、SNSやインターネットは不特定・多数の人が目にするメディアであるため、公然性はほぼ必ず満たされます

    また、名誉毀損罪と侮辱罪を区別するのは「事実の摘示」があるかどうかです。
    ここでいう「事実」とは「具体的な事がら」を指すものであり「真実」という意味ではありません。
    そして名誉毀損罪は、事実の有無を問わないと条文に明示されています
    ここでいう「事実」とは「真実」を指すものです。
    つまり、情報が真実でも嘘でも、具体的な事実を摘示することで相手の社会的な名誉を低下させたり、あるいは低下させる可能性があったりすると、名誉毀損罪が成立します。

    事実の摘示がなければ名誉毀損罪の成立は否定されますが、侮辱罪が成立する可能性は残っています。
    侮辱罪の要件は「侮辱」です。
    侮辱とは、具体的な事実を摘示せず「他人の人格を蔑視する価値判断を表示する」という行為を意味します。
    たとえば「バカ」や「ブス」といった表現は、具体的な事がらではない抽象的な評価なので、侮辱罪による処罰の対象です

    なお、刑法第230条の2には、名誉毀損罪について、公共の利害に関する事実であり、もっぱら公益を図る目的があって、その内容が真実であれば罪にならないという規定があります。
    政治家や芸能人のスキャンダル、企業や団体による不正といった情報は、公共の利害や公益を図る目的という要件を満たす可能性があるので、根も葉もないデマでなければ、通常罪には問われません。

    しかし、たとえ名誉毀損罪の成立が否定される状況でも、その表現が人格を蔑視するものであったり、執拗なクレームで他人の業務を妨害する状況があったりすれば、罪に問われる可能性があります

4、キャンセルカルチャーの民事責任|損害賠償責任が発生する可能性

キャンセルカルチャーとなる情報を発信したことで、刑事責任とは別に民事責任も生じる可能性があります。

  1. (1)情報の発信が不法行為になる可能性がある

    個人や企業・団体などを標的に業務妨害や名誉毀損などにあたる攻撃を加える行為は犯罪であり、刑事的な責任を問われます。
    刑法上の罪を犯した責任は、懲役・禁錮・罰金といった刑事罰によって償われます。

    しかし、刑事的な責任を果たしたからといって、被害者が負った損害は補われるわけではありません。
    犯罪によって他人の権利や利益を侵す行為は、「不法行為」として、民事責任も問われることになるのです

  2. (2)不法行為によって生じた損害には賠償責任が生じる

    民法第709条には、不法行為による損害賠償責任に関する規定があります。
    故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵した者には、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。

    キャンセルカルチャーとなった情報を発信し、これが不法行為にあたると判断されれば、相手が負った経済的な損害や精神的苦痛に対する慰謝料を支払わなくてはなりません。
    たとえば、大規模な不買運動を起こしたり、誤った情報によって有名人が仕事を失ったりする事態を招いた場合には、多額の損害賠償請求を受けてしまうおそれがあるのです

5、キャンセルカルチャーなどのトラブルに発展したときの正しい対応

不用意な発言や不確かな情報が思いがけず拡散されてしまい、キャンセルカルチャーなどの大きなムーブメントを引き起こすという事態は、決して他人事ではありません。
誰でも簡単に情報を発信できる社会であるからこそ、いつ、誰が加害者になってしまい刑事責任や民事責任を問われる事態になるのかもわからないのです。

以下では、自分が発信した情報が原因となってキャンセルカルチャーなどのトラブルに発展してしまった場合の対処法を解説します。

  1. (1)まずは弁護士への相談を急ぐ

    ひとたび世間が注目し、関心を寄せてしまった情報は、たとえ発信の当事者であってもその拡散を止められません。
    問題が大きくなってしまえば、被害者からの届け出によって警察が刑事事件として捜査を始めたり、損害賠償請求を受けたりする事態にも発展するおそれがあります。

    ネット上で起きたトラブルを個人や一企業だけの力で解決するのは困難です
    深刻な事態に発展する前に、まずは弁護士への相談を急ぎ、アドバイスや必要なサポートを受けましょう。

  2. (2)刑事責任の軽減に向けた弁護活動を依頼できる

    キャンセルカルチャーを引き起こす原因となった情報発信が威力業務妨害罪や名誉毀損罪などの犯罪にあたる場合は、警察・検察官による捜査を受けることになります。
    逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあると判断されると逮捕され、最長23日間にわたる身柄拘束を受けるので、社会生活への悪影響は計り知れません。
    さらに、検察官が起訴に踏み切れば刑事裁判が開かれ、有罪判決が下されれば刑罰が科せられるので、刑務所に服役することで職を失ったり、前科がついて不利な扱いを受けたりすることになるおそれがあります。

    「刑事責任を避けたい」「処分を軽減したい」と望むなら、弁護士による法的な角度からのサポートが必須です
    具体的には、弁護士には以下のような弁護活動を依頼することができます。

    • 被害者との示談交渉を進めて被害届や刑事告訴の取り下げを請う
    • 深い反省や再犯防止対策を示して検察官による不起訴処分を目指す
    • 加害者にとって有利にはたらく証拠を集めて刑罰の軽減を図る
  3. (3)損害賠償請求への対応も弁護士に一任できる

    キャンセルカルチャーの的になってしまった個人や法人・団体から実際に生じた損害の賠償や精神的苦痛に対する慰謝料などの請求を受けた場合も、やはり弁護士のサポートが欠かせません。

    裁判外の減額交渉や訴訟対応は、個人だけで行うことは困難です
    弁護士に依頼して、以下のようなサポートを受けましょう。

    • 示談交渉を代行してもらう
    • 過去に起きた同じようなケースと照らして妥当な金額を提示する
    • 加害者にとって経済的な負担が小さくなるよう支払条件を考慮してもらう

6、まとめ

SNSなどで有名人や著名人、企業や団体などを名指しして攻撃して、その立場から引きずり下ろしたり不買運動などを起こしたりするムーブメントを「キャンセルカルチャー」といいます。

日本では自分の意見や考えを自由に発信する権利が認められていますが、その内容や方法が刑法に定められている犯罪に該当して罪を問われたり、相手の権利・利益を侵せば賠償する責任が生じたりします。
したがって、不用意な発言や不確かな情報の発信は控えたほうがよいでしょう。

自分が発信した情報が原因で警察から犯罪の容疑をかけられてしまったり、企業などから賠償を求められたりする事態に発展した場合には、個人の力だけで解決するのは困難です。
キャンセルカルチャーに関するトラブルにお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください
刑事事件・民事トラブルの解決実績を豊富にもつ弁護士が、穏便な解決を目指して全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

お気軽にお問い合わせください ご相談の予約はこちら

0120-277-045

平日9:30〜21:00/土日祝9:30〜18:00

メールでのお問い合わせ
24時間・365日受付

お気軽にお問い合わせください ご相談の予約はこちら

船橋オフィスの主なご相談エリア

千葉県:千葉県船橋市(湊町、本町、葛飾、法典、夏見、前原、習志野台、新高根・芝山、八木が谷、豊富)、習志野市、市川市、八千代市、鎌ヶ谷市、白井市、浦安市、松戸市、野田市、佐倉市、酒々井町、成田市、富里市、印西市、神崎町、香取市、東庄町、銚子市
東京都:東京都江戸川区、葛飾区、江東区など、千葉県内およびその他近隣地域

ページ
トップへ