退職後に給料が未払い! 在職中の分も含めて請求する方法
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会社を退職した後、しばらく待っても最後の給料が支払われないということがあります。社員が退職した後であっても会社側には給料の支払い義務があるため、未払いの給料がある場合には、しっかりと請求する必要があります。
また、退職後に給料を払わないような会社では、在職中の給料や残業代についても未払いが発生していた可能性があるため、過去の支払い状況などをあらためて確認することが大切です。
本コラムでは、退職後に給料が未払いだった場合に労働者がとるべき対応や請求方法について、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。
1、退職後に給料が支払われない…法的な問題は?
まず、退職後に給料が支払われないことの法的な問題を解説します。
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(1)退職後でも会社には給料の支払い義務がある
労働基準法により、会社には、労働者が働いた分の給料を支払う義務があります。
給料の支払い義務は、労働者が会社に在籍中はもちろんのこと、退職した後も消滅しないため、退職した労働者に対しても会社は給料を支払わなければなりません。
したがって、退職後に給料の未払いがある場合には、労働基準法違反となります。 -
(2)未払い給料には時効の問題がある
未払い給料がある場合に注意しなければならないのが「時効」の問題です。
労働者の未払い給料の請求権は、給料の支払い予定日から3年を経過すると時効により消滅してしまいます。
退職直前の給料であれば3年という時間がありますので余裕をもって対応することができますが、会社に在籍中から未払いの給料や残業代がある場合には、退職時点ですでに時効になっているものもあるでしょう。
そのため、退職後に未払い給料の請求をする場合には、早めに対応することが大切です。 -
(3)退職後の未払い給料には遅延損害金が発生する
退職後の未払い給料については、「賃金の支払の確保等に関する法律」により、年14.6%の割合による遅延損害金が発生します。
会社に対して未払い給料を請求する際には、遅延損害も忘れずに請求しましょう。
2、まずは確認|在職中の給料・残業代は支払われている?
会社に対して未払いの給料を請求する前に、在職中の給料や残業代が正しく支払われているかどうかを確認しておきましょう。
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(1)給与明細や勤務記録の確認
退職後に未払い給料がある場合には、在職中の給料や残業代にも未払いが発生している可能性があります。
そのため、在職中の給与明細や勤務記録などを確認して、未払いの給料や残業代などがあるかを確認することも大切です。
とくに在職中の給料や残業代が未払いであった場合には、3年という時効の問題もあるため、早めに対応する必要があります。
手元に給与明細や勤務記録がないという場合には、会社に対して、証拠の開示を求めていくとよいでしょう。 -
(2)みなし残業制でも残業代の請求は可能
会社によっては、みなし残業制を採用しているところもあります。
みなし残業制とは、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度です。
たとえば、みなし残業を20時間と設定した場合には、実際の残業時間がそれを下回る場合でも、20時間分の残業代を支払ってもらうことができます。
しかし、みなし残業制を採用していたとしても、実際の残業時間がみなし残業時間を上回る場合には、みなし残業代とは別に超過分の残業代の支払いをしなければなりません。
みなし残業制を理由にして、残業代の支払いが一切ないような場合には、未払いの残業代が発生している可能性が高いでしょう。
3、給料・残業代が未払いだった場合
給料や残業代が未払いだった場合には、以下のような対応が必要になります。
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(1)未払い給料や残業代の証拠収集
未払い給料や残業代の請求をするためには、「給料や残業代が未払いである」という事実を、労働者の側で証明する必要があります。
まずは、以下のような証拠を集めるようにしましょう。- 給与明細や源泉徴収票などの給料の支払い状況がわかるもの
- 雇用契約書や労働条件通知書など雇用契約の内容がわかるもの
- 就業規則や賃金規程など賃金計算の根拠となるもの
- タイムカード、勤怠表、業務日誌など勤務状況がわかるもの
退職後にはこれらの証拠を入手するのが難しくなるため、できる限り会社に在職中から証拠を集めておくことが望ましいといえます。
また、すでに退職してしまった場合には、会社に対して資料の開示請求を行って、必要な資料の開示を求めるようにしましょう。
会社には労働関係に関する重要な書類を3年間保存する義務があるため、開示請求を行うことで必要な証拠を入手することが可能です。 -
(2)未払い給料や残業代の計算
証拠を精査した結果、未払いの給料や残業代があることが判明した場合は、正確な金額を計算する必要があります。
未払いの給料であれば、雇用契約上の基本給や手当などを基準に計算すればよいため、それほど難しい計算ではありません。
しかし、未払いの残業代の場合には、1時間あたりの基礎賃金額の計算や時間外・深夜・休日労働に応じた割増賃金の適用など非常に複雑な計算が必要になります。
ご自身では未払い残業代の計算が難しいという場合には、専門家である弁護士に相談することも検討してください。 -
(3)会社に対して未払い給料・残業代の請求を行う
未払い給料や残業代の計算ができたら、会社に対して、未払い給料や残業代の請求を行います。
請求方法についてはとくに決まりがあるわけではありませんが、まずは内容証明郵便を利用して会社に通知をするのが一般的です。
内容証明郵便を利用すれば未払い給料や残業代の請求をしたという証拠を残すことができるため、時効が迫っている場合には有効な手段となります。
会社に内容証明郵便が届いた後は、会社と話し合いを行い、未払いの給料や残業代の金額・支払い方法・支払時期などを決めていきます。
会社との間でこれらの合意が成立したら、合意書を作成するようにしましょう。 -
(4)労働審判を申し立てる
会社との話し合いで解決ができない場合には、裁判所に労働審判を申し立てることになります。
労働審判とは、裁判官や労働審判員が労働者と使用者との間に入って、紛争の解決に向けた調整などを行う手続きです。
労働審判は原則として3回以内の期日で終了することになっているので、後述する訴訟に比べると迅速な解決が期待できる手続きといえます。
また、労働審判では、まずは話し合いによる解決が試みられるため、状況に応じた柔軟な解決ができるというメリットもあります。
調停の成立または審判により労働審判の手続きは終了となります。
ただし、審判に不服がある場合には、2週間以内に異議を申し立てることで労働審判の効力は失われ、訴訟手続きに移行します。 -
(5)訴訟を提起する
会社との話し合いで解決できない場合には、労働審判を申し立てることなく訴訟を提起することも可能です。
そもそも話し合いによる解決の見込みがないという場合には、いきなり訴訟を提起したほうが、解決までの期間は短くなるでしょう。
訴訟では、当事者双方の主張をふまえつつ、最終的には裁判所が未払いの給料および残業代の支払いを判断します。
4、賃金の未払い問題を弁護士に相談するべき理由
賃金の未払いでお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)時効になる前に迅速な対応が可能
未払いの給料や残業代を請求する権利は、給料の支払い予定日から3年間で時効になってしまいます。
会社に在籍中に未払い給料や残業代がある場合には、早めに対応しなければ、時間が経つにつれて次々と時効により権利が消滅してしまいます。
不慣れな方では、会社に対して請求するまでの証拠収集や計算で手間取ってしまい、大切な権利が失われてしまうおそれもあります。
したがって、時効による権利消滅のリスクを最小限に抑えるためにも、早めに弁護士に相談することが大切です。
弁護士であれば、時効期間が迫っている事案については、時効の完成猶予や更新などの措置をとることにより、大切な権利を保全することができます。 -
(2)会社との対応を任せることができる
会社を退職した後に、未払い給料や残業代の請求のため再び会社とやり取りすることが負担に感じる労働者も少なくないでしょう。
とくに、円満な退職ではなかった場合には、会社との話し合いをしなければならないのは苦痛に感じることがあるはずです。
弁護士に依頼をすれば、面倒な会社とのやり取りをすべて弁護士に任せることができます。労働者個人から請求しても応じてくれない会社だったとしても、弁護士が代理人として対応することで、任意に支払いに応じてくれる可能性もあります。
また、労働審判や訴訟に発展した場合にも、手続きを弁護士に依頼することができます。
5、まとめ
退職後に本来支払われるはずの給料が振り込まれていない場合には、会社に対して、未払いの給料の支払いを求めることができます。
このような場合には、在職中の給料や残業代が未払いになっている可能性もあるため、一度弁護士に相談してチェックしてもらうとよいでしょう。
会社への未払い給与や残業代の請求をお考えの方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています