【後編】職場で毎朝ラジオ体操に参加。その時間も労働時間として残業代をもらえる?
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前編では、ラジオ体操は労働時間にあたるのかについて解説いたしました。
後編では、関連する事例や残業代を請求する方法などについて船橋オフィスの弁護士が解説いたします。
2、職場のラジオ体操をめぐる事例
職場でのラジオ体操が労働時間に当たるかどうかをめぐり、裁判になった事例もあります。どのように問題になったのか、そしてどのような結論に至ったのかについて見ていきましょう。
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(1)始業前5分間のラジオ体操で是正勧告を受けた事例
有名大手自動車メーカーで、始業前に任意でラジオ体操が行われていたが、一部の部署で参加が任意であることが伝わっていなかったことが発覚した事案がありました。
この事案では、従業員からの通報を受けて、地域を管轄する労働基準監督署が立ち入り調査を実施し、その後ラジオ体操や朝礼の時間を労働時間として把握するよう是正勧告を行いました。同社はその勧告を受けて、従業員500人に対し、未払賃金として総額約1000万円を支払うこととなりました。 -
(2)ラジオ体操を命じた事実はないとされた事例
ある企業に勤務する従業員Aが、会社に対して残業代の支払を求めて訴訟を提起しました。その会社の就業規則によれば、12:00~12:50と15:00~15:10に休憩時間が設けられていますが、12:45にチャイムが鳴り、12:50までの間清掃などが命じられていたこと、また15時からも業務を継続もしくはラジオ体操を行うとされていたことをAは主張。これに対し、会社側は12:45のチャイムは12:50から遅滞なく業務を開始できるようにするための予鈴であり、15時からのラジオ体操や業務も命じた事実はないと主張しました。
裁判所は、「業務の継続が義務付けられていた事実はなく、掃除・ラジオ体操も、具体的な業務命令に基づくものではない」と判断し、会社側の主張を認めてAの訴えを退けました。(ヒロセ電機事件(東京地判平成25年5月22日・労判1095号63頁)) -
(3)朝のラジオ体操への参加は任意とされた事例
ある会社に新入社員として入社したBが、始業前にラジオ体操や朝礼を行っていること、日報の作成や電話応対、システムへの入力が労働時間に当たり賃金の支払対象になるとして、未払残業代や付加金を求めて提訴しました。第1審では未払残業代や付加金の支払について一部認容されましたが、敗訴部分を不服とした会社側が高裁に控訴した事例です。
裁判所は、日報の作成に期限はなく、作成のための時間が一定程度取られていること、システムへの入力はBの所属ではない課の業務であることから残業とは認められないと判断。ラジオ体操や朝礼についても、「参加は任意であり、Bの主張を認めるに足りる証拠がない」とされ、Bの未払残業代の支払は認められない結果となりました。(東京高判平成25年11月21日・労判1086号52頁)
3、ラジオ体操に対する残業代請求方法
もしラジオ体操へ参加している時間が労働時間と考えられる場合は、残業代請求ができる可能性があります。残業代請求を行う際には、以下のような方法で行います。
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(1)弁護士に相談する
まずは、労働問題の経験が豊富な弁護士に相談しましょう。弁護士に相談することで、ラジオ体操へ参加している時間が労働時間と言えるか判断がつきますし、会社とはどのように交渉していけば良いか見通しを立てることもできます。初回の法律相談料を無料で行っている法律事務所もありますし、地域のイベントで弁護士が出張相談を受け付けていることもありますので、それらの機会を利用してみるのもおすすめです。
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(2)内容証明郵便を送る
「ラジオ体操の時間が労働時間にあたる可能性がある」と、弁護士との間で認識が一致した場合、今まで賃金が発生していなかったラジオ体操の時間を計算して、請求できる残業代を算出します。その後、「ラジオ体操をしていた時間でこれくらいの残業代が発生する」という旨の内容証明を作成し、会社側に送付します。その際、弁護士の名前で送付すると会社側が「無視できない」と感じて交渉に応じてもらえる確率が高くなります。内容証明郵便を送る際には、送った証拠を残すために別途配達証明を郵便局に依頼することを忘れないようにしましょう。
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(3)会社と交渉する
内容証明郵便を送付した後は、残業代を請求するために会社側と交渉をすることになります。その際、弁護士に依頼しておけば、自分の代わりに会社の担当者に主張したいことを過不足なく伝えた上で交渉してもらえ、交渉がこちら側に有利になる可能性が高くなります。また、会社と直接やりとりをしなくても済むようになるので、精神的な負担も大幅に少なくなるでしょう。
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(4)労働審判を申し立てる
会社側が交渉に応じない、交渉には応じるが主張を受け入れてもらえないなど、交渉が調わない場合は、地方裁判所に労働審判を申し立てます。労働審判では、裁判官1名と労働問題の知識が豊富な有識者2名とで構成される労働審判委員会が、当事者双方にヒアリングをして、アドバイスや解決策の提示を行います。双方が合意できれば調停成立となりますが、合意ができない場合は、原則として裁判所が労働審判を下します。審判の内容に対し当事者のどちらかが審判から2週間以内に異議申し立てを行うと、審判が失効して裁判に移行することになります。
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(5)労働訴訟を提起する
労働審判もうまくいかなかった場合は、労働訴訟になります。事前に労働審判を行っている場合は、すでに双方の主張や証拠書類がそろっているため、審判を行っていない場合と比べて審理がスムーズに進むことも少なくありません。訴訟では口頭弁論のほか証人尋問なども行われ、最終的に勝敗が決まります。なお、裁判の途中で裁判所から和解勧告を受けるなどして、和解が成立して終了となるケースも多く見受けられます。
4、まとめ
ラジオ体操をして身体を動かすことで、良いリフレッシュになるとも考えられますが、社員全員参加で行うことを負担に感じる労働者もいるでしょう。もし、始業前の時間や休憩時間を使ってのラジオ体操への参加を強制されている場合は、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスまでご相談ください。お客様からヒアリングを行い、ラジオ体操の時間が労働時間に当たるかどうか判断した上で、解決策を提示いたします。また、残業代を実際に会社に請求する際には、交渉や手続きを弁護士にすべて一任できるので、安心して請求することができます。
「強制参加だから仕方ない」と泣き寝入りせず、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。>前編はこちら
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています