【前編】ネットショップを立ち上げるなら知っておきたい! 特定商法取引法上の表示事項

2019年07月18日
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【前編】ネットショップを立ち上げるなら知っておきたい! 特定商法取引法上の表示事項

最近はインターネットで手軽に物を売り買いすることのできる時代です。育児や介護などでなかなか家から出られない方でも、ネットショップを開いてハンドメイドの雑貨やアクセサリーを販売できるようになりました。

ネットショップを立ち上げる際に気をつけなければならないのが、特定商取引法による規制です。特に最近では定期購入に関するトラブルが多くなっていることから、平成28年には特定商取引法が改正され、定期購入の条件の表示をわかりにくくすると行政指導や業務停止命令を受ける可能性が出てきています。今回は、ネットショップの運営者が知っておきたいルールやサイトに表示すべき事項について解説します。

目次

  1. 1、特定商取引法とは
    1. (1)目的
    2. (2)7つの取引類型
    3. (3)「特定商取引法に基づく表記」とは
  2. 2、ネットショップが通信販売をするときに守るべきルール
    1. (1)広告の表示
    2. (2)虚偽広告・誇大広告の禁止
    3. (3)未承諾者に対する電子メール広告などの禁止
    4. (4)前払式通信販売の承諾などの通知
    5. (5)契約解除に伴う債務不履行の禁止
    6. (6)顧客の意に反して申し込みをさせようとする行為の禁止
  3. 3、ネットショップがサイトに表示しなければならない項目
    1. (1)事業者の氏名・住所・電話番号
    2. (2)責任者の氏名(法人の場合)
    3. (3)販売価格もしくは役務の対価
    4. (4)代金の支払時期・方法
    5. (5)商品の引渡時期もしくは役務の提供時期
    6. (6)購入申し込みの撤回または解除に関すること(返品特約があればその内容を記載)
    7. (7)申し込みの有効期限
    8. (8)販売価格・送料等以外に購入者が負担すべき費用
  4. 4、ネットショップ運営上の注意点
    1. (1)表示を省略できる場合がある
    2. (2)絶対に省略できない事項もある
    3. (3)返品特約はあらゆる画面に表示する
    4. (4)バーチャルオフィスは使えるか
  5. 5、特定商取引法に違反したらどうなる?
    1. (1)罰則規定
    2. (2)実際にあった違反事例①誇大広告による違反
    3. (3)実際にあった違反事例②販売業者の氏名・住所・電話番号等の表示不備
  6. 6、まとめ

1、特定商取引法とは

昔から、悪徳業者があの手この手で消費者をだまし、ものを売りつける悪徳商法が横行しています。そのため、消費者被害が後を絶ちません。そこで、悪徳業者から消費者を守るためにできた法律が特定商取引法です。

  1. (1)目的

    特定商取引法は、違法・不法な勧誘・販売行為を防止することで、消費者の利益を守ることを目的として制定されました。業者と消費者との間でトラブルの生じやすい販売方法を類型化し、事業者が守るべきルールやクーリングオフについて定められています。

  2. (2)7つの取引類型

    特定商取引法では、以下の7つの取引類型が規制の対象として定められています。

    • 訪問販売
    • 通信販売
    • 電話勧誘販売
    • 連鎖販売取引
    • 特定継続的役務提供
    • 業務提供誘引販売取引
    • 訪問購入


    このうち、ネットショップはインターネットを経由して商品や役務を販売する業態のため、ここでいう「通信販売」にあたります。したがって、ネットショップは特定商取引法の規制を受けることになるのです。

  3. (3)「特定商取引法に基づく表記」とは

    ネットショップのウェブサイトを実際に作成する際には、「特定商取引法に基づく表記」をわかりやすいところに明示しなければなりません。「特定商取引法に基づく表記」とは、オンライン上に乗せるべき事業者や取引に関する詳細情報のことを指します。ネットショップを利用する消費者には売り手の顔が見えないため、安心して取引をしてもらうために事業者はできる限り自らの情報を開示する必要があるのです。

2、ネットショップが通信販売をするときに守るべきルール

特定商取引法上、販売店が守るべきおおまかなルールは次の6つがあります。

  1. (1)広告の表示

    ウェブサイトを立ち上げる際には、事業者の氏名・住所(所在地)・電話番号などの情報を消費者に明示することが必要です。併せて、サイトが勧誘目的であることも告げなければならないとされています。

  2. (2)虚偽広告・誇大広告の禁止

    「これを飲めば100%痩せる」「これを購入するだけで簡単に稼げる」など、消費者を誤認させるような虚偽の説明や誇大広告を行うことは規制されています。虚偽広告や誇大広告は、特定商取引法だけでなく、景品表示法違反や薬機法(旧薬事法)違反にもなる可能性があるため注意が必要です。

  3. (3)未承諾者に対する電子メール広告などの禁止

    ネットショップが情報提供などを目的にメールマガジンなどのメール広告を送信することがあります。もし、消費者がそのメール送信をあらかじめ請求したり、承諾したりしていない場合は、原則としてメールをすることが禁止されています。

  4. (4)前払式通信販売の承諾などの通知

    前払式通信販売とは、消費者から代金などの対価を支払ってもらった後に商品や役務を提供する販売方法のことを指します。前払式通信販売の場合はネットショップ側に遅滞なく承諾するか否か、事業者の氏名や名称、住所、電話番号などの連絡先、代金の受領日、商品やサービス名・数量などの必要事項を記載した書面もしくは画面表示で通知しなければならないと定められています。

  5. (5)契約解除に伴う債務不履行の禁止

    消費者側から売買契約を解除された場合、ネットショップ側には返金の義務が、消費者側には受け取った商品などを返還する義務が生じます。そのとき、ネットショップ側がその義務を拒否することを特定商取引法は禁止しています。

  6. (6)顧客の意に反して申し込みをさせようとする行為の禁止

    ネットショップでは、画面にあるボタンをクリックすれば有料で購入することになることが消費者に認識できることが必要です。たとえば、購入に結びつくボタンに「購入」「注文」ではなく「送信」と表示したり、最終的な購入確認画面で申し込みのボタンのすぐ隣に「プレゼント」などと表記したボタンを置いたりすることなどは法に違反する恐れがあります。

3、ネットショップがサイトに表示しなければならない項目

ネットショップを立ち上げるとき、特定商取引法で定められている事項はすべてサイトに表示をしなければなりません。具体的にどのような項目を表示する必要があるのかを解説します。

  1. (1)事業者の氏名・住所・電話番号

    まず、事業者の氏名・住所・電話番号などの連絡先を記載します。個人事業主は、氏名は戸籍上のものを記載しなければなりません。ペンネームや通称は不可とされています。電話番号についても確実に連絡の取れる番号である必要がありますが、どうしても自宅や携帯の番号を載せたくない場合は、ネットショップからの問い合わせ用に電話をもう1回線引くなど工夫しましょう。

  2. (2)責任者の氏名(法人の場合)

    ネットショップ運営者が法人の場合は、責任者の氏名を記載します。ここでいう「責任者」とは、必ずしも代表や社長でなくても構いません。通信販売担当の役員など通信販売部門のトップの方がいれば、その方の氏名を載せることで足りるとされています。

  3. (3)販売価格もしくは役務の対価

    商品やサービスの価格を記載します。このとき、商品やサービスそのものの価格だけでなく、送料も具体的に金額で示さなければならないとされています。

  4. (4)代金の支払時期・方法

    代金の支払時期や方法について記載します。可能な代金支払い方法すべてについて記載する必要があります。クレジットカード払いの場合は申し込みと同時に決済となることが多いのですが、銀行振込やコンビニ決済、代引きなど他の方法も選択できる場合は、支払期限についても明記しましょう。

  5. (5)商品の引渡時期もしくは役務の提供時期

    申し込みをした後、いつまでに商品が届くのか、また役務が提供されるのかを示します。「即日発送」「入金確認後の発送」などの表記では足りず、「発送後○日以内」「○月○日までに」などと具体的に期限を表示することが必要です。

  6. (6)購入申し込みの撤回または解除に関すること(返品特約があればその内容を記載)

    「申し込みをしたが商品が不要になった」「思っていたのと違った」など、ネットショップ側の責任ではない返品特約を定める場合、その条件や、ショップ側の対応方法について定めます。ショップ側に責任がなければ返品を受け付けない場合は、「一切返品不可」と明示することが必要です。

  7. (7)申し込みの有効期限

    申し込みの有効期限があるときは、その期限を記載します。逆に言えば、有効期間ではないのに販売・提供できるような表示は禁じられていることを意味します。

  8. (8)販売価格・送料等以外に購入者が負担すべき費用

    販売代金や送料以外に、梱包料や工事費、組立費、代金引換手数料、など、追加料金がかかる場合は、その費目と具体的な金額を明示することが必要です。「○○費別途」では不十分であるとされています。

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