「子供を置いて家出してしまった!」それでも親権が欲しい方へ
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千葉県の人口動態総覧によると、平成30年の千葉県内の離婚件数は1万247件で、平成29年の1万359件より112組減少しました。それでも県内で51分18秒に1件の離婚が成立している計算です。
離婚に伴い、子供の親権が問題になるケースももちろん多くあるでしょう。近年は家庭内での児童虐待に関するニュースも多く報道されています。配偶者へのイライラを子供にぶつけたくないと、ひとまず子供を置いて家出したというケースもあるかもしれません。
子供を置いて家出してしまった場合、親権にどう影響するか、船橋オフィスの弁護士が解説します。
1、親権について
離婚にあたって、子供の親権をどちらが持つのかで配偶者と対立している場合は、裁判に発展する可能性もあります。
まずは法律上の親権の概要を押さえておきましょう。
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(1)親権とは?
成年に達しない子は父母の親権に服します(民法第818条1項)。婚姻中の親権は父母が共同して行いますが(民法第818条3項)、父母が協議離婚する場合は、どちらか一方を親権者に定めなければならないとされています(民法第819条)。
民法第820条において「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と定められています。子供自身の利益のために、しっかりと面倒をみて、教育を受けさせるのが親権を持つ親の務めです。
協議離婚であれば、離婚届に子供の名前を記入するだけで親権が決定します。具体的には、離婚届の「未成年の子の氏名」欄は、「夫が親権を行う子」欄と「妻が親権を行う子」欄に分かれています。どちらの欄に名前を書くかで、父か母に親権が決まります。 -
(2)裁判での親権の判断基準とは?
子供自身の利益といわれてもピンとこないかもしれません。もしも調停や裁判で親権を争う場合は、裁判官は以下のような観点から、どちらが親権を持つと「子の利益になるか」を総合的に判断します。
●子供の意思
子供が15歳以上の場合は、子供の意思が優先されます。また、おおむね10歳以上の子供であれば、本人の意思もある程度尊重されます。
●養育実績
離婚前まで、どれだけ子供の養育に関わってきたかが判断されます。
子供が小さければ小さいほど、母性的な関わりをどちらの親が主に担っていたかが重視される傾向があります。したがって、父親であっても、ミルクを与えたりおむつを替えたり、食事や寝かしつけを母親と同等程度担当していたならば、母性的な関わりをしていたと判断されるでしょう。
●健康状態
親権者になるには心身ともに健康である方が望ましいとされています。持病や障害の有無など身体面だけでなく、精神的に安定していることは、子供の養育において重要です。
●経済状況
経済的な安定も、子供の養育環境にとって重要です。夫婦のうち、雇用が不安定または収入が少ない側が不利になる可能性もあります。しかし、行政からの手当や、収入の高い親からの養育費を受け取れるため、たとえ無職であったとしても他の条件が優れていれば、親権が認められる可能性があります。
●継続性
子供にとって、環境の変化は大きな負担となります。そのため、今の監護環境を維持できる親、つまり今まで主に養育を担ってきた親に親権が認められやすいのは事実です。現在子供と別居している、または子供を置いて長期間家出をしていた場合は、不利になる傾向があるでしょう。
●愛情の深さ、養育への意欲
数値化しにくいものではありますが、一例として、子供との時間に自分の時間をどれだけ割いているかも判断基準のひとつとされます。仕事をしてお金を稼いで家庭を支えていると主張しても、実際に子供と接する時間が配偶者より圧倒的に少ない場合は、どうしても不利になりがちです。働き方を見直し、子供との時間を作ることが大事です。
●兄弟姉妹の不分離
兄弟姉妹の親権を、父親と母親に分けるのは、親から見れば公平なように見えるかもしれません。しかし、片方の親と別れるのもつらいことであるのに、ずっと一緒に育ってきた兄弟姉妹が一緒に暮らせなくなるのは、子供の福祉の観点から妥当とはいえません。そのため、兄弟姉妹を全て引き取り養育できる親に親権が認められやすいのです。
●監護補助者の存在
子供を監護養育する上で、ひとり親では負担が非常に大きくなるものです。そのようなときに、監護を助けてくれる人物がいるかどうかも重要視されます。自分の実家のサポートが得られる、近所に家族ぐるみで付き合いがある家庭・友人・知人がいるなど、家庭外にも親密な関係性が築けていると主張できる方が好印象となるでしょう。
2、子供を置いて家出した場合、親権はどう判断されるか
子供を置いて家出した場合は、親権獲得に不利になるのでしょうか。
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(1)原則として家出した親が不利になる
子供を置いて家出してしまうと、それが監護権の放棄に捉えられてしまう可能性があります。家出した際の子供の年齢が低ければ低いほど、また、家出の期間が長ければ長いほど、不利に働く可能性が高まります。ただし、ひと晩程度の家出であれば、その事情によって判断されることになるでしょう。
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(2)DVなどの事情があれば、家出が不問に処されることも
あなたが配偶者から重大なDVやモラハラを受けていた場合は、子供を置いて家出したこともやむなしとされるケースもあります。
子供を置いて家出しなければならないような原因が、配偶者側にあった場合、慰謝料請求ができる可能性が出てきます。いずれも証拠が必要となりますので、弁護士に相談してください。また、配偶者の監護状況が良好とはいえない場合、あなたが子供の監護を十分に行っている、または今後可能ならば、あなたが家出した場合であっても親権を獲得できる可能性があります。 -
(3)親権を得られなくても、監護権を主張することはできる
親権者になると、「身上監護権」と「財産管理権」の両方を担うことになります。
「身上監護権」……子供を看護教育する権利
「財産管理権」……子供の財産や法律行為を管理する権利
しかし、必ずしも上記2つの権利をどちらかの親ひとりで担う必要はありません。そこで、財産管理権を相手に渡し、身上監護権を得る「監護者」になることは可能です。親権者にならなくとも監護者になれば、一緒に暮らしながら未成年の子供の身の回りの世話をすることできます。
いずれも、状況によって取るべき対策も左右されますので、弁護士に早めに相談するようにしてください。
3、離婚の流れと親権の他に決めておくこと
離婚をする際には、親権以外にも決めておかなければならないことがあります。その流れを解説します。
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(1)協議離婚
協議離婚であれば、双方の署名を書いた離婚届を役所に提出するだけで離婚手続きは終わります。しかし、民法第766条では、父母が協議上の離婚をするときに決定すべきことが定められています。
具体的に決めなければならないことは、親権者(監護者)、監護しない側の親と子供との面会交流、養育費などが挙げられます。そこで、まずは話し合いでこれらの離婚の条件を決める必要があります。話し合いにおいて決定したことは、離婚協議書にまとめましょう。養育費の支払いが滞ったときに早急に差し押さえができるように、強制執行認諾付きの公正証書として作成することをおすすめします。 -
(2)調停離婚
離婚の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所を通じて調停を行います。調停とは、ごく簡単にいえば裁判官と調停委員(男女各1名ずつ)を通じて話し合いを行う制度です。
調停により離婚条件が決まったら、裁判所で調書にまとめられ、調停離婚が成立します。この調書は法的な強制力を持つため、大切に保管しておきましょう。 -
(3)裁判離婚
調停や審判をもってしても合意できない場合は、いよいよ裁判となります。いきなり裁判を起こすことはできず、必ず1回は調停をしなければなりません。これを調停前置主義といいます。
裁判になれば、裁判官の判決により離婚とその条件を言い渡されます。判決には法的強制力があるため、夫婦どちらかが離婚に反対していたとしても離婚が成立します。
4、面会交流の調停
子供を置いて家出をしたあと、配偶者があなたに子供を会わせない可能性が考えられます。そのような場合は、離婚の成立有無に関わらず、協議の中で面会交流を要求しましょう。まだ離婚が成立していない状況であれば、同時に婚姻費用の請求を行うことも可能です。
親権を取れない場合でも、子供との面会交流の調停申し立てを家庭裁判所に行い、認められれば、面会交流の機会を得られるでしょう。
ただし、面会交流は、親の権利ではなく、子供のために行われるものです。子供にとって悪影響があると判断されると、面会交流の許可がおりない可能性があります。
5、まとめ
子供を置いて家出したあと、長期間離れ離れのまま生活していると、親権を獲得しようとしたとき、原則として不利に働きます。しかし、状況によっては、親権獲得も不可能ではありません。ただし、相手側を説得していく交渉は大変な苦労を伴うことは間違いないでしょう。
しかし、親権獲得の争いや離婚裁判に対応した経験が豊富な弁護士に相談することによって、事態を変えられる可能性があります。離婚と親権でお悩みの場合は、ひとりで悩まず、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスにご相談ください。お話を伺い、子供にとって最適な環境を得られる結果を目指し、状況に応じて対策を講じます。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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