自己破産の2回目は認められる? 免責許可への対策・初回との違いを解説
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平成30年度に最高裁判所が発表した司法統計によると、千葉県における破産事件の新受件数は3952件でした。船橋市内でも、意外と多くの方が自己破産手続きを利用していらっしゃるかもしれません。
自己破産など金銭的な悩みは、なかなか周囲の人には相談しづらいものですが、2度目となるとさらに深刻な気持ちになる方もいらっしゃることでしょう。しかし、新型コロナウイルスなどの思わぬ被害により、会社の倒産や賃金の未払いで多重債務に陥り、債務整理を検討せざるを得ない方は、これからも少なくないことが予想されます。
そこで今回は、2度目の自己破産を申請する場合はどのような条件があり、どんなポイントに気をつければよいか、ベリーベスト法律事務 船橋オフィスの弁護士が解説します。
1、2回目の自己破産はできるのか
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(1)自己破産の回数に制限はない
自己破産できる回数には法律上の制限がありません。したがって、一定の条件を満たせば、原則としては何度でも自己破産を申し立てることが可能です。
自己破産は、「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的」としています(破産法1条)。免責については、前回の免責許可決定の確定から7年経過しているなどの条件はありますが、債務が支払い不能な状態に陥った場合は、何度でも再スタートを切るチャンスが法の下に平等に与えられている、といえるでしょう。
なお、自己破産をすると、生活に必要な最低限の財産(当面の生活費・家財道具・仕事道具・仏壇など)を除く、全ての財産を売却し、債権者に分配する破産手続を行うことになります。
自己破産は、主に以下のような流れで進んでいきます。- 破産手続の申し立て
- 裁判官との面接(債務者審尋)
- 破産手続の開始決定
- 同時廃止もしくは管財事件の決定
- 裁判官との面接(免責審尋)
- 免責許可・不許可の決定
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(2)2回目以降は免責許可が厳しくなる
前述の通り、自己破産の回数に法律上の制限はありませんが、2回目以降は、免責許可についての裁判所の審査が厳しくなる傾向があります。
たとえば、ギャンブルや夜遊びによって1回目の自己破産をした人が、その後もギャンブルや夜遊びを続けて再び支払い不能に陥った場合には、裁判官に「反省していない」と判断され、免責許可を受けにくくなるおそれがあるでしょう。
自己破産は債務者にとっては救済制度ですが、債権者にとっては不利益となるケースがほとんどです。2回目の自己破産の免責許可を得るには、裁判所からの質疑応答である審尋(しんじん)で真摯に反省の態度を示すことが重要です。 -
(3)破産手続における審尋とは?
民事手続において、当事者もしくは利害関係者に対して、裁判所が意見を聞き取る審尋が行われることがあります。
破産手続における審尋では、破産者が自己破産の要件を満たしているか、本当に反省しているかといった事項を裁判所が確認するために、口頭もしくは書面で意見や主張をする機会を当事者に与え、これを判断材料にします。
破産手続における審尋のタイミングは通常2回あります。- 債務者審尋……破産手続の申し立て後に行われ、審尋によって破産手続開始が決定します
- 免責審尋……破産手続決定後に行われ、審尋によって債務の免責許可が決定します
どのように質疑応答をすればよいのか不安であれば弁護士へアドバイスを求めてから、審尋に臨むとよいでしょう。
2、2回目の自己破産をする際の注意点
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(1)1回目の自己破産から7年を経過しているか
前回の自己破産で免責許可を受けてから7年を経過していないと、2度目の自己破産で免責許可を受けることができません(破産法252条1項10号)。
ただしいかなる場合でも絶対に免責許可がおりない訳ではありません。裁判官には個別具体的な事情を鑑みて、裁判官の裁量で免責許可を与えることができる権利が与えられています。これを、裁量免責と呼びます。 -
(2)破産管財人がつく可能性がある
2回目の破産手続においては、破産管財人がつく可能性が高くなります。
破産管財人とは、「破産手続において破産者の財産の管理及び処分をする人」(破産法第2条12項)のことで、裁判所によって選任されます。多くの場合、破産者と利害関係のない弁護士が破産管財人に就任します。
破産手続は、破産管財人なしの比較的簡易な“同時廃止事件”と、破産管財人ありの“管財事件”の2つに分類されています。
原則として、同時廃止事件は破産手続を行う費用も含め、財産がほぼないケースに適用されます。一方、管財事件は、各債権者に配当すべき財産がある程度残っているケースを対象としています。
1回目の自己破産では、同時廃止事件となるケースも少なくありませんが、2度目以降の自己破産ではより慎重で厳格な手続きが必要になるため、一般に破産管財人が選任される可能性が高くなります。
3、免責許可となる判断基準
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(1)破産法上の免責不許可事由がないか
自己破産の免責許可においては、破産法252条に定められている、免責不許可事由がないことが重要となります。
免責不許可事由は、下記の通りです。- 不当な破産財団価値減少行為(財産隠し・破壊など)
- 不当な債務負担行為(新たな借金・買い物など)
- 不当な偏波(へんぱ)行為(特定の債務者への弁済など)
- 浪費または賭博その他の射幸行為
- 詐術による信用取引
- 業務帳簿隠滅等の行為
- 虚偽の債権者名簿提出行為
- 調査協力義務違反行為
- 管財業務妨害行為
- 7年以内の免責取得など
- 破産法上の義務違反行為
ただし、免責不許可事由に当てはまったからといって、必ずしも免責されない訳ではありません。自己破産では裁判官による免責裁量があるため、やむを得ない事情が認められれば、免責許可をもらえる可能性も残されています。
諦めずに、まずは弁護士に相談することをおすすめします。 -
(2)免責許可後も残る非免責債権
免責許可が得られたとしても、破産法第253条に定められた以下の債務については、支払いの義務はなくなりません。
自己破産後も、引き続き支払い義務を追い続けることになりますので、注意しましょう。- 破産者が悪意で加えた不法行為に対する損害賠償金など
- 破産者が故意または重大な過失により加えた生命・身体損害に対する損害賠償金など
- 破産者が意図的に債権者名簿に記載しなかった債権など
- 税金や国民健康保険料など
- 婚姻費用など
- 養育費など
- 夫婦間・親族間の生活費など
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(3)1回目と同じ破産理由は免責許可がおりない?
繰り返しの解説となりますが、2回目以降の自己破産では、免責許可に対してより厳しい目で審査されます。
一方で、ギャンブルなどで一度自己破産した後、深く反省して真面目に働いていたけれど、病気・事故などにより働けなくなり自己破産を申し立てた場合には、やむを得ない事情として考慮してもらえる可能性があります。
まずは、債務整理の経験に明るい弁護士に相談し、どんな事柄を主張し、どんな態度を示せば免責が認められやすくなるのか助言をもらいましょう。
4、2回目の自己破産ができない場合
2度目の自己破産を申し立てたものの免責許可がおりなかった場合は、どうすればいいのでしょうか?
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(1)即時抗告を申し立てる
まず免責不許可の公告日から1週間以内であれば、即時抗告をすることができます。
即時抗告とは、地方裁判所の出した判決に不服である場合に、上級の高等裁判所に再判断を申し立てる手続きです。
もっとも即時抗告をしたからといって必ず免責許可になるとは限らず、棄却(訴えの内容に理由がないとして退けること)される可能性もあります。 -
(2)自己破産以外の債務整理を検討する
債務整理の手段は、自己破産以外にも、以下のような方法があります。
- 任意整理……債権者と直接交渉して、将来の利息の免除や無理のない分割回数にしてもらう方法
- 個人再生……裁判所に申し立て、法定の範囲内で借金を減額し原則3年間の分割払いで返済していく方法
- 特定調停……簡易裁判所に申し立て、借金の減額や支払い方法の調整を、裁判所の調停委員を介して行う方法
自己破産のように債務がほぼゼロになることはありませんが、それでも客観的な返済の見通しを立てられることで精神的な負担が軽くなるのではないでしょうか。
他の手続きも検討される方は、弁護士に相談してみましょう。ご自身の現状を踏まえて、適切な債務整理方法をアドバイスしてくれるはずです。
5、まとめ
法律上、自己破産できる回数に制限はなく、何度でも申し立てることができます。しかし免責許可・不許可の決定については、1回目よりも厳しく審査されることがあります。審尋などでの適切な質疑応答が重要なので、不安な場合は、事前に弁護士と打ち合わせておきましょう。
また、自己破産を再びするのには抵抗がある場合でも、他の債務整理方法があるかもしれません。一度弁護士と相談して、任意整理・個人再生など別の債務整理方法も検討してみましょう。
債務整理全般についてお悩みの方は、まずは船橋オフィスの弁護士までお気軽にお問い合わせください。経験豊富な弁護士が、借金問題への解決へ向けて尽力いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています