執行猶予中なのに逮捕された!不起訴処分や起訴猶予を目指す方法は?
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「平成30年版犯罪白書」によると、犯罪により検挙された過去があり再び検挙された再犯者の数は、平成16年から毎年減少していることがわかっています。
現在執行猶予中のあなたの家族が逮捕されたと知ったら、執行猶予が取り消されてしまうのか、そのまま刑務所に入れられてしまうのかなど、とても不安に感じるでしょう。再犯者となった方が、成人済みであってもあなたの子どもであれば、親として、少しでも有利な結果に導いてあげたいと思うのも当然です。
本コラムでは、そもそも執行猶予とは何か、どのような場合に付くものなのか、執行猶予中に逮捕された場合にはどうなるのかについて解説します。ぜひ参考にしてください。
1、そもそも執行猶予とは
執行猶予とは、刑の執行を猶予するというものです。たとえば、「懲役1年、執行猶予3年」の判決を受けた場合、罪を犯すことなく3年間過ごせれば、懲役を免れることができます。
本来、罪を犯せばその償いをしなくてはなりません。しかし単なる懲らしめのためではなく、本人の反省を促しつつも、刑の執行に伴い被告人に生じる諸々の損失を抑えて、社会復帰を容易にしようとする考え方が執行猶予という制度の背景にあります。
執行猶予を満了しても刑そのものが消えるわけではなく、「前科」として残ることは忘れてはいけません。また、いくつかの職業に就けなくなるなどの制約が発生します。それでも、普通の社会生活を送ることができるため、罪を犯した場合に執行猶予付きの判決を望むのは当然のことでしょう。
執行猶予が付くには、原則として、以下の条件を満たす必要があります。
- 言渡された刑が、3年以下の懲役もしくは禁錮か50万円以下の罰金刑であること
- 前に禁錮・懲役刑になったことがないか、あるとしてもその刑の執行終了・執行の免除から5年間、禁錮・懲役刑に処せられなかったこと
- 酌むべき情状があること(例えば、犯行態様が悪質でないこと、被害が軽微であること、弁償していること、反省していること、前科・前歴がないこと等)
初犯だからいって必ずしも執行猶予が付くというものではありません。あくまでも総合的な事情をもとに判断されることになります。罪によっても人によっても状況は異なるものと理解しておいた方がよいでしょう。
2、執行猶予期間中に、逮捕されたらどうなる?
では、執行猶予中に逮捕された場合にはどうなるのかをお伝えしていきましょう。
まず、新たに犯した罪が禁錮・懲役刑の場合には、その全部について再度の執行猶予が付かない限り、それまでの執行猶予は取り消されます。そして、以前の禁錮・懲役刑と今回の禁錮・懲役刑の刑期を通算した期間を刑務所で過ごすことになります。
また、新たに犯した罪が罰金刑の場合には、必ずしも執行猶予が取り消されるわけではなく、裁判官の判断によります。つまり、執行猶予中に逮捕された場合でも、必ずしも執行猶予が取り消されるわけではないということです。
なお、懲役または禁錮の場合に、再度の執行猶予が付く要件はとても厳格で、1年以下の懲役または禁錮の刑である必要があります。これは、相当軽い犯罪に限られます。また、情状に特に酌量すべきものがあるときという要件もあるため、有利な情状を積み上げなければなりません。これをクリアするためのハードルはかなり高いといえるでしょう。
3、再犯率の高い犯罪について
ここで、法務省が公開している犯罪白書をもとに、再犯率の高い犯罪についてお伝えしていきましょう。平成30年版の犯罪白書によると、刑法犯で検挙された人のうち、過去に道路交通法違反を除く犯罪で検挙されたケースを除いた再犯者の人員は、10万4774名でした。平成18年の14万9164名をピークに減少しているものの、初犯者の人数が平成16年と比べて55.9%減と大幅な減少傾向にあります。そのため、再犯率は平成10年から増加し続け、なんと平成29年には48.7%を記録する結果となっています。
この数字から、同一人物によって複数回の犯罪が繰り返されていることがわかります。特に、同一罪名の有前科者率がもっとも高い犯罪は窃盗です。続いて恐喝、詐欺、強盗、強制わいせつと続きます。
4、執行猶予期間中に逮捕された場合、弁護士に依頼するメリットとは?
執行猶予期間中に家族が逮捕された場合、家族にできることは、できるだけ早い段階で弁護士に相談することです。
逮捕から起訴・不起訴までの流れの中で、弁護士にしかできない行為が多数あります。弁護士に相談することのメリットを知っておきましょう。
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(1)被疑者との接見
執行猶予中の逮捕ということで、本人の動揺や不安は相当なものと考えられます。その状態で、警察や検察の厳しい取り調べを受けなければなりません。やけになってしまい、自らの将来に不利益を及ぼす発言をしてしまうケースもあるでしょう。
しかし、逮捕後から勾留まで間、被疑者に接見を許されるのは弁護士のみで、家族でさえも会うことはできません。少しでも早く弁護士が接見することで、本人の気持ちを落ち着け、ストレスを軽減してあげることができるでしょう。 -
(2)勾留を回避するための弁護活動
最大で20日間におよぶこともある勾留を回避するためには、検察が勾留請求をしないための弁護活動が必要です。勾留を回避するための必要書類を短時間で作成し、検察官へ適切に働きかけることができるのは弁護士です。
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(3)不起訴処分や起訴猶予にするための弁護活動
起訴か不起訴かの判断は、検察官が行います。弁護士は、検察が判断する前に、示談を成立させるなどの弁護活動を通じ、不起訴処分(起訴猶予)という処分を得るために働きかけます。
示談では、被害者に対して被害弁償を行うとともに、被害者から刑事処罰を望まないとする意志を表明してもらうことを目指します。なぜなら、警察や検察、裁判所は、被害者の処罰感情を非常に重視するためです。しかし、多くの被害者は、加害者やその家族による直接的な交渉を避ける傾向があります。それでも、第三者である弁護士であれば示談交渉に応じてもらえる可能性を高めることができるでしょう。
起訴を回避し、不起訴処分(起訴猶予)となれば、刑事裁判が開かれることはありません。すでに付いている執行猶予が取り消されて実刑となることはないということです。 -
(4)罰金処分にするための弁護活動
先にお伝えしたとおり、再度の執行猶予には厳しい要件があります。
しかし、新たな犯罪が罰金刑であれば前の執行猶予が取り消されない可能性があります。そのため、起訴された場合には懲役刑・禁錮刑ではなく罰金刑になるよう、被告人の情状を酌量してもらえるよう、弁護活動を行います。
5、まとめ
今回は、執行猶予中に逮捕された場合についてお伝えしました。新たに犯した罪が禁錮・懲役刑の場合には、再度の執行猶予が付かない限り、それまでの執行猶予は取り消されます。しかし、前述のとおり、不起訴もしくは起訴猶予であれば執行猶予は取り消されません。また、起訴されたとしても罰金刑であれば執行猶予が取り消されないケースもあります。
それでも、執行猶予中の逮捕は厳しい処分となることが多く、弁護士の力が不可欠です。あなたの家族が船橋市内で執行猶予中に逮捕されてしまったときは、ベリーベスト法律事務所へお電話ください。船橋オフィスの弁護士が迅速な弁護活動でサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています