不当解雇された労働者が「地位確認」訴訟をする際のポイント
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船橋市のデータによると、2015年10月1日時点での船橋市の就業人口は、28万6205人でした。そのうち、第1次産業が2388人(0.9%)、第2次産業が4万8753人(18.2%)、第3次産業が21万6249人(80.9%)となっています。
会社から不当解雇された場合、労働者は会社に対して「地位確認請求」を行うことができます。地位確認請求を通じて、会社に復職を求めるためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
今回は、会社から不当解雇された場合の「地位確認請求」について、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。
1、労働者が不当解雇された場合の「地位確認請求」とは?
会社から不当解雇された場合、「地位確認請求」と「未払賃金支払請求」を行うことで、労働者としての地位の確認と支払われていない賃金の支払いを請求することができます。
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(1)不当解雇は違法・無効|解雇権濫用の法理について
労働契約法第16条では、「解雇権濫用の法理」が定められています。
解雇権濫用の法理によると、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、違法・無効となるのです。
日本では、解雇権濫用の法理は、非常に厳しい運用が行われています。そのため、会社が労働者を適法に解雇できるのは、ごく例外的な場合に限られています。 -
(2)不当解雇されても労働者の地位は失われない
会社が一方的に解雇を主張していても、それが不当解雇として違法・無効である場合には、労働契約は終了せず、労働者としての地位が失われることもありません。
労働者としての地位確認請求は、「自分は労働者として、まだ会社に雇われている!」ということを主張するための、法律的な手段といえます。
地位確認請求が認められたら、「不当解雇にかかわらず、継続して会社に雇われていた」ということになり、労働者としての地位が保全されるのです。
2、地位確認請求と「金銭解決」の違い
会社の不当解雇に対抗するための手段には、労働者としての地位確認請求を行う方法のほか、解決金による金銭解決を受け入れる方法も考えられます。
労働者としての地位確認請求と、解決金による金銭解決は、どのように異なるのでしょうか。
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(1)地位確認請求は「復職」を求める|解雇中の賃金も請求可能
労働者としての地位確認請求を行う場合、不当解雇された会社で今後も働いたり復職したりすることを目指します。
元の会社に愛着がある場合や待遇が良い場合、または転職が成功する確率が低いと思われる場合などには、労働者としての地位確認請求を行うとよいでしょう。
なお、労働者としての地位確認請求が認められた場合、解雇期間中の賃金全額の支払いを、会社に対して請求することができます。 -
(2)「金銭解決」は「退職」が前提|解決金額はケース・バイ・ケース
これに対して、解決金による金銭解決は、会社からの金銭支払いを条件として、退職を受け入れて不当解雇紛争を終わらせることを意味します。
会社に愛想を尽かしている場合や会社のなかに居場所がない場合、より好条件の転職先が見つかりそうな場合などには、解決金による金銭解決を受け入れることも有力な選択肢となります。
解決金額は、解雇期間中の未払い賃金や、退職を受け入れることの対価などを総合的に勘案して、労使間の交渉によって定められます。
そのため、解決金額に決まった相場はなく、あくまでもケース・バイ・ケースで定められるのが実情です。
なお、当初は労働者としての地位確認請求を行うものの、交渉の過程で方針を転換して、金銭解決を目指す方向に切り替えるケースもあります。
3、正当な解雇か不当解雇かを分ける判断基準|適法な解雇の要件とは?
解雇権濫用の法理の下では、会社が労働者を適法に解雇することは非常に難しくなっています。
解雇の適法性・違法性について適切に判断するために、適法な解雇の要件を確認しておきましょう。
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(1)懲戒解雇の要件
懲戒解雇は、就業規則等への違反を理由に、懲戒処分として行われる解雇です。
懲戒解雇を行うためには、就業規則において懲戒解雇を行う旨が定められていることが必須となります。
そのうえで、労働者の非違行為の内容・悪質性が、懲戒解雇という極めて重い処分と釣り合っているかどうかが判断されるのです。
例えば、重大な犯罪行為など、労働者が極めて悪質な非違行為を働いた場合には、一発で懲戒解雇相当となるケースもあります。
これに対して、遅刻や欠勤、仕事上のミスといった程度であれば、「再三の改善指導によっても改善の見込みがない」などの事情が加わらない限り、懲戒解雇は認められないでしょう。 -
(2)整理解雇の要件
整理解雇は、会社の経営が悪化したことを理由として行われる解雇です。
整理解雇の場合、労働者側には基本的に落ち度がないため、解雇の適法性はかなり厳しく審査されます。
具体的には、以下の4要件を総合的に考慮したうえで、整理解雇の適法性が判断されるのです。① 整理解雇の必要性
整理解雇を行わなければ、経営が破綻する蓋然(がいぜん)性が高いという程度に、解雇を行う高度の必要性が要求されます。
② 解雇回避努力義務の履行
経費節減・役員報酬のカット・希望退職者の募集・ワークシェアリングなど、他の手段を尽くしても経営が改善せず、整理解雇がやむを得ない状況であることが求められます。
③ 被解雇者選定の合理性
整理解雇の対象者は、客観的・合理的な基準を策定したうえで、その基準に従って行われなければなりません。
④ 解雇手続きの妥当性
整理解雇を行うに当たっては、労働者側に対してきちんと説明を行い、納得を得るプロセスを踏む必要があります。 -
(3)普通解雇の要件
普通解雇は、懲戒解雇と整理解雇以外の解雇全般を意味します。
会社が労働者を普通解雇するためには、労働契約上の解雇事由に該当することが必要です。
解雇事由は、雇用契約書や就業規則などに記載されています。(例)- 勤務態度不良
- 能力不足
- 身体や精神の障害
- 長期欠勤
さらに、解雇事由に該当するだけでは足りず、解雇が客観的に合理的であり、社会通念上相当であると認められなければ、普通解雇は違法・無効となるのです。
例えば、能力不足を理由とする普通解雇の場合には、以下のようなポイントが総合的に考慮されたうえで、解雇がやむを得ないかどうかが判断されることになるでしょう。- 他の労働者に比べて著しく劣っていると言えるのか
- きちんと教育訓練を行ったのか
- 配置転換の可能性を検討したか
- 上司の指示が曖昧、不適切ではなかったか
4、労働者が地位確認請求を行う2つの方法
労働者が不当解雇を主張し、会社に対して地位確認請求を行うための主な法的手続きとして、「労働審判」と「訴訟」の2つがあります。
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(1)労働審判
労働審判は、労務紛争を迅速に解決するために設けられた、非公開の法的手続きです。
裁判官と労働審判員で構成される労働審判委員会が、労使双方の主張を聴き取ったうえで調停を試み、調停で解決しない場合には、審判で結論を示します。
審理は原則3回以内で終結するので、比較的早期に不当解雇紛争を解決することが可能です。
ただし、労働審判に対して、労使いずれかから異議申し立てが行われた場合には、自動的に訴訟へと移行することになります。 -
(2)訴訟
訴訟は、公開法廷において行われる、法的紛争を終局的に解決するための手続きです。
不当解雇に伴う労働者としての地位確認訴訟では、労使双方が解雇の適法性・違法性について主張・立証を行い、最終的には裁判所が判決によって結論を示します。
訴訟の確定判決は、不当解雇紛争に対する最終的な法的判断として、労使双方に対して拘束力を有します。
なお、訴訟は半年~1年以上の長期にわたるケースもあり、非常に多くの時間と労力を要する点に注意してください。
5、不当解雇されたら弁護士にご相談を
会社に不当解雇された場合には、法的な観点から解雇の違法性を主張して、復職を実現するか、会社から有利な退職条件を引き出しましょう。
しかし、会社が不当解雇の主張をすんなりと受け入れる可能性は低く、労働審判や訴訟に発展することも視野に入れなければなりません。
そのため、不当解雇に関して会社と争う場合には、弁護士にご依頼いただくことをおすすめいたします。
弁護士にご相談いただければ、会社の主張する解雇理由や、依頼者のご希望などをふまえたうえで、不当解雇に関してどのような方針で臨むべきかについてのアドバイスをすることが可能です。
会社との交渉や、労働審判・訴訟の手続きについても、弁護士に一括してお任せいただくことができます。
会社から不当解雇されてしまった場合は、お早めに、弁護士までご相談ください。
6、まとめ
会社による不当解雇には、労働者としての地位確認請求で対抗することが第一の選択肢となります。
その後、会社との交渉状況を見極めつつ、あくまでも復職を主張するのか、解決金の支払いを条件として退職を受け入れるのかを判断しましょう。
ベリーベスト法律事務所では、不当解雇の被害に遭った労働者の方からのご相談を、随時受け付けております。
より良い条件で不当解雇紛争を解決できるように、経験豊富な弁護士が中心となってサポートいたします。
千葉県船橋市や周辺にご在住で、会社を解雇されたことに納得がいかない方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスにまでご連絡ください。
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