個人再生が家族に与える影響|家族にバレずに手続きは可能?
- 個人再生
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- 家族への影響
裁判所が公表している司法統計によると、令和3年の千葉地方裁判所に申し立てのあった小規模個人再生および給与所得者等再生の件数は、659件でした。
個人再生をすることによって、借金の総額を大幅に減額することができます。また、住宅ローン特別条項を利用すれば、自宅を残したまま債務整理を行うこともできます。とはいえ、個人再生の利用を検討している方の中には、家族への影響や家族にバレることを心配して手続きをためらっている方もいるでしょう。
個人再生の手続きをすることによって、家族にどのような影響が及ぶのでしょうか? また、家族にバレずに手続きを進めることは可能なのでしょうか? 本コラムでは、「個人再生は家族にバレるのか」という疑問について、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。
1、個人再生が家族に与える影響
個人再生は、個人単位で行う手続きですので、原則として債務者の家族に影響が及ぶことはありません。
しかし、以下のように、少なからず家族にも影響が及ぶ側面が存在する点に注意してください。
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(1)家族カードが利用できなくなる
債務整理を開始したことがクレジットカード会社に知られると、クレジットカード契約は強制的に解約されてしまうため、それ以降クレジットカードを利用することができなくなってしまいます。
家族カードを発行している場合には、家族カードの利用も停止されることになりますので、普段の買い物に家族カードを利用できないという支障が生じます。
なお、利用ができなくなるのは債務者本人が契約者となっているクレジットカードであるため、家族が契約者になっているカードであれば利用が制限されることはありません。 -
(2)家族が保証人・連帯保証人になっている場合、借金を一括請求される
個人再生の手続きを利用する場合には、すべての債権者を債務整理の対象に含めなければなりません。
保証人・連帯保証人が付いている債権についても債務整理の対象に含めることになりますので、それによって、債権者から保証人・連帯保証人に一括請求がなされる可能性があります。
家族が保証人・連帯保証人になっている場合には、本人が個人再生をしても家族が全額を負担しなければならなくなるため、保証人である家族も債務整理を検討する必要があるのです。 -
(3)ローンを完済していない自動車はローン会社に引き上げられる可能性がある
自動車を購入する際にローンを組んでおり、返済中であるという状況で個人再生の手続きを始めると、ローンの残っている自動車は、ローン会社に引きあげられてしまう可能性があります。
ただし、ローンを完済していたり、家族名義のローンであったりした場合には、自動車を引き上げられる心配はありません。 -
(4)一定期間、新たな借り入れやローンの契約ができなくなる
個人再生をすると、その情報は、信用情報機関に事故情報として登録されることになります。金融機関やクレジットカード会社などは信用情報機関に照会して、対象者の信用情報を調べることができるため、個人再生後、新規の借り入れやクレジットカードの申し込みをしても、一定期間は契約することができなくなってしまうのです。
そのため、個人再生をすることによって、家族のために新しい車を購入したり、教育ローンを組んだり、家を購入したりすることができないといった影響が及ぶことになります。
2、家族にバレずに個人再生をすることは可能か?
個人再生手続きは、あくまでも債務者本人を対象にした手続きであるため、家族に発覚せずに手続きを進めることも、原理的には不可能ではありません。
しかし、実際的には、家族に発覚せずに個人再生をするのは非常に困難です。
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(1)裁判所への提出書類
個人再生の申し立てをする際には、資産や収入などに関するさまざまな資料を提出する必要があります。
その中には、世帯全体の収入を報告するために家族の給与明細が含まれている場合もあります。その際には、家族に頼んで給与明細を取得しなければなりません。
また、世帯全体の会計収支を報告するための家計簿の提出も必要になりますが、家計簿の作成にあたっては、生活費、光熱費、通信費、住居費などの正確な支出を把握する必要があります。
債務者本人が家計を把握していればよいですが、そうでない場合には、家族の協力が必要不可欠となるのです。
このように個人再生の申し立てにあたっては、家族の協力が不可欠となるため、家族に協力を求めた際に個人再生のことが発覚してしまう可能性が高いのです。 -
(2)裁判所や債権者からの書類
借金を滞納していると債権者から自宅宛てに督促状などが届きますので、それによって借金の存在が家族に知られてしまう可能性があります。
また、個人再生の申し立てをすると、裁判所から個人再生に関する書類が本人の自宅宛てに送られてくることになり、それによって個人再生の手続きを利用していることが家族に知られる可能性があるのです。
ただし、個人再生の手続きを弁護士に依頼すれば、債権者や裁判所からの連絡や書類の受け取りはすべて弁護士が対応することになります。
そのため、弁護士に依頼すれば、債務者本人の自宅に書類が届くのを防ぐことができます。
3、家族にバレずに借金を整理するなら任意整理が適している
家族への発覚を防ぎつつ借金の整理をしたいという場合には、任意整理がおすすめです。
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(1)任意整理とは
任意整理とは、債権者と交渉して返済条件を変更することによって、分割弁済の継続を可能にする債務整理の方法です。
任意整理には、個人再生のような大幅な借金減額の効果はありませんが、将来利息をカットしたり月々の返済額を変更したりすることによって、月々の返済の負担を軽減することができます。
また、利息制限法の上限金利に引き下げて借金の再計算をすることによって、返済総額が減る場合もあります。 -
(2)任意整理のメリット
家族への発覚を防ぎつつ債務整理を進めるうえで、任意整理には、以下のようなメリットがあります。
① 債務整理の対象となる債権者を自由に選べる
任意整理は、個人再生のように裁判所を利用した法的手続きではないため、すべての債権者を債務整理の対象に含める必要はなく、債務整理の対象となる債権者を自由に選ぶことができます。
家族が保証人になっている債権を除外したり、自動車ローンが残っている債権を除外するなどの方法をとったりすれば、家族に知られることなく債務整理を進めていくことができます。それによって、自動車を残すことも可能です。
② 家族の収入に関する書類の提出が不要
個人再生であれば、世帯全体の収入を把握するために、家族の給与明細の提出が必要になります。
しかし、任意整理であれば、債権者との交渉時に世帯全体の収入を聞かれることはあっても、給与明細の提出までは必須ではありません。
任意整理の場合、家族の協力が不可欠とまではいえないため、家族に発覚してしまう事態を予防しやすくなるのです。
4、個人再生などの債務整理手続きは弁護士に任せるべき?
個人再生などの債務整理を検討されているなら、弁護士に依頼することをおすすめします。
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(1)最適な債務整理の方法を選択することができる
債務整理の方法には、任意整理、自己破産、個人再生の3つがあります。
それぞれの方法ごとに特徴やメリット・デメリットが異なるため、ご自身の状況に応じた最適な債務整理の方法を適切に判断することが大切です。
法律の専門家である弁護士なら、最適な債務整理の方法を選択するためのアドバイスをすることができます。
少しでの借金の負担を軽くするためにも、まずは弁護士にご相談ください。 -
(2)裁判所に提出する書類を一般の方が作成するのは難しい
個人再生では、再生計画案の作成が必要となります。
再生計画案を作成するためには、基準債権額による最低弁済額、清算価値による最低弁済額、過去2年間の可処分所得などをふまえて計画弁済額を決定する必要があります。
そのためには、個人再生に関する知識が不可欠となります。
専門的な知識に乏しい一般の方では、手続きを進めていくことは難しいでしょう。
したがって、専門家である弁護士に依頼することが必要になるのです。
5、まとめ
個人再生を利用することによって、借金の総額を減額して、借金を返済するうえでの負担を大幅に減額することができます。
しかし、個人再生の手続きにあたっては、家族の協力が必要不可欠となります。
そのため、家族に発覚することなく手続きを進めていくことは困難です。
また、事態が発覚することの他にも、さまざまなかたちで家族への影響が生じる可能性があるのです。
債務整理を行う際には、弁護士に相談することが最善です。
借金でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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