家賃を滞納してしまった…。弁護士に相談して任意整理を行う方法を解説

2020年09月09日
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家賃を滞納してしまった…。弁護士に相談して任意整理を行う方法を解説

新型コロナウイルスの流行と、それに伴う経済自粛により、職を失った方や収入が大幅に減少した方が増えています。船橋市でも、老舗旅館やホテルが相次いで廃業するなど、新型コロナウイルスによる経済悪化の影響が表面化しています。

職を失ったり収入が減少したりしたときにまず問題になるのは、毎月支払わなければならない、住んでいる部屋や家の“家賃”です。収入が減少したり途絶えたりしてしまい、充分な貯金もない状態であれば、家賃を支払うことができなくなるおそれがあるのです。家賃の滞納が連続すると、家主や管理会社から立ち退きを求められて、住居を失ってしまう事態になりかねません。

滞納している家賃は債務の一種であり、債務整理を行うことができます。債務整理の一種である任意整理を行うことで、支払い期間の猶予を設けてもらったり、滞納している家賃を減額してもらえたりする可能性があるのです。

この記事では、家賃滞納が許される期間、家賃を滞納してしまった場合の対応、任意整理のすすめ方について、ベリーベスト法律事務所船橋オフィスの弁護士が解説いたします。

1、家賃滞納は何ヶ月まで許される?

まず、「家賃滞納は何ヶ月まで許されるか?」という疑問について解説いたします。

  1. (1)賃貸借契約が解除される場合とは?

    賃貸借契約(賃貸契約)とは、他人の物を使用する代わりに賃料を支払う、という契約です。家や部屋の家賃を滞納することは、賃料を支払わない“債務不履行”にあたります。そのため、貸主は賃貸借契約を解除することができるようになるのです。
    賃貸借契約を解除されてしまうと、借主は借りている家や部屋に住み続けることができなくなってしまいます。
    ただし、いちどだけ家賃の滞納があったからといって、すぐに解除されるわけではありません。

    賃貸借契約は当事者の継続的な関係に基づくものであり、当事者間の高度な信頼関係に支えられていると見なされています。
    そのため、賃貸借契約を解除するうえでは、“当事者間の信頼関係が破壊された”といえる事情が必要とされるのです。

  2. (2)“信頼関係の破壊”とは?

    家賃をどれくらい滞納したら“信頼関係が破壊された”と見なされるか、という明確な基準は定められていません。
    家賃滞納の期間や、個々の契約に関係する具体的な事情を考慮しながら、判断されることになります。
    一般的には、借主による家賃の滞納が2カ月から3カ月続いた場合に、“信頼関係が破壊された”と見なされて、賃貸借契約の解除が認められることが多いです。
    ただし、借主が家賃滞納をたびたび繰り返したりしている場合には、1カ月の家賃滞納でも“信頼関係が破壊された”と見なされて賃貸借契約の解除が認められる可能性もあります。

2、家賃を滞納してしまった場合の対応方法や利用できる制度について

もしも家賃滞納が続いて賃貸借契約を解除されてしまった場合には、新しい住居をすぐに見つけることは、経済的にも実家的にも困難でしょう。そのため、家に住まわせてくれる家族も友人もいない場合には、生活も危うくなってしまうおそれがあります。
家賃の滞納が連続しそうな場合には、住んでいた家や部屋を追い出されるという事態が起こる前に適切な対処を行うことが大切です。対応の方法や、家賃の支払いが困難な場合に利用できる制度について、解説いたします。

  1. (1)誠実に対応する

    家賃を滞納してしまった場合には、まずは賃貸借契約書の内容について確認しましょう。借主が家賃を滞納した場合の対応や手続きについて、契約書にあらかじめ規定されている可能性があります。
    そのうえで、大家や不動産会社、管理会社などの賃貸人に対して事情を説明しなければいけません。

    賃貸人がもっとも不安に思っているのは、このまま家賃が支払われずに回収ができなくなるのではないかということです。したがって、“お金が用意できれば家賃を支払う”という意思があることや、いつまでに支払いできるかという具体的な予定について、丁寧に説明することが大切になります。

  2. (2)住居確保給付金制度を利用する

    家賃を滞納してしまった場合には、「住居確保給付金」を利用できる可能性があります。
    住居確保給付金とは、離職などの事情で家賃を支払えずに住居を失った人や失うおそれのある人を対象にして、家賃を支払う補助となる金額を支給する制度です。
    ただし、住居確保給付金の支給対象には、一定の条件が定められています。

    まず、離職・廃業から2年以内であるか、やむを得ない休業により収入が減少していることが条件となります。また、直近の月で得られた収入が都道府県や自治体ごとに定められた“収入基準額”を上回っている場合には、いくら給料が減ったとしても支給されません。家賃を支払うのに充分な預貯金が残っている場合にも、支給されない可能性が高くなります。

    住居確保給付金の支給対象は、これまでは“離職・廃業から2年以内”である方のみでしたが、新型コロナウイルスの流行に伴って支給対象が拡大されて、令和2年4月20日からは“やむを得ない休業により収入が減少している”方も対象となりました。また、これまでは“ハローワークで求職活動をしている”ことも条件でしたが、令和2年4月30日からはこの条件がなくなりました。

    ただし、住居確保給付金で支給される金額には都道府県ごとに上限が定められており、家賃の全額分が支給されるとは限りません。また、住居確保給付金が支給される期間は、原則として3カ月になります(就職活動を行っている場合には3カ月ごとの延長が可能であり、最長9カ月まで支給される可能性があります)。そして、住居確保給付金の金額は借主本人にではなく、貸主に支給されます。

    令和2年から支給対象が拡大したとはいえ、住宅確保給付金は収入や預金などに関する条件が厳しく、申請しても支給が通らなかったり充分な金額が支給されなかったりする場合も多いです。失業手当を受け取っていたり、家族から仕送りをしてもらったりした場合も、その金額が“収入”と見なされるおそれがあります。そのため、残念ながら、住宅確保給付金は確実に頼りになる制度とはいません。

    それでも、収入や貯金の状況によっては充分な金額の住居確保給付金が支給される可能性があります。また、家賃を滞納してしまう前からでも、住居確保給付金が申請できる場合があります。支給対象の条件となる収入や支給される金額などは自治体によって異なりますので、詳しくは、お住まいの自治体の窓口にお問い合わせください。

  3. (3)知人や金融機関からお金を借りる

    住居確保給付金が利用できない場合には、身近な人々や金融機関からお金を借りて家賃を支払う、という選択肢があります。

    身近な人からお金を借りることはトラブルのタネになる可能性がありますが、家賃を滞納して家から強制退去させられることに比べたら、まだ取り返しのつくことであるとも考えられます。まずは、ご両親や兄弟姉妹、友人や連帯保証人の方への相談を検討してください。
    家族や友人からお金を借りることが難しい場合には、消費者金融の利用を考えられる方もいるでしょう。しかし、消費者金融でお金を借りた場合は、金利をつけて返済する必要が生じます。消費者金融を利用する前に契約の内容や金利などについてよく確認して、計画的な利用を行わなくてはなりません。

  4. (4)生活保護を受給する

    家賃を滞納してしまうような状況であるなら、ほかの面でも生活が困窮していると考えられます。
    生活保護とは、困窮している方でも健康で文化的な最低限度の生活を過ごせることを保障するために、困窮の度合いに応じて国が必要な保護を行う制度のことを指します。

    ただし、生活保護は“最終手段”であり、他のあらゆる制度や手段を利用しても生活が困窮したままである場合のみに利用できます。収入や預貯金などが一定額を超える場合や、年金や失業手当などの生活保護以外のかたちでお金を受給している場合には、生活保護は利用できない可能性が高いです。三頭身以内の親族による扶養が受けられる場合にも、そちらを検討することを求められます。不動産や高価な貴金属など、手持ちの財産を処分することが求められる場合もありますし、住んでいる家や部屋の家賃が高い場合には引っ越しすることが求められる可能性もあります。

    上記の条件を考慮したうえでも生活保護の受給を検討する場合には、お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当に相談してください。

3、滞納家賃に債務整理を行う方法とは?

滞納した家賃は、賃貸借契約によって生じた“債務”として扱われます。そのため、滞納した家賃は“債務整理”の対象となる場合があるのです。
債務整理とは、債務(借金)の金額を減らしたりその支払い期限を引き延ばしたりすることによって債務問題を解決する手続きとなります。
また、滞納した家賃に対しては、債務整理の一種である“任意整理”を行うことが可能です。任意整理とは、裁判所に関与させることなく、債権者(貸主)と直接に交渉して、滞納した家賃の減額や支払い期限の猶予を求めることです。
債務整理の方法には、任意整理のほかにも、個人再生・自己破産・特定調停があります。

4、任意整理の手続きのすすめ方

上述した通り、裁判所が関わらないことが任意整理の特徴です。滞納家賃の問題では、貸主と借主が話し合い、滞納している家賃を減額したり利息をカットしたりすることになります。

任意整理の対象は、“非免責債権”にあたらないものとされています。非免責債権とは、社会保険料や税金など、支払い義務が特に重たい債務のことです。家賃は非免責債権とはされていないため、任意整理の対象とすることができます。
ただし、家賃を任意整理の対象にすると、借主の連帯保証人に滞納家賃の支払い請求が行われることになります。
また、家賃を任意整理の対象とすると、大家や管理会社から建物明渡請求を裁判所に提起されて、家から強制退去させられるというおそれもあるのです。

5、家賃を滞納したときに弁護士に相談すべき理由

家賃を滞納してしまった場合には、住居確保給付金や生活保護などの支援制度を利用したり、身近な人や消費者金融に借金を行ったりする、という対応が行えます。しかし、支援制度は利用の条件が厳しく、必ずしも利用できるとは限りません。また、身近な人からの借金には人間関係のトラブルのリスクがあり、金利のつく消費者金融からの借金についても慎重にならなければいけません。
家賃滞納の問題に悩まれている方が弁護士に相談するメリットについて、解説いたします。

  1. (1)精神的負担が軽減できる

    家賃滞納が発生している場合は家の賃貸人からの督促のほか、借金をしている相手からの取り立てに悩まされていることも少なくないでしょう。
    弁護士に依頼すれば、弁護士が本人に代わって任意整理を行うことができます。その場合、任意整理が完了するまでの間は、滞納家賃や借金の返済が中断されます。そのため、賃貸人や借金をした相手による督促からも解放されることになり、精神的な負担が軽減されることになるのです。

  2. (2)他人に知られずに処理できる

    借金を抱えている状態で家賃を滞納してしまうと、貸金業者や大家や管理会社などからの電話連絡が増えてしまい、内容証明郵便などの郵便物も大量に送られてくることになります。
    しかし、自分が家賃を滞納したり借金をしたりしていることは、他人には知られたくないものです。仕事中にも電話がひっきりなしにかかってきたり、部屋のポストが郵便物でいっぱいになったりすると、他人に事情が伝わってしまうおそれがあります。
    弁護士に依頼すれば、本人に代わって連絡窓口となり、貸金業や大家や管理会社からの電話や郵便も弁護士が受けることができます。そのため、家賃滞納や任意整理のことについて、職場の同僚や近所の人などに知られてしまうリスクを低くすることができるのです。

  3. (3)時間や手間も節約できる

    借金を抱えて家賃滞納をしてしまった場合、任意整理をするためには貸金業者や大家とのやり取りが必要となります。各種の書類の準備や手続きなどにも、時間や手間がかかります。
    弁護士に依頼すれば、時間と手間のかかる面倒な手続きも代行させることができるのです。

  4. (4)有利に交渉をすすめることができる

    任意整理は、裁判所は関与しない当事者間の話し合いによって行われます。そのため、交渉のすすめかたによって結果が左右される可能性があります。
    貸金業者や管理会社の交渉担当者は法律の知識に詳しかったり、法律の専門家であったりする場合が多いです。法律的な知識や任意整理の経験がない方にとっては、交渉の場で自分の言い分を正当に主張することは難しい場合もあります。そのため、話し合いが不利な結果で終わってしまう可能性も高いのです。
    弁護士は法律知識の専門家であり、交渉の経験も豊富です。そのため、こちら側でも弁護士に依頼することで、任意整理の交渉を対等にすすめることができます。ひとりで交渉する場合に比べて、滞納家賃や借金を大きく減額してもらえる可能性も高まるでしょう。

6、まとめ

本コラムでは、一般的に家賃滞納が許される期間、家賃を滞納してしまった場合の対応、滞納家賃に債務整理を行う方法、任意整理のすすめ方などについて解説いたしました。
住宅は生活の基盤をなすものであり、いちど住居を失ってしまうと、生活を立て直すことはかなり困難になります。

家賃を滞納してしまった場合や、滞納してしまいそうなときには、住居を失う事態を回避するために、早期の段階から対応を行いましょう。
住居確保給付金や生活保護は利用できる場合が限られており、知人や金融機関からの借金にはリスクがあります。任意整理を適切にすすめるために、家賃を滞納されている方は、ぜひ弁護士に相談してください。借金など、家賃のほかにも抱えている債務についてまとめて相談することも可能です。

家賃滞納や債務整理について相談したい方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所・船橋オフィスにまでご連絡ください。任意整理の交渉の経験も豊富な船橋オフィスの弁護士が、ご相談を承ります。

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