子どもが逮捕されたときに、親ができることは?逮捕から処分までの流れを解説

2020年10月19日
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子どもが逮捕されたときに、親ができることは?逮捕から処分までの流れを解説

千葉県警察が公表しているデータによると、令和2年の上半期に船橋市で発生した自転車窃盗の件数は417件でした。
未成年の起こす犯罪は、自転車の窃盗などが多く、成人の起こす犯罪に比べれば些細なものだといえます。しかし、些細なものであっても犯罪は犯罪であり、未成年であっても逮捕される可能性があるのです。
子どもであっても、家庭裁判所での審判を経て処分が行われる可能性はあります。また、罪の程度が重い場合には、成人と同様に刑事罰がくだされる可能性もあるのです。
もしも自分の子どもが逮捕されてしまったら、子どもにくだされる処分のことから将来の就学や就職のことまで、親として不安になることが多々あるでしょう。
本コラムでは、未成年の子どもが逮捕された後の慣れやくだされる処分の内容、逮捕されることが将来の就学や就職に与える影響について、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説いたします。

1、少年事件の処分は、「更生」が目的

原則的に、犯罪を行った人は、何らかの処罰を受けます。
刑事罰の目的には、罪に対してふさわしい報いを与える「応報」という側面もあれば、刑事罰を受けることをおそれて罪を犯すことを回避させる「予防」という側面もあります。そして罪を犯した人が社会復帰をできるように促す「更生」という側面もあるのです。
法律では、未成年は責任能力に乏しい存在とされています。そのため、原則として、罪を犯した未成年への処分は「応報」よりも「更生」が強調されます。
更生が目的であるため、身体の自由が奪われる「懲役刑」や、経済的な制裁である「罰金刑」は、原則として課せられません。
その代わりに、以下のような処分が行われます。

【保護処分】
再犯のおそれが低い場合や、罪の程度が軽い場合は、一般生活を続けながら、保護司との面接や指導を一定期間受けながら更生を行う「保護観察」が適用されます。
再犯のおそれが強い場合は、生活全般からの矯正を目的として、少年院への送致が行われる可能性があります。
また、特に年齢の低い未成年の場合は、少年院よりも開放的な児童自立支援施設に送致される場合があるのです。

【都道府県知事・児童相談所長送致処分】
罪の程度や、未成年の家庭環境によっては、児童福祉法による規定が相当だと家庭裁判所によって判断される可能性があります。この場合、事件は都道府県知事または児童相談所長に送致される可能性があります。
児童福祉法の対象となった場合は、少年院ではなく児童福祉機関に入所することになります。

【検察官送致】
年齢が14歳以上である場合は、罪の重さやこれまでの非行歴によっては、成人の犯罪と同じく検察官に送致される可能性があります。
検察官に送致されるということは、成人と同様に刑事罰の対象になる、ということです。
なお、16歳以上の未成年が故意の犯罪によって人を死亡させた場合には、原則として、検察官に送致されます。「殺人をしても少年だから無罪」とはならないのです。

【不処分・審判不開始】
保護処分や検察官送致などを行わなくても、少年が更生することが充分に期待される場合は、と判断されれば不処分や審判不開始の対応がとられる可能性があります、
ただし、処分や心配を行わないといっても、家庭裁判所がなにもしないわけではありません。裁判官や調査官による訓戒や指導など、更生を促すための教育的な処置が行われます。

2、子どもが逮捕された後の流れ

未成年が罪を犯した場合の、逮捕から処分にいたるまでの流れについて、解説いたします。

  1. (1)「子どもは逮捕されない」は間違い

    先述したように、罪を犯した未成年に対する処分は原則として更生が目的とされており、応報や制裁を目的とする刑罰はくだされません。
    しかし、刑罰がくだされない未成年であっても、罪を犯したら「逮捕」をされる可能性はあります。
    逮捕は、刑罰のようにペナルティを目的とした処置ではありません。被疑者の身柄を捜査機関のもとにおくことで、取り調べを効率化することを目的とした処置なのです。そのため、未成年であっても、捜査機関によって「逮捕して取り調べを行うべきだ」と判断されると、逮捕される可能性があるのです。
    ただし、逮捕された未成年は、成人の逮捕者とは別室に留置されます。また、勾留が請求された後には、警察施設ではなく少年鑑別所に留置される場合があります。逮捕に関しても、未成年と成人とでは措置が異なる点があるのです。

  2. (2)逮捕後の子どもの扱いはどうなるか

    逮捕から審判までには、以下のような手続きがあります。

    ① 逮捕
    先述した通り、逮捕とは「捜査機関によって身柄を拘束されること」です。
    逮捕されているあいだは、行動や連絡などの自由も制限されます。たとえ家族であっても、逮捕中は、面会や電話連絡などはできないのです。

    ② 送致
    14歳以上の場合は、逮捕から48時間以内に、警察から検察庁や家庭裁判所に送致されます。
    送致とは、身柄と関係書類を引き継がれる手続きのことを指します。基本的には検察庁に送致されますが、犯した罪に対する法定刑が罰金刑以下の場合は、家庭裁判所に直接送致されることになります。

    ③ 勾留
    検察官は、送致を受けてから24時間以内に、未成年の身柄を引き続き拘束する必要があるかどうかの判断を行います。
    拘束の必要がある、と判断された場合は、検察から裁判所に「勾留」の請求が行われます。
    勾留が決定すると、原則として10日間、最長では20日間、身柄の拘束が行われます。

    ④ 家庭裁判所送致
    未成年が犯した事件では、勾留の満期が迎えられる前に、検察官は事件を家庭裁判所に送致します。
    ただし、未成年であっても刑事責任を問われる罪だと家庭裁判所が判断した場合には、検察庁に送致が返されます。これを「逆送」といいます。

    勾留の満期を迎えるまでに、検察官は事件を家庭裁判所に送致します。家庭裁判所が刑事責任を問うべきと判断した場合は検察庁に送致が返されます。これを逆送といいます。

    ⑤ 調査
    家庭裁判所は、検察から送られた書類に基づいて、事件の調査を行い、少年の処遇を決める「審判」の必要性を判断します。審判の必要がない場合は、審判不開始という扱いになります。

    ⑥ 審判
    審判は家庭裁判所で行われます。成年の起こした事件に対する裁判と異なり、審判手続は非公開です。審判では「保護処分の必要はあるか」「処分の必要があるならどのような処分をくだすべきか」ということについて判断されます。

3、子どもが逮捕されると、進学や就職に悪影響は生じる?

自分の子どもが逮捕されたり、裁判所の審判で処分を受けたりしてしまった場合、親としては「将来の進学や就職に、悪影響があるのではないか?」ということが心配になると思われます。

警察と学校は、未成年の非行を多角的に防止する目的の制度である「学校連絡制度」によって、連携しています。そのため、警察に逮捕されると、非行や犯罪の事実は原則として学校に通知されます。
また、逮捕された場合は、最低でも10日間は身柄を拘束されることが一般的です。そのあいだは、学校を欠席しなければいけません。そのため、逮捕された事実を学校に隠し通すことは困難だといえるでしょう。
高校や大学への進学の際には、在学中の学校から進学を希望している学校へ、内申書によってこれまでの素行などが報告されることがあります。これにより、逮捕の事実が進学に悪影響をおよぼす可能性は高いでしょう。

就職に関しても逮捕によって影響が出る可能性があります。
一般的に、企業に就職する際には、履歴書を提出しますが、履歴書には賞罰欄があり、前科等はここに記載することとなるからです。実名報道をされた場合は、さらに大きな影響が出る可能性がありますが、未成年の犯罪は、実名報道されないことが通例です。
医師など、「前科」があると就職できない職業もあります。

4、子どもが逮捕されたときに親ができること

子どもが逮捕されてしまった場合、親や保護者の対応によって、子どもにくだされる処分の内容が変わる可能性があります。
子どもの未来を守るためには、早期の段階から弁護士に連絡して、適切な対処を実施することが重要になるのです。

  1. (1)弁護士に相談する

    子どもが逮捕されたとの連絡があったら、速やかに弁護士に連絡しましょう。
    未成年の逮捕に関しては、弁護士は一般的な刑事弁護にとどまらない活動をします。勾留されている子どもに両親が面会できない場合でも、接見交通権が認められている弁護士であれば子ども面会することが可能です。今後の手続きに関する話し合いのほか、逮捕されて不安を感じている子どものケアなどを行うこともできるのです。
    また、学校や職場への連絡や調整も、弁護士に代行させることが可能です。特に学校への連絡は、法律の専門家である弁護士が素早く対処することによって、不利益を最小限に食い止められることができます。
    審判になった場合も、弁護士が子どもの付添人になって、可能な限り処分が軽くなるように尽力します。

  2. (2)被害者に謝罪する

    窃盗や暴行など、被害者が存在する罪を子どもが行った場合は、逮捕された子どもに代わって親が被害者に謝罪しましょう。
    被害者の感情は、損害賠償に関する示談交渉のほか、子どもにくだされる処分の軽重にも関わってくる可能性があります。そして、謝罪が遅れれば遅れるほど、被害者の感情が悪化するおそれがあります。そのため、謝罪を速やかに行うことが大切です。
    ただし、事件直後に親が直接に謝罪しに行くと、被害者の感情を逆なでして逆効果になってしまう場合があります。そのため、謝罪のタイミングに関しても、弁護士に相談した方がよいでしょう。弁護士であれば、被害者と電話や書面で連絡を取りながら、謝罪を行う適切なタイミングを判断できます。

  3. (3)カウンセラーを探す

    罪を犯した子どもは、「悪いことをしてしまった」という心理的なストレスや後悔の感情を抱いている場合があります。
    子どもの更生のためには、裁判所による保護処分のほか、カウンセラーによる心理ケアなども必要になります。
    未成年の事件を扱う経験の豊富な法律事務所であれば、子どもの事情や居住している地域などの事情を考慮して、適切なカウンセラーを紹介することができます。

5、まとめ

もしも自分の子どもが逮捕されてしまったら、子どもの安全を心配しながら待っているだけでなく、弁護士に相談しましょう。逮捕の後に警察から不当な扱いを受けていないか、今後の将来に悪影響はないかなどのケアを弁護士に任せることができます。
事件の背景や子どもの事情についてきちんと理解できる、少年事件の解決実績が豊富な弁護士に相談することが最適です。ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスにご依頼をいただければ、未成年の弁護経験が豊富な弁護士が対応いたします。子どもが逮捕されてしまい今後のことが不安である方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所にまでご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています