当て逃げしてしまったことに気づかなかったら?問われる罪や罰則とは
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千葉県警察が発表している、令和4年の千葉県内における交通事故発生状況の統計によると、船橋市の交通事故発生件数は1162件で、県内2番目に多い数字となっております。なかには、接触したのに気づかなかったケースもあるでしょう。
しかし、施設・店舗の防犯カメラが充実している昨今では、自分でも気づかないうちにうっかり接触してしまったようなケースでも、あとになって「当て逃げをした」と疑いをかけられてしまうことがあります。もし、運転手本人が気づかなかったような軽微な事故でも、その場で事故を申告していなければ、警察による捜査が行われる可能性があるのです。
本コラムでは、「当て逃げ」がどのような罪に問われるのかについて、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説いたします。
1、「当て逃げ」とは? 「ひき逃げ」との違い
まずは「当て逃げ」がどのような行為を指すのかについて解説します。
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(1)当て逃げとは?
「当て逃げ」とは、一般的には「負傷者のない交通事故を起こして、その場から逃げること」を指します。
自動車同士の事故だけでなく、ガードレール・道路標識・信号柱・電柱・門塀・看板などに接触した場合も、その場から逃げてしまえば「当て逃げ」と見なされるのです。
また、他人が飼っている犬や猫などのペットは、法律上は「モノ」として扱われるため、他人のペットを車で轢いてから逃げてしまう行為も、法律上は当て逃げに分類されます。
つまり、当て逃げとは「物損事故を起こして逃げた場合」を指すのです。 -
(2)当て逃げとひき逃げの違い
当て逃げと同じように使われる用語として「ひき逃げ」があります。
ひき逃げといえば、一般的には、自動車が道路を横断中の歩行者などに接触して、そのまま逃走する行為がイメージされるでしょう。
たしかに、ニュースなどで報じられるひき逃げ事故では、深夜・早朝などに歩行者を轢いて逃走したといった形態が目立ちます。
当て逃げとひき逃げを定義で区別すると、物損事故を起こして逃走するのが当て逃げである一方で、ひき逃げは「人身事故を起こして逃げた場合」を指します。
ケガの程度は問われないためかすり傷や軽い打撲程度でも、相手にケガが生じていれば人身事故となり、逃走すればひき逃げになるのです。
また、自動車同士の事故であっても、相手にケガがある場合は「当て逃げ」ではなく「ひき逃げ」となります。
2、当て逃げ行為で問われる罪と罰則
当て逃げが発覚すると、単なる交通事故としてではなく、犯罪として厳しい処罰が科せられます。
当て逃げ行為で問われる罪や罰則を確認しておきましょう。
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(1)危険防止措置義務違反・報告義務違反に問われる
当て逃げは、道路交通法第72条1項の定めに違反する犯罪行為です。
【道路交通法第72条(交通事故の場合の措置)】
1 交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
道路交通法第72条1項は、まず前段で、交通事故を起こした場合の負傷者の救護と道路における危険防止措置の義務が定められています。
交通事故が起きると、現場の交通は遮断されてしまいます。
ガラスやバンパーの破片などが飛散してしまうほか、故障した車が道路をふさいでしまう状況もあるでしょう。
第一の事故が原因で、第二、第三の事故を引き起こしてしまう可能性もあるのです。
そのため、交通事故の当事者には、これらの危険を防止するために必要な措置を講じる義務があります。
つまり、相手にケガがなくても、事故現場における危険防止措置の義務を怠って逃走した場合には「危険防止措置義務違反」となるのです。
さらに道路交通法第72条1項の後段では「警察官への報告」も義務付けられています。
事故現場から逃走した場合はもちろん、厳密にいえば当事者同士がその場で話し合って解決した場合にも、警察官への通報がなければ「報告義務違反」となります。
なお、事故の相手が死傷しているのに逃走した場合には、危険防止措置義務違反ではなく「救護義務違反」となります。 -
(2)当て逃げ行為に対する罰則
当て逃げ行為では、道路交通法第72条1項の「危険防止措置義務違反」と「報告義務違反」の2つの罪を犯すことになります。
危険防止措置義務違反と報告義務違反の罰則は、それぞれ、次のとおりに定められています。- 危険防止措置義務違反……1年以下の懲役または10万円以下の罰金(道路交通法第117条の5の2号)
- 報告義務違反……3か月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法第119条10号)
物損事故を起こしてその場から逃走した場合、危険防止措置義務違反と報告義務違反の両方が成立しますが、これらは「ひとつの行為」と評価されます。
この考え方を観念的競合といい、当てはまる可能性のある罪のなかでも、法定刑がもっとも重い罪によって処断されることになるのです。
したがって、当て逃げ行為の場合には、法定刑が重い危険防止措置義務違反に問われることになります。
3、物損事故を起こした際の正しい対応
物損事故を起こしたときは、誰もが少なからず動揺してしまうものです。
しかし、事故現場での対応を誤ってしまうと、その後には不利な展開が待ち構えています。
物損事故を起こした際の正しい対応について、解説します。
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(1)当て逃げは絶対にしない
まず大前提として、どんなに気が動転してしまっても、その場から逃げてしまうようなことがあってはなりません。
危険防止措置義務違反を犯してしまえば、単なる物損事故であっても、犯罪になってしまいます。
事故を起こしたらただちに安全な場所に車を止めて、第二、第三の事故を誘発しないように危険防止措置を講じましょう。
もちろん、相手に負傷がないかを確認して、負傷がある場合には救護措置をとることも大切です。
「相手に外傷がなかったから、物損事故で済む」と思っていても、目に見える外傷がないだけで頚椎(けいつい)捻挫などの症状が発生している場合も多々あるため、最大限の安全策を心がけることが重要になるのです。 -
(2)ただちに警察に通報する
たとえ軽微な物損事故であっても、道路交通法では通報の義務が課しています。
相手が「警察には通報しなくてもよい」と通報を拒んだとしても、法律に定められた義務を果たさないと、あなた自身が処罰されてしまうおそれがあるのです。
事故現場からは、携帯電話やスマートフォンで110番に通報することが最善です。
110番に通報すれば事故現場を管轄する警察本部へと接続されるので、事故の場所、状況、負傷者の有無などを端的に伝えて、警察官の臨場を待ちましょう。 -
(3)当事者同士で連絡先を交換する
警察官の臨場を待つ間や事故処理の間に、事故当事者の間で氏名・住所・電話番号を交換しておきましょう。
事故後の賠償などについて話し合いを進めるためには、相手の連絡先が必要です。 -
(4)保険会社や弁護士に連絡する
警察の事情聴取などの合間に、加入している自動車保険の保険会社に連絡しておきましょう。
保険の適用に必要な情報について教示を受けられるだけでなく、契約内容によってはロードサービスなどの手配もサポートしてくれます。
また、事故現場で相手方とトラブルになっている際には、不用意な発言を控え、ただちに弁護士に連絡して指示を仰ぎましょう。
適切な対応についてアドバイスが得られるだけでなく、現場で確保しておくべき証拠や情報についても指示が得られるはずです。
4、当て逃げをしてしまった場合の解決策
当て逃げをしてしまっていた場合の解決策について解説します。
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(1)警察への通報は必須
「相手にはナンバーを見られていない」「逃げてしまえばわからないだろう」などと勝手に思い込んで逃走するのは危険です。
現代では小型・安価なドライブレコーダーが広く普及しているので、相手や周囲を通りがかった車が事故の様子やあなたの車のナンバーを記録している可能性が高くなっております。
また。警察が周囲の施設・店舗などの防犯カメラを確認することで割り出されてしまう可能性もあるのです。
どんなに軽微な物損事故であっても、道路交通法の定めに従ってただちに警察に通報するべきです。
また、事故に気づかなかったところ、後日になって相手方に指摘されてしまい、図らずも当て逃げの疑いをかけられてしまった場合でも、やはり警察への通報を欠かしてはいけません。
自動車保険を使って修理費用などを賠償する場合には、警察が交付する事故証明が必要となります。
法律の規定はもちろんですが、賠償の負担を軽くするためにも警察への通報は不可欠なのです。 -
(2)トラブルが想定されるなら弁護士への相談を
当て逃げをされたことを理由に、不当に高額な修理費用を請求してくる、自身の過失を無視して全額の賠償を求めてくるといった相手も少なからず存在します。
なかには、事故当時に警察が関与していないことを逆手に取り、事故による損傷ではない修理費用を請求されるケースや、損傷の程度はごく軽微なのに「修理のために車が使えなかった」としてタクシー代や代車費用の請求を受けるケースもあるのです。
事故の相手との交渉でトラブルが想定される場合や、すでに相手から不当な請求を受けているといった状況があれば、ただちに弁護士に相談しましょうs。
弁護士が代理人として示談交渉の場に立つことで、不当な請求を回避して、適切な賠償額で示談を成立させることができます。
5、まとめ
物損事故を起こして、危険防止のための措置や警察への通報を怠ってその場から逃げてしまうと、「当て逃げ」になってしまいます。
故意に逃走した場合には当然ですが、自分でも気づかないうちに接触していた場合でも、当て逃げの疑いをかけられてしまう事態は避けられないでしょう。
道路交通法違反として処罰を受けるおそれがあるうえに、相手から不当に高額な修理費などの請求を受けて、トラブルに発展してしまうケースも少なくないのです。
「軽微な損傷しかなかったから」「誰にも見られていなかったから」と当て逃げをしてしまうことは、大変危険な行為です。
もし、当て逃げをしてしまったのであれば、ただちに交通事故や刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 船橋オフィスまでご相談ください。
厳しい刑事罰が下される事態の回避や、相手との円満な解決を目指して、弁護士が全力でサポートいたします。
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