Twitterで知り合った男性にパパ活詐欺をしてしまった場合に問われる罪
- 財産事件
- パ活詐欺
令和4年に千葉県船橋市内で確認された詐欺の件数は、180件でした。
相手の男性と会う気がないにもかかわらず、お金だけ支払わせて連絡を絶つような行為は「パパ活詐欺」といわれます。近年では、Twitter(ツイッター)などのSNS上で、パパ活詐欺にあたる悪質な行為が横行しています。
もしパパ活詐欺をした場合には、「詐欺罪」の責任を問われる可能性があります。警察に逮捕される可能性もあるので、ご自身の行為に心当たりのある方は、早めに弁護士に相談しましょう。
本コラムでは、TwitterなどのSNSやパパ活アプリ・パパ活サイトなどで行われている「パパ活詐欺」について、成立する犯罪や逮捕された場合の手続きの流れなどを、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。
1、パパ活詐欺とは?
「パパ活詐欺」とは、パパ活に応じる気がないにもかかわらず、その気があるとうそをついて、パパ活相手の男性にお金を支払わせる行為のことをいいます。
いわゆる「パパ活」とは、女性(パパ活女子)が男性に対して以下のような行為を提案し、その対価として金銭を受け取ることを指します。
- 会って食事をする
- 一緒に買い物に行く
- 一緒に旅行に行く
- 性行為をする
本当は上記のような行為をするつもりがないのに、その気があるかのように装ってパパ活募集を行い、メッセージを送ってきた男性にお金を支払わせる行為は「パパ活詐欺」といるでしょう。
とくにTwitterなどのSNSでは、銀行振り込みや決済アプリなどを通じて先にお金を支払わせ、その後にいちども会うことなくアカウントをブロックして連絡を絶つような形のパパ活詐欺が横行しています。
なお、男性が女性に対して行う「ママ活詐欺」も存在します。
2、「詐欺罪」の構成要件
パパ活詐欺は、「詐欺罪」による処罰の対象となります。
詐欺罪の構成要件は、以下のとおりです。
これらの要件をすべて満たした場合には、詐欺罪に問われて、処罰を受けるおそれがあります。
- ① 欺罔行為(だます行為)
- ② 錯誤(だまされたこと)
- ③ 財物の交付
- ④ 財物の移転
- ⑤ ①〜④の間の因果関係
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(1)欺罔行為(だます行為)
「欺罔行為」とは、財物を交付させるために、その所持者をだまそうとする行為を意味します。
パパ活詐欺の場合には、対価であるお金を交付させるため、男性に対してデートや性行為などに応じる意思があるなどとうそをつく行為が「欺罔行為」に該当します。
なお、欺罔行為がなされた時点で、他の要件を満たさなくても「詐欺未遂罪」が成立するという点に注意してください。 -
(2)錯誤(だまされたこと)
「錯誤」とは、財物の所持者が真実とは異なる認識(=勘違い)に陥った状態を意味します。
パパ活詐欺の場合には、「女性がデートや性行為などに応じる意思がある」と男性が勘違いした状態が「錯誤」にあたります。 -
(3)財物の交付
詐欺罪の成立には、被害者から欺罔者に対して実際に財物が交付されたことが必要になります。
パパ活詐欺の場合には、男性が女性に対して金品を交付する行為が「財物の交付」にあたります。 -
(4)財物の移転
実際に被害者から欺罔者に財物の占有が移転したことも、詐欺罪が成立する要件です。
パパ活詐欺の場合には、実際に女性がお金を手にした(または口座に振り込まれた)段階で、財物の移転が認められることになります。 -
(5)因果関係
詐欺(既遂)罪が成立するには、以下の①と②、②と③、③と④の間に、いずれも因果関係が認められなければなりません。
- ① 欺罔行為(だます行為)
- ② 錯誤(だまされたこと)
- ③ 財物の交付
- ④ 財物の移転
たとえば、以下の例のように、いずれかの因果関係が遮断されている場合は、詐欺罪は成立しないのです(ただし、詐欺未遂罪が成立する場合はあります)。
(例)- 男性は女性の「性行為をしてもいい」といううそにだまされなかったが、女性を哀れに思ってお金を支払った(欺罔行為と錯誤の間に因果関係がない)
- 男性は女性の「性行為をしてもいい」といううそにだまされたが、それが動機ではなく、純粋に女性の夢を応援したいと思ってお金を支払った(錯誤と財物の交付の間に因果関係がない)
3、Twitter上のパパ活詐欺で逮捕された場合の流れ
Twitter上でパパ活詐欺にあたる行為をした場合には、警察に逮捕される可能性があります。
逮捕されたら、その後は以下のような流れで刑事手続きが進行します。
- ① 逮捕〜勾留請求
- ② 起訴前勾留
- ③ 正式起訴・略式起訴・不起訴
- ④ 起訴後勾留
- ⑤ 公判手続き
- ⑥ 判決の確定・刑の執行
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(1)逮捕〜勾留請求
逮捕による身柄拘束は、最長で72時間継続します(刑事訴訟法第205条第2項)。
逮捕期間中は警察官や検察官による取り調べが行われますが、供述するかどうかは任意です。
検察官は、罪証隠滅や逃亡を防ぐために身柄拘束の延長が必要と判断したら、裁判官に対して勾留請求を行います。 -
(2)起訴前勾留
裁判官は、勾留の理由と必要性の有無を検討したうえで、いずれも認められると判断した場合には勾留状を発します。
勾留状が発せられた場合、被疑者の身柄拘束は逮捕から起訴前勾留へと切り替わります。起訴前勾留の期間は最長20日間で、逮捕と通算すると最長23日間です。
起訴前勾留期間中は、引き続き警察官や検察官による取り調べが行われます。 -
(3)正式起訴・略式起訴・不起訴
起訴前勾留の期間が満了するまでの間に、検察官は被疑者について、以下のいずれかの処分を行います。
- ① 正式起訴
裁判所に対して公開の刑事裁判(公判手続き)を請求する処分です。 - ② 略式起訴
簡易裁判所に対して、略式命令によって刑罰を科すことを請求する処分です。
100万円以下の罰金または科料を求刑する場合に限り、被疑者に異議がないことを条件として認められます。 - ③ 不起訴
被疑者を起訴せず、刑事手続きを終了させる処分です。
犯罪の嫌疑が確実であっても、検察官の判断によって不起訴処分となることがあります。
ただし、詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり、罰金や科料は認められていません。
そのため、詐欺罪で起訴される場合は、必ず正式起訴となります。 - ① 正式起訴
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(4)起訴後勾留
被疑者が正式起訴された場合には、身柄拘束が起訴前勾留から起訴後勾留へと切り替わります。
また、起訴以降の被疑者の呼称は「被告人」となります。
起訴後勾留期間においては、警察官や検察官による取り調べは原則として行われません。
被告人としては、弁護人と相談しながら、公判手続きに向けた準備を整える必要があります。
なお、起訴前勾留とは異なり、起訴後勾留の期間中は保釈が認められることがあります(刑事訴訟法第89条、第90条)。
保釈請求が認められた場合、保釈保証金を裁判所に預ければ、一時的に身柄が解放されます。 -
(5)公判手続き
公判手続きは、被告人の有罪・無罪および量刑を審理・判断する、公開の手続きです。
検察官はすべての犯罪要件の立証を行い、被告人はそれに対して反論することになります。
被告人としては、罪を認めて情状酌量を求めるか、罪を否認して争うかを適切に判断することが重要になります。
弁護人と相談したうえで、どちらの方針で臨むべきかを決断しましょう。
審理が熟した段階で、裁判所が判決を言い渡します。
無罪であればその時点で釈放されますが、実刑判決を受けた場合は保釈が認められていても失効し、再び身柄を拘束されることになります(刑事訴訟法第343条)。
なお、詐欺罪の場合、3年以下の懲役が言い渡される際には、執行猶予が付される可能性があります(刑法第25条第1項)。
ただし、以前に禁錮以上の刑に処せられたことがある場合には、執行猶予が付されることがあるのは1年以下の懲役が言い渡される場合に限ります(同条第2項)。 -
(6)判決の確定・刑の執行
判決に不服がある場合には、高等裁判所に控訴することができます。
控訴審判決に対しては、最高裁判所に対する上告が可能です。
控訴・上告の手続きを経て、判決が確定します。
実刑判決の場合は刑務所に収監されますが、執行猶予付判決の場合は、一定期間刑の執行が猶予されます。
再犯などによって執行猶予を取り消されることなく、執行猶予期間を経過した場合には、刑の言い渡しが効力を失います(刑法第27条)。
4、パパ活詐欺での逮捕が心配な場合は弁護士にご相談を
パパ活詐欺について成立する可能性がある詐欺罪は、最長10年の懲役刑が課され得る重罪です。
軽い気持ちでパパ活詐欺に手を染めてしまうと、逮捕・起訴されて重い刑罰を科されるおそれもあります。
出来心でパパ活詐欺をしてしまった方は、すぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士は、被害者との示談交渉などの不起訴に向けた弁護活動や、公判手続きでの情状酌量を求める弁護活動を通じて、依頼者が重い刑事処分を回避できるようにサポートいたします。
万が一逮捕されてしまった場合にも、家族との連絡を弁護士が取り次ぎますので、精神的な負担が軽減されるでしょう。
「パパ活詐欺で逮捕されるのではないか……」と不安に感じている方は、まずは弁護士に連絡してください。
5、まとめ
パパ活詐欺をした場合、詐欺罪の責任を問われて刑罰を科される可能性があります。
パパ活詐欺をしてしまった方は、すぐに弁護士に相談しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、刑事弁護に関するご相談を随時受け付けております。
詐欺をした自覚のある方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています