ゲーム機の高額転売は違法? 古物営業法の内容や罰則を弁護士が解説
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令和2年は「転売」が大きく注目される年でした。小学館の国語辞典「大辞泉」に掲載する新語を選ぶキャンペーンには、転売を繰り返して利益を得ようとする人を指す造語の「転売ヤー」がノミネートされたのです。
船橋市では、市のホームページ上でコンサートチケットの転売に関するトラブルのQ&Aを公開しており、法規制の情報も含めて注意喚起しています。
特に近年では、家庭用ゲーム機の転売が問題視されています。令和2年11月にはソニーインタラクティブエンタテインメントの「プレイステーション5(PS5)」が発売前から10倍以上の価格で出品されるなど、過熱する転売が強く問題視される報道が相次ぎました。
消費者が転売ヤーを通報するといった動きもあるため、「小遣い稼ぎのつもりでゲーム機を転売したが、何らかの処分や刑罰を受けるのではないか…」と不安を感じてられている方もおられるでしょう。
本コラムでは、ゲーム機の転売が違法になるケースや関係する法律などを、べリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説いたします。
1、転売を規制する法律
最近では、ネットオークションやフリマサイト、フリマアプリなど浸透したことで、誰もが「売り手」として商品を販売しやすい環境が整っております。
インターネット上では「誰でも簡単に稼げる副業」といったうたい文句で転売を勧めるサイトも目立ちますが、対象となる物品によっては法律による規制を受ける可能性があるため、注意が必要となります。
まず、転売を規制する法律や、対象となる物品について解説いたします。
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(1)チケット不正転売禁止法
令和元年6月に施行された「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(通称:チケット不正転売禁止法)」は、映画・演劇・コンサート・スポーツなどのチケットの不正転売を規制する法律です。
この法律で転売が禁止されているのは、いわゆる「チケット」のなかでも、「特定興行入場券」にあたるものに限られます。
特定興行入場券にあたるのは、次の3つの要件を満たしたものです。- 興行主に無断で有償譲渡することが禁止されている
- 興行の日時・場所・入場資格者・座席が指定されている
- 興行主などが販売時に購入者の氏名・連絡先を確認して、その旨が券面に表示されている
特定興行入場券を、興行主の事前の同意を得ず、さらに入場券の販売価格を超える価格で転売した場合は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの両方が科せられます。
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(2)国民生活安定緊急措置法
新型コロナウイルスが流行した当初、「国民生活安定緊急措置法」が注目されました。
この法律は、第一次オイルショックによる物価の急激な上昇と生活物資が品薄になったことによって起きた混乱を安定させる目的で制定されたものです。
国民生活安定緊急措置法では、国民生活との関連性が高い物資の高騰が起きたとき、または高騰のおそれがある場合に、政府が標準価格を指定できるよう定められています。
過去には灯油・家庭用液化石油ガス・ちり紙・トイレットペーパーが指定されたほか、令和2年には衛生用マスク・消毒用アルコールが指定の対象になりました。
個人でも購入価格を超えて転売した場合は不正転売となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
なお、衛生用マスク・消毒用アルコールの転売規制は令和2年8月29日に解除されましたが、今後も感染症の流行の状況によっては、再び規制の対象となる可能性があります。 -
(3)都道府県の迷惑防止条例
各都道府県が制定している「迷惑防止条例」では、入場券や乗車券などを興行の会場や公共の場所において転売する、いわゆる「ダフ屋」行為が禁じられている場合があります。
転売目的で券売所に並ぶ、チケットを持っている人に声をかけて買い取る、チケットを持っていない人に高値で転売するなど行為は、処罰の対象となるのです。
千葉県の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」でも、第8条においてダフ屋行為が禁止されています。
千葉県における罰則は「5万円以下の罰金または拘留もしくは科料」ですが、東京都では「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められているなど、自治体によって罰則の重さが違うという点に注意してください。
2、ゲーム機の転売が違法にあたるケース
人気が集中して品薄状態が続く、最新機種で店頭からすぐに在庫が消えるといったゲーム機は、転売による利益を得やすい商品です。
自分で遊ぶつもりがなくても、ネットオークションやフリマアプリなどで転売する目的で購入する人も少なくないでしょう。
小遣い稼ぎのつもりで気軽におこなったゲーム機の転売行為も、一定の条件に該当する場合には違法となる可能性があるため、注意が必要です。
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(1)「新品ゲーム機の転売」そのものを規制する法律はない
現行のわが国の制度では「ゲーム機の転売」という行為そのものを規制する法律はありません。
予約抽選で当選しないと購入できないゲーム機をネットオークションに出品する行為や、品薄のゲーム機を量販店で購入してプレミア価格で買い取るリサイクルショップに売却する行為は、違法ではないのです。
チケット不正転売禁止法などのように「販売価格を超えてはならない」といった規制もないため、売り手と買い手の間で合意が成立していたら、定価の数倍以上もする高額で転売したとしても適法となるのです。 -
(2)転売目的で大量に購入したゲーム機を転売すれば違法になることがある
ゲーム機の転売行為は基本的に適法ですが、その行為が「古物営業」にあたると判断される場合は違法になってしまうおそれがあります。
「古物」とは、古物営業法第2条において「一度使用された物品、もしくは使用されていない物品で使用のために取引されたもの、またはこれらの物品に幾分かの手入れをしたもの」と定義されています。
開封されて使用されたことのあるゲーム機はもちろん、開封されていなくても、一度でも消費者の手に渡ったものは「新古品」として古物に含まれるのです。
「利益を得る目的で、反復継続して売買を繰り返す状態」を、同法では「古物営業」と表現されます。
古物営業をするためには、都道府県公安委員会から「古物商」の許可を受ける必要があるのです。
たとえば、転売する目的で複数の量販店に足を運び、人気のゲーム機を買い占めて転売する行為は古物営業とみなされるでしょう。
つまり、人気のゲーム機を大量に購入して、ネットオークションやフリマアプリで出品するつもりがある場合は、古物商としての許可が必要となるのです。
都道府県公安委員会の許可なく古物営業をした場合には、古物営業法第3条の違反となります。
たとえ「仕入れ」と称していても、量販店などで購入すれば新古品となるため、古物営業の許可を受けていない場合には違法とみなされる可能性があります。
一方で、「自分で遊んでいたが飽きてしまったのでネットオークションに出品した」「高額買い取の情報を聞いて、リサイクルショップで売却した」などの行為は古物営業とはみなされません。
「複数の店で予約の抽選をしたところ、偶然にもすべて当選してしまい、余剰分を転売した」といった場合も、違法とみなされる可能性は低いでしょう。
3、古物営業法に違反した場合の罰則
都道府県公安委員会の許可を得ずに古物営業としてゲーム機を転売した場合は、古物営業法第31条1項の定めによって「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられます。
また、古物商としての許可を受けていた場合でも、次のような行為には刑罰が規定されているために注意が必要です。
- 不正な手段で許可を受けた……3年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 他人に名義を貸して古物営業をさせた……同上
- 法定外の場所での営業……1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 売り主の住所・氏名などの確認を怠る、古物台帳を備え付けていない……6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 虚偽申請、無許可のオークション開催……20万円以下の罰金
- 許可証を表示しない、警察の立入検査を拒む……10万円以下の懲役
4、転売行為が違法になるか心配なら弁護士に相談を
ゲーム機の転売が違法になるのは、転売行為が「古物営業」とみなされた場合です。
本業の合間に副業として転売を繰り返してきたようなケースでは、古物営業法に違反すると判断されるおそれがあります。
転売行為が古物営業にあたるかどうかの判断は、転売を繰り返してきた期間や数量、販売の方法、収益の額などから総合的に判断されます。
ただし、どのくらいの数量や収益から古物営業とみなされるようなるか、ということに関する明確な基準はありません。
自分が行ったゲーム機の転売行為が違法であったかどうか、不安を感じられる方は、弁護士に相談することをおすすめします。
法律の専門家である弁護士なら、転売行為が古物営業法違反にあたるのかを法的な側面から正確に判断することができます。
また、古物営業法違反にあたる可能性が高い場合には、古物商としての許可を得るためのサポートをおこなうことも可能です。
すでに警察からの取り調べを受けている段階であれば、不利な供述をしないためのアドバイスを得ることもできます。
もし過去の転売行為が違法であった場合にも、「古物営業法の規定を知らなかったので、適法となるための手続きを進行している」などの事情を弁護士が検察官に示すことで、起訴や厳しい処分を避ける可能性を高められるのです。
5、まとめ
ネットオークションやフリマアプリなどが浸透したことにより、ゲーム機を転売する行為は個人でも気軽におこなえるようになりました。
予想以上の高額取引になって多額の利益を得られるケースもあるため、「ワリのいい副業」と思って転売を繰り返している方も少なくないでしょう。
しかし、転売行為が無許可の古物営業とみなされた場合には、厳しい刑罰が科せられてしまうおそれがあるのです。
「自分がおこなった転売行為が違法になるのではないか…」と不安を感じているなら、弁護士への相談をおすすめします。
古物営業法に違反していないか心配になっている、正規に古物営業の許可を得たいと検討しているなどのお悩みがある方は、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスにまでご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています