バイト先で万引きしていたのがバレそう! 窃盗罪で逮捕されるのか?

2021年06月21日
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バイト先で万引きしていたのがバレそう! 窃盗罪で逮捕されるのか?

船橋市市民生活部市民安全推進課の発表によると、令和元年の船橋市では3398件の窃盗事件が起こりました。最も多いのは「自転車盗」の1284件であり、二番目は「その他非侵入窃盗」の1116件でした。「その他非侵入窃盗」の大半は、店舗に並んでいる品物を窃盗する、いわゆる「万引き」であると考えられます。

万引きは犯罪のなかでも発生件数が多く、「出来心でついやってしまった」というケースもよく見受けられます。船橋市では、万引き犯をつかまえたスーパーの店長が犯人を死亡させるという事件が令和元年に起こったことも、問題となりました。そして、万引きは必ずしも来店客が行うとは限られず、アルバイトやパートタイマーとして勤務している店員が商品を窃盗する場合もあるのです。

本コラムでは、バイト先での万引き行為が発覚して店長に警察を呼ばれそうになっている場合などにとるべき対応について、べリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説いたします。

1、バイト先の万引きで被害届を出されてしまったらどうなる?

  1. (1)被害届とは?

    「被害届」とは、犯罪の被害者が、自分が被害を受けたという事実を捜査機関に申告する書面のことを指します。
    被害届が警察に提出されることは、「刑事事件」として警察の捜査が開始されるきっかけのひとつとなります。
    万引きは法的には窃盗罪に該当するため(刑法235条)、万引きの被害にあった被害者は、「窃盗罪」の被害者として被害届を提出することになるのです。

    なお、被害届が出されたからといって、捜査が必ず開始されるとは限りません。警察が実際に捜査に着手するかどうかは、被害届の内容によって変わるためです。
    犯罪被害の実態が明らかで、具体的な犯人の手がかりなどがある場合には、被害届に基づいて捜査が行われる可能性が高くなります

  2. (2)万引き事件の捜査のポイント

    万引き事件の被害者が盗難の実態を確認し、犯人を突き止めるための重要な証拠が、「防犯カメラの映像」となります。

    店舗の営業中に起こった万引きであれば、お店の人による現行犯逮捕が行われる場合もあります
    また、スーパーやコンビニや雑貨店など、最近のお店の大半には、防犯カメラが設置されています。営業が終了した後に万引きの事実に気が付いた店長は、犯人が入店してから退店するまでの行動を追跡するために、防犯カメラの映像を精査するでしょう。
    ただし、防犯カメラには、映像が映らない「死角」が存在します。したがって、犯人の動きや商品の位置によっては、犯行の一部始終が映っていない可能性もあるのです。

    防犯カメラの映像のなかでも特に重要になるのが、犯人が商品を自分のカバンや洋服のポケットなどに入れる瞬間の映像です。
    窃盗罪は、「お金を払っていない商品を持ってお店を出た」時点ではなく、「お金を払っていない商品を自分のカバンやポケットに入れて隠した」時点で、成立することが多いためです。
    そのため、いちど商品をカバンに入れてから、気が変わってその商品を棚に戻したり購入したりしたとしても、厳密には窃盗罪はすでに成立しており、罪から逃れられるとは限らないのです。
    しかし、実際には、商品がお店から持ち出されてお店の側に被害が発生しない限りは、仮に万引きの事実が発覚したとしても、お店側も見逃してしまい、警察に通報されたり被害届を出されたりすることは少ないでしょう。

    また、お店に複数の監視カメラが設置されている場合には「死角」がほとんどなくなり、ほぼすべての万引き行為がどこかのカメラに写っていると考えられます。
    したがって、自分が万引きをしたという自覚があり、お店の人からも犯人だと疑われているなら、万引き行為の証拠が防犯カメラに映っていることを覚悟しなくてはなりません

2、バイト先での万引きは「窃盗罪」! 刑罰はどうなる?

  1. (1)バイト先での万引きは窃盗? 横領?

    「窃盗罪」と「横領罪」は、どちらも、「無断で他人の財産を奪う」という犯罪です。
    窃盗罪と横領罪との違いは、奪われる対象の財産を占有しているのが「相手」であるか「自分」であるか、という点にあります。窃盗罪は「相手が占有している物」を盗む罪であり、横領罪は「自分が占有している物」を盗む罪です。

    「占有」とは、その物を実際に管理・支配している状態のことを指します。
    万引き事件の場合、犯人がお店を経営に関わる店長や社員などであり、商品を自分で管理・支配する立場にあったのなら、自分の占有する物を盗んだことになるので、横領罪が成立します。
    一方で、犯人が客などであり、商品を管理・支配できない立場であったなら、相手が占有する物を盗んだことになり、窃盗罪が成立するのです。

    客が万引きした場合には、ほぼ確実に、窃盗罪が成立することになります。
    一方で、アルバイトなどお店の従業員が商品を万引きした場合には、窃盗であるか横領であるかは、状況によって分かれます
    お店で働いているのであれば、基本的には、「商品を管理する立場にある」ということになります。しかし、実際には、お店における上下(主従)関係によって事情は変わります。
    たとえば、店長やオーナーなどの責任ある立場にあり、商品のすべての管理を任されて、それを支配していたという状況ならば、上下関係の上位者とみなされます。上位者は自分の責任でお店の商品を管理し、占有しているため、店の商品を盗んだら「横領罪」が当てはまることになるでしょう。
    一方で、アルバイトやパートタイマーなど、店長ではない一般従業員は、上位者の指示を受けながら勤務する、上下関係の「下位者」にあたるとみなされます。これらの従業員は「占有補助者」とも呼ばれ、自分自身で商品の全体を管理・支配できている立場とはみなされません。したがって、これらの従業員が万引き行為を働いた場合には、横領ではなく窃盗罪が当てはまることになるのです。

  2. (2)万引きの刑罰はどれくらい重い?

    窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です(刑法235条)。なお、窃盗の犯人が、反復して窃盗などを犯す習癖があり、過去10年以内に窃盗罪等で3回以上懲役6ケ月以上の刑の執行を受け、又はその執行の免除を受けていた場合には、「常習累犯窃盗」として3年以上の有期懲役になります(盗犯等の防止及び処分に関する法律第3条)。

    刑罰を受けるのは、刑事事件として起訴されて、有罪判決を受けた場合に限られます。
    初犯であるなどの場合には、不起訴処分となることがあります。
    また、店側の被害額が小さい場合や、被害者である店長などとの「示談」が成立している場合には、被害届を取り下げてもらえる可能性があります。被害届が取り下げられると、不起訴処分になる可能性が高くなります。
    そして、起訴された場合であっても、罰金のみで済まされて、懲役などの実刑にはならない可能性があるのです。
    さらに、もし裁判官から実刑が申告されても、深い反省の意を示したり被害者との示談が成立していたりする場合には、事情酌量がなされて、執行猶予がつく可能性もあります。

    犯罪の内容は一緒であっても、被害者との示談を適切に成立させることができるか、起訴されてしまった場合には反省の念や万引きを行うにいたった事情などを法廷で適切に示せるか、という点で、実刑が下されるかどうかが左右されるのです。
    そのため、万引きの被害届を店長に出されたり、自分の万引きが店側にバレていることに気が付いたりした時点から弁護士に相談して、早期の段階から対応を開始することが重要になります

3、窃盗罪で逮捕された後の流れと、前科がついた場合の影響は?

  1. (1)窃盗罪で逮捕された場合の流れ

    警察に窃盗事件の容疑をかけられて逮捕されてしまった場合の流れは、以下の通りです。

    ● 現行犯逮捕と通常逮捕
    逮捕は、大きくふたつの種類にわけられます。
    ひとつめの「現行犯逮捕」とは、万引きをしたその場で警察官や店員、目撃者などに身柄をとりおさえられることを指します。
    ふたつめの「通常逮捕」とは、被害届などをきっかけとした警察の捜査によって犯人だと相当程度疑われる人物が特定されたときに、警察が裁判所に逮捕状を請求して、その令状に基づいて逮捕することです。通常逮捕では、警察が突然に自宅にあらわれて、令状を見せられて警察に同行を求められることになります。

    なお、窃盗罪の公訴時効は7年です(刑訴法250条)。つまり、事件から7年以内であれば、いつでも通常逮捕される可能性があるといえるのです。

    ● 逮捕から勾留
    逮捕されると、48時間以内に、警察から検察官に身柄が送致されます(刑訴法203条)。その後、検察官は、さらに24時間以内に勾留請求するか釈放するかを判断します(刑訴法205条)。つまり、逮捕段階で、最大72時間、連続して身柄を拘束されることになるのです。
    また、逮捕されると、財布や携帯電話をふくめたすべての所持品が取り上げられます。したがって、自分で外部に連絡をとることは一切できなくなるのです。
    家族との面会もできなくなり、唯一の窓口は弁護士となります。弁護士ならば、接見という方法で面会し、話をすることができます。

    72時間が経過した後にも、「さらに身柄を拘束する理由と必要性がある」と検察官が判断すれば、裁判所に「勾留」が請求されます。勾留期間は原則として10日間ですが、さらに10日間の延長も可能です。つまり、逮捕されてしまうと、最大で20日間、身柄が拘束される可能性があるのです。

    ● 万引きが発覚しても逮捕されるとは限らない
    万引きをしてしまっても、逮捕されずに在宅で捜査が行われる場合があります。
    本人について、逃走や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、必ずしも逮捕はされずに済むのです。なお、在宅でも捜査はすすめられるので、警察から取り調べなどで呼び出された場合には、素直に応じるべきです。呼び出しを無視していると、逃亡のおそれがあるとみなされ、逮捕される可能性があるためです。

    ● 早期釈放のポイント
    逮捕されても、勾留まではすすまず早く釈放してもらえる場合もあります。特に、取り調べで正直に事実を話し、被害者にしっかり誤って示談を成立させることなどは、釈放に近づくための重要なポイントとなるのです。そのため、万引きがバレてしまったら、被害者に謝罪する機会を速やかにもって、示談を成立させましょう

    ● 起訴されると刑事裁判が行われる
    しっかりと捜査が完了すると、検察官が、その犯人を起訴するか不起訴で終わらせるかの判断を下します。起訴すべきだと判断されると、被告人としての刑事裁判の呼び出しを受けます。
    なお、日本における刑事裁判の有罪率は約99%といわれています。いったん起訴されると、無罪を勝ち取るのは極めて難しいのが実態です。無罪にならないということは、なんらかの前科がつくということです。そのため、取り調べの時点で、不起訴になるようにしっかりと手を尽くす必要があるのです

  2. (2)前科がついたときの影響

    前科とは、過去に有罪判決を受けたことを指します。
    逮捕や勾留は前科にはあたりません。したがって、逮捕されても、起訴されず、裁判を受けずに終わった場合には、前科はつきません。
    逆に、起訴されてしまうと、無罪にならない限りは前科となります。懲役刑を受けた場合はもちろん、罰金刑も執行猶予判決も前科です。

4、職場での窃盗がバレそうになったら弁護士に相談するべき理由

  1. (1)逮捕される前の準備がわかる

    万引きがバレたとわかったら、すぐに弁護士に相談しましょう。
    弁護士であれば、本人から事情をきけば、その後の流れや逮捕される可能性などを判断することができます。
    また、いったん逮捕されると、その後3日間は家族でさえも連絡がとません。自分で信頼できる弁護士を見つけることもできませんから、逮捕前に弁護士に相談しておくことで、逮捕された後のことも任せることができます。

  2. (2)早急に示談にとりかかれる

    窃盗罪においては、刑罰の重さや起訴されるかどうかを決めるポイントは、以下の三点となります。

    • ① 被害金額の大きさ
    • ② 被害をしっかり弁償すること
    • ③ 被害者と示談すること


    弁償と示談を適切に行うためには、刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、弁償の金額や適切な謝罪の方法、示談のときに作成する書面などについて助言して、示談交渉を代行することもできます。

5、まとめ

バイト先やパートタイムで働いている職場で万引きをしてしまったら、監視カメラに残った映像の記録などを調べられて、事実が発覚する可能性が高いでしょう。
窃盗罪をしてしまった場合、被害者である店長との示談を速やかに成立させることで、被害届が取り下げられたり不起訴処分になったりして、前科がつくことを避けられる可能性が高まります
職場で万引きを行ってしまい、不安な方は、ぜひ、べリーベスト法律事務所 船橋オフィスにまでご相談ください。示談の経験豊富な弁護士が、適切な対応をいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています