立て続けに交通事故被害に遭ったとき、受けられる補償はどうなるのか?

2023年08月15日
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立て続けに交通事故被害に遭ったとき、受けられる補償はどうなるのか?

短期間のうちに続けて交通事故(自動車事故)の被害に遭った場合、一回目の事故と二回目の事故のいずれについても、加害者に対する損害賠償の問題が発生します。

示談交渉も、一回目と二回目の両方の事故について行う必要があるため、弁護士のサポートを受けながら適切に対応していきましょう。

本コラムでは、短期間で立て続けに交通事故に遭った場合における損害賠償請求の取り扱いについて、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。

1、立て続けに交通事故に遭った場合の法律関係

交通事故の被害者は、加害者に対して、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償を請求できます。
もし一回目の事故(第1事故)の後に二回目の事故(第2事故)が起こるなどして立て続けに交通事故が発生した場合にも、両方の事故について損害賠償を請求することができます

ただし、第1事故によって負ったケガが第2事故によって悪化するなど、ひとつの損害の発生について両方の事故が関係している、という事態もあり得ます。
そのような場合には、被害者に対する損害賠償責任を、第1事故と第2事故の各加害者が分担することになるのです。

2、第1事故の治療中に第2事故が発生した場合の注意点

短期間のうちに交通事故が立て続けに発生した場合、第2事故が発生したタイミングによって、その後の示談交渉に関する方針が変わってきます
具体的には、第2事故の発生が第1事故の示談成立より前か後のどちらであるかが、重要になってきます。

まずは、第1事故の示談成立前に第2事故が発生した場合について、事故の被害者側が注意すべき点を解説します。

  1. (1)示談交渉は第1事故・第2事故をまとめて行うべき

    第1事故の示談成立前に第2事故が発生した場合、示談交渉は第1事故・第2事故をまとめて行うべきです

    交通事故が立て続けに発生したケースでは、第1事故と第2事故の間で損害賠償責任の分担が問題になります。
    しかし、「責任をどう分担するか」ということは加害者同士が関心を抱くべき関心事であって、被害者としては、どちらかの加害者から損害を賠償してもらえればそれで済むのです。

    第1事故と第2事故の示談交渉をまとめて行えば、被害者に生じた損害額について、加害者の間で共通認識が形成されることになります
    その共通認識をベースとして、損害賠償責任の分担を加害者間で話し合ってもらえれば、簡明な形で損害賠償を清算できるでしょう。

    また、示談交渉が1回で済むために、被害者側の労力や負担が軽減される点も大きなメリットといえます。

  2. (2)各保険会社との調整

    第1事故・第2事故の示談交渉をまとめて行うためには、各事故の加害者が加入している任意保険会社(自動車保険会社)と連絡を取り合う必要があります。

    複数の任意保険会社と並行してやり取りするのが大変な場合には、弁護士に依頼して交渉を代行してもらいましょう。

3、第1事故の示談成立後に第2事故が発生した場合の注意点

第1事故の示談が成立した後で第2事故が発生した場合には、示談成立前に第2事故が発生した場合と異なる点に注意が必要になります。

  1. (1)今後の示談交渉は第2事故についてのみ|第1事故は示談に従って精算

    第1事故の示談は成立済みのため、今後は第2事故の示談交渉に注力することになります

    第1事故の損害賠償は示談内容に従って精算したうえで、第2事故の示談交渉で適正な損害賠償を獲得できるように、請求できる損害賠償の具体的な内容について検討していきましょう。

  2. (2)第1事故で障害を負った場合、第2事故への影響の有無が争点

    第2事故の示談交渉では、加害者(任意保険会社)が、第1事故の影響による損害賠償の減額を主張してくることがあります。

    とくに、第1事故で負ったケガが完治せず障害が残り、その障害の影響で第2事故のケガが重症化した場合、第2事故の加害者の損害賠償責任が減額される可能性がある点に注意してください
    第2事故の加害者に対して損害全額の賠償を請求したい場合には、第1事故の障害が第2事故のケガに影響していないことを、客観的な資料に基づきながら主張する必要があります。

  3. (3)先発事故の後発事故に対する影響が認められた裁判例

    以下では、「先発事故によって残った障害が、後発事故の結果に影響した」として、損害賠償の減額が認められた裁判例を紹介します。

    <京都地裁平成22年3月30日判決>
    交通事故に遭った被害者が、約10年後に2度にわたって交通事故に遭った事案です(後発事故の間隔は約5か月間)。

    京都地裁は、先発事故によって後遺障害12級に相当する障害が残ったことを認定しつつ、後発事故後に生じた右上肢痺れ・冷感・巧緻障害などについて、後発事故との相当因果関係を認めました。
    その一方で、先発事故による障害が後発事故後の症状に大きく寄与したものとして、休業損害・後遺障害逸失利益・傷害慰謝料・後遺障害慰謝料を50%減額しました。


    このように、先発事故による障害が後発事故によるケガの症状に影響を与えたと判断されると、損害賠償額が大幅に減額される可能性がある点に注意しましょう

  4. (4)減額された損害賠償を、先発事故の加害者に後から請求できるか?

    後発事故の加害者との関係で、先発事故の寄与を理由として損害賠償額が減額された場合には、被害者としては減額相当額を先発事故の加害者に請求したいところでしょう。

    もし先発事故の加害者に対して後から損害賠償を請求する場合には、以下のような点が問題になります

    ① 減額の理由とされた障害等が、先発事故の示談成立時点で判明していたか
    後発事故の損害賠償を減額する理由とされた、先発事故に起因する障害等が、先発事故の示談が成立した時点で判明した場合には、「すでに示談によって精算済み」と判断されて、追加の損害賠償請求は認められない可能性が高くなってしまいます。

    これに対して、先発事故の示談成立時点では当該障害等が未判明だった場合には「示談の対象外であった」と判断されて、追加の損害賠償請求が認められる可能性があります。

    ② 先発事故の損害賠償請求権の消滅時効
    先発事故の損害賠償請求権の消滅時効が完成しており、加害者が時効を援用した場合には、追加で損害賠償を請求することはできません。

    不法行為に基づく損害賠償請求権(人身事故の場合)の消滅時効は、以下のいずれかの期間が経過した時点で成立します(民法第724条、第724条の2)。
    • 損害および加害者を知った時から5年
    • 不法行為の時から20年
    ※上記のほか、2020年3月31日以前に「損害および加害者を知った時から3年」が経過している場合にも、消滅時効が完成します。
    また、2020年3月31日以前に「不法行為の時から20年」が経過した場合、消滅時効の完成ではなく除斥期間の経過として扱われます。

4、立て続けの交通事故について弁護士ができるサポート

立て続けに交通事故に遭ってしまった場合、加害者への損害賠償請求や示談交渉は弁護士に依頼しましょう。
以下では、交通事故の被害に遭った方のために弁護士ができるサポートについて解説します。

  1. (1)損害賠償請求に関する法的検討

    弁護士は、交通事故の状況を客観的に分析して、加害者に対して請求できる適正な損害賠償額を計算します。

    複数の交通事故が関係する複雑な事案でも、弁護士が丁寧に分析を行うことで、損害賠償請求に関する方針を適切に定めることができるのです

  2. (2)各保険会社との示談交渉の一括代行

    加害者側(任意保険会社)との示談交渉は、弁護士が一括して代行いたします。
    任意保険会社が提示する示談条件をうのみにすることなく、客観的かつ被害者に有利な「裁判所基準(弁護士基準)」に基づきながら、適正な金額の損害賠償を請求することができます。

    立て続けに交通事故が発生したために複数の任意保険会社と示談交渉を行う必要がある場合でも、弁護士であれば保険会社間との調整も含めて交渉を代行することができます

  3. (3)ADR・訴訟手続きへの対応

    加害者側との示談交渉がまとまらない場合には、弁護士が主導してADR(裁判外紛争処理手続)や訴訟の手続きを進めて、適正な金額の損害賠償の獲得を目指します。

    ADRや訴訟は専門性の高い手続きであるため、専門家である弁護士に手続きを依頼しましょう。

5、まとめ

短期間で立て続けに交通事故に遭った場合、両方の事故の加害者に対する損害賠償請求権が発生します。
両加害者(任意保険会社)との示談交渉を通じて、適正な金額の損害賠償を獲得するためには、弁護士のサポートを受けることが効果的です

ベリーベスト法律事務所は、交通事故に関する法律相談を随時受け付けております。
立て続けの交通事故についても、ご状況を整理したうえで、最大限の結果を得られるように尽力いたします。
交通事故の被害に遭われた方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています