交通事故で重傷を負った場合|慰謝料計算の注意点や請求の流れを解説
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船橋市が公表している交通事故の統計資料によると、令和3年に船橋市内で発生した交通事故の件数は1234件であり、前年から12件の増加となりました。
交通事故で重傷を負うと、長期間の入院や通院を強いられることになります。被害者の方は、身体的苦痛のみならず、多大な精神的苦痛も被ることになるでしょう。
このような精神的苦痛に対しては、慰謝料という形で賠償を受けることが可能です。また、慰謝料以外にもさまざまな損害に対する賠償金を請求することができるため、事故の被害にあわれた方は損害賠償についてしっかりと理解することが大切です。
本コラムでは、交通事故で重傷を負った場合における慰謝料計算の注意点とその流れについて、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故で重傷を負った場合に家族ができること
交通事故で重傷を負ってしまうと、被害者本人はケガにより動けなくなったり、病院に入院したりすることになるでしょう。
このような場合には、被害者に代わって、身近な人間である家族がさまざまな手続きを行わなければなりません。
以下では、交通事故の各段階において被害者の家族ができることを解説します。
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(1)事故発生
交通事故によって重傷を負った被害者は、病院に搬送されます。
被害者自身で連絡をすることができない場合には、病院・警察・保険会社などから家族宛てに連絡が行くことになるでしょう。
任意保険に加入している場合には、交通事故に関するやり取りは、保険会社を通じて行うことになります。
被害者側の保険会社および加害者側の保険会社と連絡を取りながら、被害者の治療を進めていきましょう。 -
(2)症状固定
症状固定とは「これ以上治療を継続しても症状の改善が見込めない状態」のことをいいます。治療によってけがが完治すればよいですが、重傷を負った場合には、何らかの障害が残ってしまう可能性があります。
症状固定時点における障害については、後遺障害等級認定申請をすることによって、障害の内容および程度に応じた後遺障害等級認定を受けることができます。
被害者本人が対応できない場合には、家族が代わって手続きを行うことになるでしょう。
また、被害者の意識が戻らないような場合には、成年後見制度の利用も検討する必要があります。 -
(3)保険会社との交渉
後遺障害等級認定の手続きが終わった段階で、加害者側の保険会社から賠償額の提示がなされます。
基本的には被害者本人が対応しますが、後遺障害などで対応が難しい場合には、本人に代わって家族が交渉を行うことになります。 -
(4)交渉決裂なら裁判
加害者側の保険会社との交渉では納得いく金額が提示されなかった場合には、交渉決裂となり、最終的に裁判で決着を付けることになります。
裁判の当事者は被害者本人であるため、家族は弁護士の相談に付き添ったり、必要書類を収集したりするなどのサポートをしてあげましょう。
2、慰謝料だけじゃない! 交通事故で請求できるお金の基本
交通事故で重傷を負った場合には、慰謝料以外にも以下のようなお金を請求することができます。
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(1)治療費
交通事故で重傷を負った場合には、長期間の入院や通院が必要になります。
入院費用や通院費用については、必要かつ相当な範囲であればすべて交通事故の損害に含まれるため、治療費として加害者(保険会社)に対して請求することができます。 -
(2)通院交通費
通院をするために必要な交通費についても交通事故の損害に含まれます。
自家用車を利用して通院をする場合には、1㎞あたり15円で計算をしたガソリン代が通院交通費として支払われます。
電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合にも、支払った運賃を請求できます。
重傷であった場合には、自家用車や公共交通機関を利用することができず、タクシーを利用することもあるでしょう。けがの内容や程度からみてタクシーの利用が相当と認められれば、タクシー代金を請求することもできます。 -
(3)付添看護費
家族が入通院に付き添った場合には、医師の指示があったかどうか、けがの程度や被害者の年齢から付き添いの必要があるかどうかをふまえて、必要かつ相当であると認められる場合には、付添看護費を請求することができます。
入院に近親者が付き添った場合には、1日につき6500円が、通院に近親者が付き添った場合には、1日につき3300円が損害として認められます。 -
(4)入院雑費
入院をすると日用品の購入などさまざま支出を要することになります。このような入院中の出費は、本来であれば不要な支出ですので、交通事故の損害として請求することができます。
入院雑費は、1日につき1500円という定額で計算をするのが一般的です。 -
(5)休業損害
交通事故によって仕事を休んでしまった場合には、給料の減少という損害が生じます。このような減収分については、休業損害として請求することができます。
また、有給休暇を利用して入通院をしたという場合には、給料の減少は生じませんが、経済的価値を有する有給休暇を失うという損害が生じることになります。
そのため、有給休暇を利用した場合にも休業損害の請求は可能です。 -
(6)逸失利益
交通事故によって後遺障害が生じてしまった場合には、労働能力が制限されてしまい、将来の収入が減少しています。
このような「将来に得ていたはずの収入」については、逸失利益として請求することができます。
逸失利益は、以下のような計算式で計算をします。基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
3、交通事故で重傷を負った場合の慰謝料は、どう計算する?
以下では、重傷事故の慰謝料を計算する方法について説明します。
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(1)重傷事故で請求できる慰謝料の種類
重傷事故によって請求できる慰謝料としては、以下の三種類があります。
① 傷害慰謝料(入通院慰謝料)
交通事故によるけがの治療のために、入院や通院を余儀なくされた場合には、多大な精神的苦痛を被ることになります。
このような入通院で生じた精神的苦痛に対しては、「傷害慰謝料」として慰謝料を請求することができます。
② 後遺障害慰謝料
重傷事故では、治療を続けたとしても何らかの障害が生じてしまう可能性があります。
このような障害については、後遺障害等級の認定を申請することによって、障害の内容および程度に応じた後遺障害等級認定を受けることができます。
後遺障害等級認定を受けた場合には、認定された等級に応じて、後遺障害慰謝料を請求することができます。
③ 近親者固有慰謝料
交通事故の被害者本人ではなく、被害者と一定の関係にある近親者にも慰謝料が認められる場合があります。
このような慰謝料を「近親者固有慰謝料」といいます。
近親者固有慰謝料は、被害者本人に重篤な後遺障害が残った場合や介護の負担を強いられることになった場合に請求することができます。 -
(2)慰謝料の算定には3つの基準がある
慰謝料は被害者が被った精神的苦痛に対する賠償ですが、被害者の主観を基準に慰謝料を算定してしまうと、同様の事故でも被害者ごとに慰謝料の金額が異なるなどの不都合が生じます。
したがって、交通事故の賠償実務においては、客観的な基準によって慰謝料を計算することになっています。
また、慰謝料の算定基準には、以下の三種類があります。- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
慰謝料の金額は、どの基準を用いて計算するかによって大きく異なります。
また、最も高額な基準である「弁護士基準」で慰謝料を請求するためには、示談交渉を弁護士に依頼する必要があるのです。 -
(3)事故の程度、生活への影響などによって慰謝料が増額する
慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償金ですが、特別な事情がない限りは、慰謝料の金額は客観的な基準によって算定したものとなります。
ただし、以下のような事情がある場合には、それらの事情を考慮して慰謝料の増額が認められることもあります。- 生死をさまよう状態に陥った
- 複数回の手術が必要になった
- 事故によって流産や中絶を余儀なくされた
- 失職や転職を余儀なくされた
- 加害者に反省の色がなく不誠実な態度をとった
4、交通事故を弁護士に依頼するメリット
交通事故の被害にあった場合には、弁護士に依頼することをおすすめします。
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(1)保険会社との交渉を任せることができる
交通事故の賠償をする際には、保険会社との間で交渉を行っていかなければなりません。
しかし、保険会社の担当者と被害者とでは、交通事故の賠償に関する知識や経験に圧倒的な差があります。
そのため、被害者本人では示談交渉を適切に進行するのは困難な場合が多々あるのです。
また、重傷を負い、障害が残った状態では、満足に交渉をすることもできないこともあるでしょう。
保険会社との示談交渉は、弁護士に依頼しましょう。
弁護士であれば、被害者に代わって、保険会社と交渉を行うことができます。
交渉に伴うさまざまな負担を軽減しながら、適切な条件で示談を成立させることができる可能性を高めることができるのです。 -
(2)賠償額を増額できる可能性が高くなる
慰謝料の算定基準には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の三つの基準があります。このうち、最も高額な金額を算定できるのは弁護士基準です。
弁護士基準を利用して賠償額を請求することができるのは、弁護士が代理人となって交渉をする場合に限られます。
そのため、原則的に、弁護士に依頼したほうが、より高額な損害賠償を請求することができるのです。 -
(3)増額事由を立証し適切な慰謝料を獲得できる
慰謝料の算定方法は客観的な基準によって定型化されていますが、特別な事情がある場合には、それを主張立証することによって、慰謝料を増額できる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、法律の専門知識や経験に基づきながら、慰謝料を増額すべき理由を適切に主張することができます。
5、まとめ
交通事故によって重傷を負ってしまうと、被害者本人だけでなく家族の方も大きな負担を被ることになります。
少しでも負担を軽減し、適正な賠償額を請求するためにも、ご家族が事故にあわれたら、早急に弁護士に相談するようにしましょう。
ご自身やご家族が交通事故にあわれてお悩みの方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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