居眠り運転事故に巻き込まれた! 相手の罰則と過失割合について解説
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船橋市が公表している交通事故発生状況についての統計資料によると、令和3年に船橋市内で発生した交通事故件数は、1234件であり、前年と比べて12件増加しています。
交通事故が起きる原因のひとつとして「加害者の居眠り運転」があります。居眠り運転による事故は、一般的な前方不注視による事故に比べても、大事故につながるリスクが高くなります。そのため、加害者の刑事責任は通常よりも重いものとなる場合があります。また、民事責任についても、加害者が居眠り運転をしていた場合には過失割合は被害者にとって有利なものとなる可能性が高くなります。
したがって、被害者としては、「加害者が居眠り運転をしていたこと」の立証が重要になります。本コラムでは、居眠り運転事故に巻き込まれてしまった場合に相手側に課される刑罰と、民事上の損害賠償に関わる過失割合について、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。
1、居眠り運転と過労運転の違い
まず、居眠り運転の概要と、似た言葉である「過労運転」との違いについて解説します。
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(1)居眠り運転とは?
「居眠り運転」は、法律上では明確な定義があるわけではありません。
一般的には、「車を運転中に居眠りをしてしまうこと」:をいいます。
睡眠不足や疲れがたまった状態で車を運転すると、眠気に襲われて、居眠りをしてしまうことがあります。
運転中に居眠りをしてしまうとブレーキを踏んで衝突を回避することもできなくなり、反対車線にはみ出して走行してしまうなどの重大な事故が発生するリスクが高くなります。居眠り運転は、極めて危険な行為なのです。
そのため、居眠り運転事故については、道路交通法の安全運転義務違反として厳しく処罰されることになります(労働交通法70条)。 -
(2)居眠り運転と過労運転の違いとは?
居眠り運転と似た言葉に「過労運転」というものがあります。
過労運転とは、過労、病気、薬物などの影響により、運転者が正常な運転ができない状態で車の運転を行うことをいいます。
過労運転については、道路交通法66条1項に規定されており、居眠り運転とは、違反した場合の根拠条文が異なってきます。
居眠り運転については、道路交通法70条違反にとどまる場合、基本的には、違反点数や反則金の行政処分の対象となるのみです。
一方で、過労運転については、行政処分に加えて刑事罰の対象になるなど、居眠り運転よりも重い処分が下されることになります。
2、居眠り運転はどのような刑罰にあたる?
以下では、居眠り運転をした加害者に対して科される、刑事上の罰を解説します。
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(1)居眠り運転に対して科される可能性のある刑罰
居眠り運転をして被害者を死傷させるなどの人身事故を起こした場合には、加害者に対して、以下のような刑罰が科される可能性があります。
① 危険運転致死傷罪
「危険運転致死傷罪」とは、危険な状態で車を運転した結果、人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
危険運転致死傷罪が適用されるのは、以下の行為をした結果、人を死傷させた場合となります。- アルコールまたは薬物の影響によって正常な運転が困難な状態で車を走行させる行為
- 進行制御が困難な高速度で車を走行させる行為
- 進行制御の技能がない状態で車を走行させる行為
- 妨害目的で車を運転する行為
- 妨害目的でのあおり運転行為
- 赤色信号を殊更に無視して車を運転する行為
- 通行禁止道路を運転する行為
アルコールや薬物の影響によって居眠り運転をしてしまったというケースでは、危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。
危険運転致死傷罪が適用された場合には、人の負傷に対しては15年以下の懲役、人の死亡に対しては1年以上の懲役が科されます。
② 過失運転致死傷罪
「過失運転致死傷罪」とは、車の運転に必要とされる注意を怠った結果、人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
睡眠不足や過労によって、うっかり居眠りをしてしまい、前方注視義務を怠ったため被害者に死傷の結果を生じさせてしまったというケースでは、過失運転致死傷罪が成立します。
過失運転致死傷罪が成立した場合には、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科されます。
③ 病気運転致死傷罪
「病気運転致死傷罪」とは、以下のような病気の影響によって正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で車を運転して、人を死傷させた場合に成立する犯罪です。- 総合失調症
- てんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く)
- 再発性の失神
- 低血糖症
- 躁鬱(そううつ)病
- 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
たとえば、睡眠障害によって居眠り運転をする危険があることを認識しながら車を運転して、その結果として正常な運転が困難になり人を死傷させたというケースでは、病気運転致死傷罪が成立します。
病気運転致死傷罪が成立した場合には、人の負傷に対しては12年以下の懲役、人の死亡に対しては15年以下の懲役が科されます。 -
(2)過労運転に対して科される可能性のある刑罰
過労、病気、薬物などの影響によって正常な運転ができない状態で車の運転を行った場合には、過労運転として処罰される可能性があります。
たとえば、トラックドライバーが長時間労働により疲労が蓄積した状態で運転をして、その結果居眠りにより事故を起こしたというケースが挙げられます。
このような過労運転をした場合には、道路交通法違反となり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
3、居眠り運転による事故の立証と過失割合
以下では、「加害者が居眠り運転をしていたこと」を立証する方法と、居眠り運転によって事故が生じた場合に過失割合がどのように算定されるかについて、解説します。
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(1)加害者が居眠り運転をしていたことの立証方法
交通事故の裁判や示談交渉などにおいては、加害者は自分が居眠り運転をしたことを認めない場合があります。
このような場合には、被害者側が、「加害者の居眠り運転によって交通事故が発生したこと」を立証しなければならないこともあります。
加害者が居眠り運転をしていたこと立証する方法としては、以下のような者が存在します。
① ドライブレコーダー
ドライブレコーダーが録画しているのは車両の前後の様子であるため、社内の加害者が居眠りをしているところを直接映しているということはありません。
しかし、ドライブレコーダーに録画されている事故直前の動画に、センターラインをオーバーしていたり、ふらふらしていたりするなど明らかにおかしな運転をしている様子が映っていた場合には、居眠り運転を証明する状況証拠となる可能性があります。
② ブレーキ痕
通常、衝突する直前に加害者が被害車両に気付いた場合には、ブレーキを踏んで衝突を回避しようとするでしょう。急ブレーキを踏んだ場合には、道路上にブレーキ痕として証拠が残るために「加害者はどの時点でブレーキを踏んだのか」ということがわかります。
もしブレーキ痕がないような場合には、前方をまったく見ていなかったということになります。この事実は、居眠り運転を証明する状況証拠となる場合があるのです。
なお、ブレーキ痕についての証拠は、警察官が作成する実況見分調書を入手することによって明らかにすることができます。
③ 供述調書
交通事故が起こった直後、警察は、事故の当事者の言い分をまとめた「供述調書」という書類を作成します。
供述調書に相手が居眠り運転をしたことを認めた内容が記載されていれば、居眠り運転を証明する証拠となります。 -
(2)居眠り運転での事故の過失割合
交通事故が発生した場合には、交通事故の類型に応じた基本の過失割合が定められることになります。
そして、基本の過失割合に事故発生時の細かい状況を踏まえた修正を行うことによって最終的な過失割合が算定されます。
居眠り運転をしていた場合には、加害者側に重大な過失が認められるために、加害者側の過失割合を10%から20%加算する方向で基本の過失割合を修正していくことになります。
そのため、被害者としては、加害者の居眠り運転を立証することができるかどうかによって、最終的に請求できる損害賠償の金額が大幅に変わることになるのです。
4、交通事故に遭ったときは弁護士へ相談を
交通事故の被害にあった方は、できるだけ早い段階から、弁護士に相談してください。
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(1)慰謝料を増額できる可能性がある
交通事故によってけがをした場合には、入通院慰謝料(傷害慰謝料)や後遺障害慰謝料を受け取ることができる可能性があります。
「慰謝料」とは、被害者が負った精神的苦痛という損害に対する賠償金です。
精神的苦痛とは主観的なものでありますが、慰謝料の金額は、客観的な基準によって算定されることになっています。
慰謝料の算定基準には、自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)の3種類が存在します。
このうち、裁判所基準が最も金額が高く、被害者にとって有利な基準です。最も低い基準である自賠責基準と比較すると、2倍から3倍程度の金額になる場合もあります。
ただし裁判所基準による慰謝料を請求するためには、弁護士に依頼する必要があります。
したがって、少しでも多くの慰謝料の支払いを受けるためには、弁護士への依頼が不可欠です。 -
(2)保険会社との交渉を任せることができる
弁護士に依頼をすることによって、保険会社との示談交渉を一任することができます。
交通事故の被害者は、事故によってけがを治療するために入院・通院も行わなければならず、精神的にも時間的にも余裕がない状態となるでしょう。
このような状況で、保険会社との交渉もしなければならないとなるとその負担は非常に大きなものとなります。
また、法律の専門知識や示談交渉の経験を持たない方には、保険会社から提示された示談金額が適正なものであるかどうか判断することは困難です。
そのため、弁護士に依頼せず本人が交渉すると、不利な条件で示談を締結してしまうリスクがあるのです。
したがって、交通事故の示談交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。
5、まとめ
相手が居眠り運転をしていた場合には、それを立証することによって、過失割合が被害者にとって有利なものとなり、請求できる損害賠償の金額を高められます。
ただし、相手が「居眠り運転をした」という事実を否定している場合には、居眠り運転の立証が必要になります。個人では困難な場合が多いため、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。
また、示談交渉を弁護士に依頼することで、高額な基準で算定した慰謝料を請求することができます。
交通事故の被害にあってお悩みの方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています