【前編】配偶者のゲーム依存を理由に離婚は可能? 船橋オフィスの弁護士が解説
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船橋市における平成29年の離婚件数は、1401件でした。船橋市の人口は約63万人ですから、人口1000人あたりの離婚率は約2.21ということになります。これは全国の離婚率1.70よりも大きい数値です。
離婚の理由は夫婦によってさまざまです。そして、その理由は世相を反映したものも見られます。そして、離婚の理由として特に近年増えているといわれているのが、配偶者の「ゲーム依存」です。
もし離婚することをめぐって裁判などになった場合でも、果たして配偶者のゲーム依存は離婚の理由として認められるのでしょうか。この答えについて、ベリーベスト法律事務所 船橋オフィスの弁護士が解説します。
1、ゲーム依存で離婚をする夫婦は少なくない
一般的に「ゲーム依存」とは、日常生活が破綻するほどゲームへ熱中してしまうことをいいます。近年のゲームはパソコンやテレビだけでなく、場所を選ばないスマートフォンでも手軽に楽しむことができるようになり、コンテンツも充実しています。そのため、ゲームに要する時間やお金のことなどまったく意識せず、さらには仕事や家事なども二の次としてゲームに熱中する人が急増しており、ギャンブル依存と同様に深刻な社会問題のひとつとなりつつあるようです。
ゲーム依存は、結婚生活すらも破綻させることにつながりかねません。ゲームに熱中しすぎるあまり家庭を顧みず、さらには仕事や家事育児もせず生活費すらゲームに費やすような配偶者と、結婚生活を続けたいと思う人など、どのくらいいるでしょうか。このため、ゲーム依存症の人が増えることに比例して、ゲーム依存が原因で離婚する夫婦も増えていると考えられるのです。
2、ゲーム依存を理由に離婚は可能か?
結婚がそうであるように、離婚することはその理由に関係なく夫婦間の合意さえあれば自由にできます。つまり、あなたが相手方のゲーム依存を理由に離婚を切り出し、それに相手方が応じたうえで役所に離婚届を提出すれば、離婚が成立します。
言い換えれば、相手方があなたからの離婚の求めに応じない場合は、離婚することそのものが難しくなってしまいます。しかし、相手方に結婚生活そのものを維持することすら不可能にしてしまうような非があるにもかかわらず離婚ができないとなれば、あまりにも理不尽です。
そのため、民法第770条では裁判によって相手方に対して一方的に離婚の訴えを求めることができる離婚事由を定めています。
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(1)悪意の遺棄
民法第770条第2号では、離婚事由のひとつとして「配偶者から悪意で遺棄されたとき」を定めています。相手方がゲーム依存により以下のような状態に至っているかどうか、チェックしてみてください。
- 健康であるにもかかわらず、仕事や家事育児よりもゲームを優先させて働かない
- ゲームの課金に、生活費として必要なお金を浪費してしまう
- 上記2点のような状態にもかかわらず、一向にゲーム依存を改善する意思がない
もし当てはまるとすれば、相手方は民法第752条に定められた夫婦の義務である「協力義務」および「扶助義務」に違反していることになると考えられます。
これは「悪意の遺棄」という離婚原因に該当すると考えられることから、裁判においても離婚の訴えが認められる可能性が高くなります。 -
(2)その他婚姻を継続し難い重大な事由
同じく離婚事由のひとつとして、民法第770条第5号において「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を定めています。
ただし、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、民法第770条に定めた他の離婚自由である「不貞行為」「悪意の遺棄」「3年以上の生死不明」「配偶者が強度の精神病かつ回復の見込みなし」には当てはまらず、そして同等以上の重大な事由であることが要件と考えられています。
したがって、相手方がゲームに依存しすぎているといっても、それが直ちに「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとは、考えにくいものがあります。認められる可能性が高くなると考えられるケースは以下のとおりです。- ゲーム依存が原因で別居が長期間に及んでいる
- かつ夫婦ともに結婚生活を継続する意思がない
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(3)「ゲーム依存」だけでは難しい
これまで述べたとおり、裁判において相手方のゲーム依存が離婚の理由として認められるためには、民法第770条に定める離婚自由のいずれかに該当する必要があります。
これに該当せず、相手方がゲーム依存であることだけが理由で、経済面などでも生活面などでも大きな問題がないと考えられる場合は、単なる「性格の不一致」と解される可能性が高くなります。つまり、裁判上の離婚事由に該当しないため、相手の合意が得られない場合は離婚することが難しくなると考えられます。
なお、ゲーム依存は「ゲーム障害」としてWHO(世界保健機関)に認定された精神疾患のひとつです。しかし、このゲーム障害を「強度の精神病かつ回復の見込みなし」として離婚事由に該当するとした判例はありません。
後編では、実際に配偶者のゲーム依存を原因として離婚する場合の手順について解説します。>後編はこちら
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